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願い  作者: 大和
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別離(後編)

最終章「別離」(後編)


 月明かり以外,辺りは真っ暗な闇の中,異様な明かりを放つ一行が京を目指し軍行しています。


 本能寺強襲の為,丹波亀山城を出立した明智軍の明かりでした。


 そして,明智軍の第一隊,第二隊,第三隊がそれぞれ“別離”の地に到達する頃,ちょうど日付が変わろうとしています。


 天正10年(1582年) 6月2日

 

ーーー明智軍 “明智光秀” 第三隊ーーー 


斉藤利三 「まもなく”沓掛”故,兵に休息を取らせるが良いかと。」


光秀 「あいわかった。各々方,“沓掛”にて暫しの休息と致す。休まれよ。」


家臣 「有り難き事。軍行とは言え,夜道を進むのは容易に非ず。何故,日の昇る時でなく,月明かりの暗い夜道を進むのだ?」


家臣 「阿呆!殿の耳に入るぞ,静かにせんか!」


家臣 「面目無い。失礼。」


光秀 「・・・。」


私 (「家臣の中に不信を抱く者がでている・・・。夜道を進む一明かりの行列はやはり異様な光景に違いない。」)


 やがて日向守様率いる第三隊は“沓掛”に到達。

 一同はそれぞれ,休息を取るよう言い渡されました。


光秀 「各々方,暫しの休息の後,出陣致す。特と休まれよ。」


家臣 「出陣!?,丹波亀山城を出た時は出立と申しておられた・・・。」


家臣 「夜道の軍行,何か変ではないか?」


家臣 「気に止めるな,休める時に休むに限る。」


 兵達の中に,明らかに不信を抱く者が続出しているのが伺えました。


光秀 「利三,“安田国継”をここに。」


利三 「承知」


 斉藤利三様家臣,安田国継様が日向守様のもとに参られます。


安田国継 「失礼致す。殿,何故,私を御呼びに?」


利光 「言葉をわきまえよ。殿の御前であるぞ。」


光秀 「良い。国継,御主の力を前に屈服せぬ器を見越し頼みたい事がある。」


国継 「生まれつきの性分故,御誉め頂き有り難く存じます。」


光秀 「儂も御主の様に振る舞いたかったが,その器に非ず。上に立てば下の者を守らねばならん。ハハッ,人には色々と性分があって面白いわ。」


国継 「何を申したいのか話が見えませぬ。」


利光 「国継,慎まぬか!」


光秀 「率直に申す。儂は京の本能寺におられる織田信長公を討つ。」


国継 「!?戯れ言と・・・。」


光秀 「国継,御主は此れより書状を持ち京に先行,京で信長公に明智の軍勢を御目通り致すと噂を流せ。信長公に油断が行くよう仕向けるのだ。その際,疑う者は斬り殺せ!」

 

国継 「誠の事と・・・。」


利三 「国継,躊躇(ためら)うは御主も斬り殺す所存。躊躇(ためら)うか?」


国継 「正気の沙汰とは想えぬ御心。織田信長公を討つ・・・正に下剋,面白い,御意のままに。京に先行し御役目果たして御覧に入れましょう。」


光秀 「但し,噂を流せば秀満を待て。明智秀満の第一隊が先陣を切り,本能寺を強襲する。御主はそこに加わり武功をあげよ。行け!」


国継 「承知!」


 “安田国継”様は書状を持ち,京に向け先行して行かれました。


光秀 「利三,大和をここに呼んでくれ。」


 斉藤利三様に従い,私も日向守様のもとに向かいます。


私 「失礼致します。日向守様,御呼びでしょうか?」


光秀 「貴方(そなた)と話がしたくてな。」


私 「至極の想いにございます。」


光秀 「沓掛は丹波街道と西国街道の分岐点。道を戻れば丹波へと通じ,西に向かえば山崎を越え筑前守殿のおられる備中へと,東は京に通ずる。言わば“別離”の地。」

 

私 「“別離”の地・・・。」


光秀 「左様。いつか貴方と越前の海を見た事があったな。」


私 「確か,祝賀の御膳,海の幸を見極める為,越前に赴いた時に。」


光秀 「ハハッ。海は広く,平穏であらば荒れ狂う時もある。まるで人の心のようだ・・・。」


私 「誠に人の心は海のように・・・。」


光秀 「人の心は壮大でわからぬものだ。」


私 「・・・。此れよりは京に赴き,信長公(おやかたさま)に軍勢を御目通り致すのですね。」


光秀 「ハハッ。貴方は見抜いていよう,儂の心を。」


私 「・・・。」


光秀 「大和!これまでの忠義,誠に大義であった!」


私 「日向守様・・・。」

 

 様々な想いを馳せて,懐からこの時代に来る機会(きっかけ)となった”桔梗紋の欠片”を手にした時,ふと後ろに人の気配を感じます。

 

光秀 『大和,貴方は貴方の時代を生きよ。苦しみ悩みながらも,己を信じ“平成の世”とやらを生き抜け,儂は泰平の世を願いこの時代を生き抜く。』

 

 日向守様が言い終えると同時に刀を抜く鋭い音が響きました。 

 

私 「何を・・・。」


利光 「御免。」



 ・・・私は斬られました。


 流血し薄れ行く意識の中,日向守様の最後の言葉が耳に届きます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『儂も貴方の生きる平成という世が見たかった・・・。

 天下泰平が成され,きっと争いの無い良き時代なのであろう・・・。』



 “明智光秀”公,最後の問いかけに私はただ頷くしかできない・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


・・・目を覚ますと,私は元の場所に倒れていました。

 胸に何か違和感があります。


私 「痛い・・・。そうか,斬られた・・・。

  ん,これは・・・桔梗紋の欠片。

  見事な刀傷・・・。」


 意識を取り戻し今までの事を考えると,夢を見ていたのかもしれません。

 私は再び愛車(バイク)にまたがって,住む街に戻る為,“史跡”を後にしました。

 新しい時代を迎えた今,此れより先,悩み,苦しみ,笑い,様々な事があると思いますが私は私の時代を生き抜こうと想います。

  

 

 エピローグ「本能寺の変」に続きます。

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