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自作小説倶楽部 第20冊/2020年上半期(第115-120集)  作者: 自作小説倶楽部
第119集(2020年5月)/「風物詩(五月蠅 春キャベツ 田植え 五月病 菖蒲)」&「スリリング(ハーレム・切り札)」
20/26

04 らてぃあ 著  風物詩(五月病) 『昭和怪談』

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「暑気払い」

 ビール? おお、ありがとうよ。冷えてるねえ。仕事で疲れた時はこの一杯が生きがいだよ。あれ? 仕事に集中しすぎてたな。いつの間にか俺一人で残業していたのか。置き去りかよ。みんな冷たいなあ。田中の奴、挨拶も無く帰ったな。田中ってのは俺が指導を任された新人だよ。社長の甥だか、イトコの息子というボンボン。大学を出たばっかりのひよっ子だ。学歴なんて何の役にも立ちやあしない。挨拶もできなきゃ、根性もない。売りモノの説明もシドロモドロで客をいらいらさせる。挙句の果てには5月病だなんだと言いだす。困ったもんだよ。俺なんて高校も中退でこの会社の営業部長をしていた人に拾ってもらったから恩もあったし、失敗するわけにもいかなかったからガムシャラに働いたよ。二十代の頃は遊ぶ暇なんて無かった。アパートに帰る時間も惜しくなって会社に寝泊まりしたもんだ。その働きが認められて今の俺があるんだ。働きすぎ? 飛んでもない。生きるってことは働くことなんだ。それが俺の誇りであり、生きがいだ。持病だって勲章だよ。何ら恥じることは無い。わかってくれるか?

 ビールを飲め? ああ、いただくよ。

 あれ?

 どうしてこの缶は開かないんだ? 

 開けられない。タブに指がかからない。

 くそっ。

 一人でビールを飲んでも美味しくないだろうって?

 まあ、そうだ。

 仕事帰りに仲間と飲むのは楽しかった。

 家で、女房に飲みすぎだと注意されるけど家族で食卓を囲むのは幸せだった。

 娘は俺の自慢だ。今年短大で、いや? 就職だったかな?

 令和? なんだそれは?

 この事務所はどうしてこんなに暗いんだ。

 仕事はもう終わりだって?

 何だか温かくなってきた。ひどく眠い。

 そうだな。少し休もう。起きたら家に帰るよ。女房の顔を見たくなった。


 Aビルの取り壊しが何事もなく終わって良かったわね。

 知らないの? あそこは創業当時のビルで、仕事中の急病で死んだ社員の幽霊が出るって有名だったのよ。

 恨み? いいえ、無人のはずの事務所で仕事をしていたんですって。

 え? そうなの? 新入社員の時にお世話になった上司の幽霊?

 だから田中社長が除霊のためにポケットマネーを出したのね。

          了

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