3-0-3
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俺は彼女の最後の言葉の金貨3枚が異様に頭に残っていた。
「金貨3枚、金貨3枚だと」と忘れかけていた嫌な事を思い出してしまった。
そうだ、この女は俺を騙して金貨3枚もの借金を背負わせて逃げたのだ。
再会の嬉しさの余りそれを忘れるところだった。
「おい、ヒカリ、俺を騙しやがって、後でたっぷりとお返しをしてやるからな」と俺が急に怒りだすと、彼女は俺が怒り出したのが不思議なのか、呆然と俺を見つめていた。
直ぐに謝れば彼女を許そうかなと思っていたが、まったく謝る素振りもないので、彼女に大会事務局からの精算金の請求メールを見せると、その請求額の3万ポイントを見て驚きながら
「あら大変。これ、もしかして架空請求じゃないの?
でぇ、支払ったの。かわいそうに平ちゃん騙されたのよ。早く警察に相談してね。
あぁ、私の婚約者は一文無しの上に、人に騙されるお人よし。
私の指輪はいつかしら。可哀想な左の薬指ちゃん」と彼女まったく知らん振りをしてごまかしていたが、
「でも、そんなお人よしな平ちゃんが好きよ」と、俺に抱きつき可愛く言うし、借金の3万ポイントもどうにかなったし、それに彼女が帰ってきてくれたから、そんな事はもういいかなとつい思ってしまったが、これも彼女の虜のせいとは気が付かなかった。
「さっき、お給料が月金貨1枚とか言わなかったか」との俺の鋭い突っ込みに、拙いみたいな表情で少しバタバタと慌てだしたが
「そんな事と言ったかな。バイト代1ヶ月分って言わなかったかしら」と白々しく嘘をついてまたごまかそうとしたが、今度は丸い目玉がウロウロと動くので、嘘をついていることがバレバレだった。
「嘘はよくないって、以前公園で君が言ったよね。そろそろ全部話してくれよ、君には疑問だらけで俺の頭が変になりようだよ」と苦しそうな顔をしていると
「でへ、少し口が滑りました。そうね、これ以上平ちゃんが困っても可哀想だし、確かに嘘はよくないので正直に話します。でもまだ捜査中の事件もあるので話せない事も色々あるけでそれは許してね」とやっと本気で言う気になったようだった。
「捜査中って、君は何の仕事をしているんだ。ちゃんと話してくれよ」と頼むと今回の派遣などの理由も詳しく話してくれた。
ヒカリの話によると、彼女は共和国警察庁の警察官で、捜査を目的としてこっちの世界に派遣されていたのだった。具体的には、旧王国の復興を図る組織がこっちの世界で活動していないかの捜査だが、他にも異世界からの逃亡犯の確保や捜査や盗難品の回収や捜査なども当然含まれていた。
そして、今回の派遣は、次の長期派遣の準備のためである事等々を簡単に話してくれたが、彼女が後で話してくれたのだが、長期派遣の目的である聖剣や盾の盗難につていは、俺が参考人になっており、自分が監視役だとはどうしても今の段階では話せなかったそうだ。
「それで、夜はいつも部屋にいなかったのか。どこで何をしでいるのかと心配だったし、朝起きられない理由も分ったかな」と俺が少し納得すると
「そうなのよ、平ちゃん。決して私がぐうたらな寝坊助なんかじゃないの。朝方近くまで一所懸命に捜査しているのでどうしても朝早くは起きられないのよ、この仕事を辞めて家庭に入ればちゃんと早起きして朝ごはんを作るわよ」と俺に擦り寄り、けなげに言うので
「それならいいんだけど。料理はちゃんとできるのかよ、俺は好き嫌いが多いけど大丈夫なの」と心配なので訊いてみると
「あら、平ちゃんは私と結婚する気なの、それならよかったわ。平ちゃんは早起きだから、私が早起きしなくて済みそうね」と訳も分らない事を言うので
「どうして、俺となら早起きしなくて済むのかよ」と、また2人でじゃれ合ってしまった。