1-6-3
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仕事から帰って来た母と3人一緒に夕飯を食べながら、ヒカリと母は明日の買い物の打ち合わせをしていて楽しそうだった。
「平助、やっぱり明日は駄目なの」母が訊いてくるので、
「残念だけど、予定が入っていて、2人で楽しんできなよ」と答えると
「残念ね、平助と一緒に出かけるのここ数年ないし、母さん楽しみにしていたのに、じゃ、またヒカリちゃんが来た時に、その時は遊園地にでもいく?」と訊き返してきたが、
「母さん、俺も高校2年生だよ、母親と遊園地だなんて冗談きついよ」と答えると
「私は遊園地がいいですよ、平ちゃん怖がりだから遊園地が嫌いなんでしょう。ジェットコースター怖いんでしょう」とヒカリが言い出すので
「誰が怖がりだって、遊園地、いいじゃないの、ジェットコースタ、乗りますよ、乗りますとも」と俺は言ってしまった。
しまった、また彼女の上手い口車に乗せられてしまった。でも母が笑っているので、次はみんなで遊園地もいいかなと思えた。
夕食後、いつもの時間にトレーナに着替えて俺はヒカリの部屋のドアを叩いた。
「ハーイ、どうぞ」と同時にドアを開けた俺の格好をヒカリが振り返り見ると
「今日は休みって言ったじゃないの、だめよ体を休めないと」
「それは分かっているが、部屋にいて色んなことを考えていると、じっとしていられなくて」
「仕方ないわね、じゃ、今日は軽くよ」と言って彼女がトレーナーに着替えだしたが俺がまだ彼女の部屋にいたので、
「はいはい、スケベの勇者様、課金されますよ」と言って俺を部屋から追い出した。
家に来た初日から下着姿で俺の横で寝ていたくせにと思ったが、あれから課金はどうなっているのかとふと気になり出した。
今夜はヒカリを自転車の後ろに乗せて2人乗りをして公園に向った。
「俺、こうやって女の子と2人乗りは始めてだよ」と正直に言うと
「今日だけですよ、今度違う女性と2人乗りしたら逮捕します」と俺の腰に回した手をギュウと抱きしめたので、
「さすがに婦人警官は厳しいな。でも、君とならいいのかい」と冗談を言うと
「もちろん、その時は見逃します」と笑っていた。
公園に行くと既に人影はなく、ヒカリは辺りに誰もいないのを確認し呪文を唱え始めようとするので「待って、今日はその姿でいいよ、俺がこんな状態だから実戦じゃなくて理論で、今日の練習でアラタに俺の足の運びと呼吸の仕方がなっていない」と言われたと彼女に話すと
「アラタさんは、もともと剣道の使い手なのでそのことでしょう。
でも私は剣道がよく分からないので、正確には話せませんけど、大まかに話しますね」と言って体を使いながら上手く説明してくれた。
「そっか、戦術や装備で戦い方が変わるのか、そういえばアラタは一度も盾を使わなかった。奴の戦い方は間合いを取って一瞬で飛び込んでくる。
だから足の運びが重要になるのか。
俺は今は剣と盾を使っているが剣一本で戦った方が動きやすいけどな」
「私も平ちゃんは将来剣一本で戦った方がいいかと思います。
確かに重い盾を持てば身を守れますが、動きは悪くなり相手を倒すには接近戦になります。そうなると力の差で勝負が決まります。
平ちゃんは半獣に比べると力も弱く体も小さいので接近戦は不利です」
「なるほど、俺には接近戦は不利か、相手と間合いを取って一瞬の隙をついて倒す。理論は簡単なんだけどね。じゃもう少し練習を」
その後も、ヒカリに理論を教えてもらいながら実戦を試す練習を続けたが、今日の練習は彼女が変身していないので、いつもより長くできた。
また楽しく2人乗りをして家に帰って、俺が風呂に入って部屋に戻ると既にヒカリが部屋に来ていた。
「来ていたの、汚い部屋でごめん」
「いいえ、私のために隣の部屋を空けてくれたので、だから部屋が汚いんでしょ」
「気にするなよ、そっちの部屋を汚くしたのは元々俺なんだから、それで」
「たぶん明日の夜は辛くて何も話せないと思うので、今日話しに来ました。
貴方に色々嘘を言ってすみませんでした。ごめんなさい。
でも、平助さんが大好きなのは本当です。
ただ、他はまだ全部は話せないのです」とすまなそうな顔をしたが
「いわゆる守秘義務って言うやつだろう」と言うと顔色が変わり
「えっ、どうしてそれを」どうも図星だったようだ。
「毎晩俺の知らない間に外に出て行くし、女子高生とは思えないあの強さと格闘技の詳しさ、アラタは君を姫と呼ぶし、俺にもよく分からないことが沢山あって、今すぐそれを全部君に訊きたいけど、君が自ら話してくれるまで待とうと決めたんだ。ただ、どこまで待てるか今の俺には自信が無いけどね」
「ごめんない、でも今度帰ってきた時には必ず全部お話します」
「ありがとう、必ず帰ってきてくれるんだね。俺はその言葉だけで今は十分だよ」
「はい、必ず帰ってきます。すみませんが、これから用事がありますので、それでは明日朝にでも」とヒカリは部屋を出て自分の部屋に戻った。
彼女が部屋に戻ると直ぐに、しまった、この場面はヒカリを強く抱きしめて、別れの口づけする場面じゃなかったのかと急ぎ彼女の部屋を開けてみたが、既に彼女の姿はそこには無くいつものように窓だけが少し開いていた。
俺は落胆の中、部屋に戻り「バカバカ平助のバカ」と自分を責めていたが、よく思い起こすと彼女は「平助さんが大好きなのは本当です」って言っていたよな、「平助さんが大好き」「平助さんが大好き」のフレーズが頭の中でリプレイされ、その心地よさで眠りに尽いてしう単細胞であった。




