2-3-6
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部屋に戻ると「こんな散らかった部屋で精神の集中はできないな」と無造作に散らかった部屋を少し片付けたが、僅か人二人分しかスペースはできなかった。
今日は聖剣を使ってしまったので今夜は引出しから福袋に入っていた剣を掌に乗せて、明かりを消して精神を集中して何度か会話を試みた。
やはり俺に優しすぎる望の事でも気になっていたのか,いつものようには集中できなかった。更にプールやスイーツやBBQなど今年の夏は例年と違って楽しいことが沢山あるなと雑念の洪水が俺を襲いかかり
「あぁ、今日は無理、ここまでだな」と明かりをつけると、トントントンと軽快に2階の階段を上がる音が聞こえた。
すると、ドアを叩き「平助、まだ起きているの」と尋ねる声がしたので
「大丈夫、まだ起きているよ」と答えた。
直ぐに望がドアを開けると、偶然に俺が手にしていた古くて小さな剣をみて
「今夜の聖剣との会話はどうでしたか、上手くいきましたか」と訊いてきた。
「今日も駄目だよ。雑念が多すぎて、集中できない」と明るく答えると
「それでは、雑念の素がお部屋に入ってもいいですか」と、その通りだったのでドッキトしたが、俺の彼女への思いが部屋に誘い入れてしまった。
狭い部屋に2人で座ると、いつものことなので俺はそんなには気にならなかったが彼女には少し暑苦しいかったのか、それとも別の理由からか
「平助の部屋、2人で座ると狭くって暑いので、明日から私に部屋に来ませんか」と南から俺がスケベで変態だと部屋には鍵をかけろとまでも注意をされたにもかかわらず、俺を誘ってくるとは、思いもよらなかった。
「じゃ、明日から、望ちゃんの部屋で話そうか」と約束したが、その時は何を話していいのか考えていなかった。
「そうそう、昨夜は触っていなかったよね、この剣触ってみる」と古い剣を彼女の掌の上に置こうとしたが
「駄目よ、もしそれが本物の聖剣だと、私、罰を受けないといけなくなるから」と頑固なまでに拒否をしていたが、少し考えて何か思いついたらしく
「じゃ、平助が聖剣をこういう風に握っていて、私が平助の手の上から触るから」と俺の両手で剣を包み込むと、彼女が明かりを消してその上から俺の手を包み込んだ。
彼女の柔らか手に包まれ少し俺の鼓動が高ぶると
「駄目、駄目、目を閉じて落ち着いて、こう息を吐いて、そしてこう吸って」と呼吸法まで教えてくれたので、俺の鼓動と呼吸が彼女のそれらと上手く同調すると、目の前が少し明るくなり何かが見え始めた。
「やった」と嬉しさの余り急に俺が騒ぎだしたので、直ぐに暗くなった。
「騒いちゃ駄目よ、もう一回するけど、今度は騒がないでね」と注意し、またさっきのように俺の鼓動と呼吸が彼女のそれらと上手く同調すると、前と同じように目の前が少し明るくなり何かが見え始めたので、今度は静かに精神を集中すると、子供の頃の俺と望が遊んでいる姿がまるで映画のように見えた。
しかし、俺が不甲斐ないのか練習の疲れからか途中で俺の集中力が途切れてしまい、そして2人の鼓動と呼吸の同調が壊れ急に何も見えなくなった。
俺がまた駄目だったかと落胆していると、
「できたわ、見えたわ」と急に喜んで彼女が俺に抱きついてきたので俺は呆然としていていたが、2人の目と目が会うと彼女は恥ずかしさの余り顔を赤くして狭い部屋だと言うのにそそくさ距離を置いてしまった。
少しすると気まずさが無くなったのか、今度は彼女から俺に近づくと
「お願い、もう一回やってみましょう」と言い出すと、また同じ事をやってみたが今度は何も起こらなかった。
それから、何度か試してみたが2人の鼓動と呼吸の同調が合わなかったのだろうか、たぶん、それは俺が彼女を意識し過ぎたせいだったのかもしれないが、やはり無理だった。
「見えたのは確かに俺と君だったよね、でもどうして会ったばかりの2人が一緒にいるんだ。それも今じゃなく子供の頃が見えるんだろう」と彼女に確認すると
「えぇ、確かにあの2人は私達の子供の頃だわ」と答えると、少し考え込んで
「そっか、楽しい2人の思い出だから、きっと2人一緒じゃないと見られないんだ。だから今日見られたのね」と1人で納得していたので、
「それは、どういう事なの」と尋ねると
「そろそろ、平助に話さないといけない事があるの、でも今日はまだ無理。じゃ、明日から2人で頑張りましょう」と元気よくあっさり部屋から出て行ったが、俺に話さないといけない事とは何なのかずーっと考えると俺は寝付けないまま夜を過ごした。




