3-3-8
3-3-8 9月21日火曜日
彼女が寂しそうに自分の部屋に戻っていったが、本当はまだ仕事が残っていたのだろか、ゴソゴソ音がしていた。さすがに今夜は捜査で外出はしていないようだ。
俺も寝付けずにいたのでさっきまでの彼女との会話を思い出していたが、
「そっか、楓の弟子は彼女の策略だったのか、アタラが女性嫌いね、どうしたらそんな風に思えるのかね、女性の考えは分らないなぁ・・。ちょ、ちょっと待てよ、楓がヒカリの知り合いだとすると、もしかしたら楓もバンパイア・・。おいおい、そうだとすると、アラタとくっ付けてどうするつもりだ。これは絶対に確認しておかないと、後々凄い事になるぞ。それにしても俺の回りの可愛い子は皆バンパイアだったりして・・」と少し可笑しくなった。
朝方近くに彼女は異世界に帰る準備をして静に部屋のドアを開けて入ってきた。そして俺が寝ているベッドに入って来て俺に強くしがみつくと「そろそろお迎えの時間が来たけど、帰りたくない」と寂しそうに呟いた。
俺も色々考えているうちに寝付かれずにいたので「あぁ、俺もだ。でも、来週にまた会えるじゃないか、それまでの辛抱さ。応援待っているよ」と彼女を強く抱きしめて
「こんな時に悪いんだけど、楓もバンパイアかい?」と尋ねると
「違うわよ、彼女はただの異世界人よ。彼女の事がそんなに気になるの。この浮気者」と俺のお腹をギュッとつねったが
「痛っ、でもよかった」と俺は安心した。
「そんな事より、あっちに着いたら直ぐに連絡してね。必ずよ。それに浮気は絶対駄目よ、お腹をギュッじゃ済まないわよ」と俺に念を押すと彼女の姿が薄っすらとしだした。俺の彼女を抱いている手の感触がなくなると窓は閉まっているのに冷たい風と共に俺の腕から消えてしまったが、後には彼女のいい香りが漂っていた。
これで、異世界に送り出すのはサクラを入れて2回目だけど、何か寂しさしか残らないのは何故だろうかと思っているうちに、やっと無事に彼女が帰ったので安心したのだろうか俺は眠りについた。
次の朝「平ちゃん、起きて下さい。朝ですよ、起きて下さい」との声がした。さっきのは夢だったのか、ヒカリがまだいるのかと部屋を見渡したが、その声は目覚し時計から聞こえてくる。
そうだ、昨夜目覚まし時計を元に戻しておいたんだ。でも、この声はサクラじゃなくヒカリだ。そっか、俺が公園に練習に行っている間に吹き込みやがったな、そんな吹き込んでいる彼女を想像すると少し可笑しくなり笑い出した。あいつもこれを聞いた時には驚いただろうな、たぶん「この声は誰、誰なの」って思ったに違いない。でも、彼女には少し悪い事をしてしまったな。それでもよく昨夜は俺に怒らなかったよな。たぶん声の主が誰だか分からず、きっと俺の好きなアイドルとばかり思っていたんじゃないかなと考えていると
「平助、起きたの、早く朝ごはんを食べなさい。今日から学校よ」いつものように母の声がした。
「はい、今行きます」こちらは今までと変わらずかと授業の準備をした赤いカバンを掛けて1階に下り、いつもと同じように朝ごはんを食べようと席に据わると
「変なのよね、台所に作った覚えの無いカレーがあるのよ。確か昨日のおかずは・・」と母が不思議そうにしていたので
「あぁ、それは夜遅くに南が持ってきてくれたやつだよ。夜食で食べたけど意外と美味しいよ。母さん、悪いけど朝ごはんにそのカレーをくれるかな」と話すと母は大盛りのカレーをよそってくれた。
「母さん、このカレー美味しいよ」と俺がバクバクと食べていたが、
「おかしな子ね、カレーを食べながら泣いているなんて、少し辛かったの」
「あぁ、少し辛かったんだよ。今度彼女によく言っとくよ」と答えたが、どうしてカレーは消えずに残っているのだろうか、それとも記憶管理局は消すのを忘れたのか。
そして、剣道部の朝の練習に出るために自転車で学園に向かった。
「さぁ、今週は放課後も武道大会へ向けての練習をアラタの剣道場でみっちりして、大会へ望もう」と決意した。そう、武道大会は次の日曜日に迫っていた。




