表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
47/634

2-3-2

2―3-2

 駐輪場に自転車を置き、2人仲良く剣道場に着くと既にアラタと楓さんは剣道着に着替えていたが、昨日の南とのデートが事の外楽しかったのだろう万遍の笑みを浮かべている。

こんなニコニコした奴を見るのは初めてだ。いつも傍にいる楓さんも今日は気味が悪そうに少し離れていた。するとアラタは望を見つけると

「早速ですが、望さんのご予定はどうなっていますか、私はいつでも結構ですよ。それと、今度はどんなスイーツがいいですかね」と「おはよう」の挨拶もしないで、次の南とのスイーツデートの日程のことを彼女に訊いてきた。

 彼女は考えていなかった事を急に訊かれてしまい困った顔をしたので

「望ちゃんは今日の午後は予定があるから、明日か明後日の午後はどうかな」と俺か助け舟を出すと

「そうですね、できれば調査の最終日はレポートの提出があるので、そこは避ければ大丈夫ですよ」と彼女が答えると

「では、明日の午後で決まりだな。南への連絡は、今から俺がするのでお前もそう心配するな」と、その場で南にメールを送ると「了」と返事が来たので

「南はOKだって」とアラタに教えると、更に顔がニコニコ顔になった。


 しかし、それだけでは済まずに俺のスマホを羨ましそうに見つめて

「ぜひ、俺にも南さんのメルアドを教えてくれないか、平助、この通り」と俺に初めて頭を下げて頼むので

後で南には了解を取ればいいかとアドレス先を奴のスマホに送信すると、アラタの両足が剣道場の床から浮かび上がりそうになった。

「おいおい、後で登録名に恋人とか入れるなよ」と俺が以前したことを注意いすると、図星だったのか

「バ、バカな事は言うな、そんな事は恥ずかしくて出来るか」と顔を赤くしていたが,今日はとても機嫌がよさそうなので、俺は今がいいチャンスだと思い、数日前から考えていた対勇者用の戦い方について、調査員の望がいるのも考えずに頼んでみた。


「アラタ、対勇者用の戦い方だけど、俺は剣一本でやってみたいんだが、どうだろうか」と頼むと、にこやかだった顔が厳しい顔に変わり

「盾を捨てるのか、防御はどうする。最初の一撃で剣が飛ばされたら負けだぞ。

お前にも俺との戦いでその経験があるだろう」と厳しい返事だった。

「それは分っているが、俺はまだ初心者だから、剣と盾を同時に扱うことは無理だし、もともと将来は剣一本でやってみたいとは思っていたんだ」

「そうか、お前がよーく考えて、それを望むなら俺は止めはしないし協力もするが、接近戦において剣で相手の攻撃を防ぎ同時に相手を攻撃することはお前が思うほど簡単な事ではないぞ。そうだ、以前お前は聖剣を呼び出さずに起動させた事があったが、今は自由にそれが出来るのか」とアラタが俺に訊くと

「凄いわ平助、呼び出さずに聖剣を起動できるって、それは聖剣と精神を一体化できる真の勇者しかできないことよ」と望は驚いていたが

「確かにあの時はできたかもしれない。でもあの時は俺も無我夢中だったのでどうしてできたのか良く覚えていないし、まだ聖剣との会話さえも上手くできてはいない。でも他の勇者に勝つにはこの方法しかないと思うんだ」と説得すると

「分った。今からその練習をやるしか残された道はないようだ。俺が持っている聖剣2本と平助が持っている1本の計3本の90分間を上手く利用するしかない。

朝の練習はまず俺の聖剣から使おうか」と話がまとまり朝の練習を始めた。


 まずはいつもの3人での朝の練習を短めにして、アラタが防具を付けた俺に彼の聖剣を貸してくれると、俺はそれを手にして名を呼び大きくして構えると

「お前は攻撃に専念しろ、俺がどんなに攻めても剣で受け止めようとはするな。

聖剣が自分の意思でお前を守ってくれるまで、この練習をやるしかない」

 さすがに俺の剣の攻撃を竹刀で受けることは難しいと思ったのだろか。

アラタは初めて左手に盾を構えて竹刀を右手にしてかかってきた。

たが、俺の自己防衛が働きどうしても奴の攻撃を剣で受け止めてしまう。

 それでも、アラタの竹刀が何十本かは面や胴にきれいに入ったがそれでも聖剣は起動しなかった。

 直ぐには出来るとは思っていなかったが、最初の聖剣1本の30分があっと言う間に過ぎ、次の1本も何の変化もなく同じだったので朝の練習は終了した。

「やはり、竹刀では駄目かなのか。本当は聖剣対聖剣で行いたのだが、それでは2本同時に使うとことになりこの練習の時間が足りなくなる。どうすればいいのだ。すまんが汗を掻いたようだサウナに行ってくる。後はまた午後から」とアラタが考え事をしながらサウナに行ったので、楓さんも一緒に剣道場を出て行った。


「さぁ、俺達もお昼を食べに帰りましょうか」と隅で見学していた望に話しかけると、俺に近づきクンクンと臭いをかいで

「平助、今日も汗臭い。ちゃんとタオルで拭いて下さいね。私が後ろに乗るんだから。そうそう、帰りにお店を忘れちゃ駄目ですよ」と念を押された。

 俺がタオルで体を拭いてから2人で駐輪場に着くと楓さんが待っていた。

すると彼女はアラタから頼まれたと自転車のキーを望に手渡し

「今日から、これを使って下さい」と真新しい籠付きの自転車を貸してくれた。

 彼女はもう汗臭い俺の後ろに乗らなくて済んだと初めは喜んでいたが、俺には少し寂しそうな風にも見えた。

 残念ながら、アラタの善意で俺と彼女との自転車での夢のような時間があっさりと終わってしまった。


 剣道場からの帰り道、駅前の商店街でお昼と夕飯の買い物を済ませ、アイスを買って家に帰り、臭いシャツを着替えたのでお昼の時間はとうに過ぎていた。

望が作ったお昼を2人で食べながら、朝食もそうだが余りにも好き嫌いの激しい俺の口に合うのが不思議で

「そういえば、お店で俺に何を買うかも訊かずに迷わずに食材を買っていたけど。俺の食べ物の好みとか、それに味付けも良く知っているね、どうして」と尋ねると

「それは、どうしてでしょうね。平助とは長い付き合いですから」と変なことを言い始めた。

「長いって、まだ3日目だけど、何処かで会ったことあるのかな。もしかすると本当の従妹だったりして」

「従妹じゃありません。早く私を思い出して下さいね。そうしないと思い出せなくなりますよ」と彼女の顔が少し暗くなり意味深なことを言うと

「平助はニンニクの利いた唐揚げが好きでしょう、それと人参抜きの野菜サラダ。夕飯はそれですよ」と見事に俺の好物を言い当てた。

 確かに子供の頃から、ニンニクの利いた唐揚げが大好きだし、人参が嫌いだが、それを知っている彼女は誰だろう、こっそり母が朝にでも教えたのかなと色々考え出すとまた頭が痛くなるので、そのうち分るだろうとニコニコして美味しいお昼を全部食べてしまった。


 昼食後、台所で後片付けをしている彼女に

「望ちゃん、今日の午後の予定は?」と訊くと

「午後の練習を見学してもいいかしら、先日はアラタさんに断られたけど」と心配していたが

「あの時はそうだったけど、午後も朝と同じ練習になるからきっと大丈夫だよ

それに、もう調査員の君に隠すものもないし」と答えると

「じゃ、練習を見学して、少し早めに帰って夕飯の準備をしますね」となんだか楽しそうだった。よほど料理が好きなんだろうか。それとも別に何か目的でも有るのだろうかとも思ったが、

「今日はありがとう、お昼と夕飯まで作ってもらって。それと今日は少し遅くなると思うよ、明日の午後の練習が休みだから、でもちゃんと夕飯前には帰ってきますから」とまるで新婚の夫のように言うと

「そうでしたね、明日の午後はみんなでスイーツを食べに行くんでしたね」とまた楽しそうだった。

 さっきのは俺の取り越し苦労かと、色々考えていると午後の練習の時間が近づいたので「じゃ、俺は先に行くね」と、またアタラの剣道場へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ