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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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 自分の部屋に戻るとアラタからメールが着ていたので、何か用だろうかと開いてみると「お祝いの贈り物があるのでお昼に剣道場まで来られたし」とあった。

「来られたし」とはいつの時代の人間かと思ったが、

あいつは少し古風な奴だとは知られていたので

「ありがとうございます。それでは伺います」と返信したが、さて、あの男が何をくれるのか心配になった。さすがに祝いの品なので変な物はないだろうと思った。

 

 ヒカリと2人でお昼ごはんを食べながら彼女にアラタからの誘いがるので、午後は残念だが付き合えないと彼から来たメールを見せると

「贈り物って何かな。でも、今日は男性の先客があるのね」と笑っていたので

「ヒカリちゃんは何か用事でもあるの」と尋ねると

「今日は早起きしたので、まだ少し眠いです」とお昼寝でもする様子だったので、訪ねた俺が馬鹿だった。


 夏の暑い日差しの下、自転車でアラタの家へ行きベルを鳴らし、メイドの楓さんが出てきたので俺は少し照れくさかったが、彼女は普段通りに「若様は剣道場の方に」とまた大きな庭を横切り俺を連れて行ってくれたが、2度来ても道順は覚えられそうもなかった。


 剣道場の扉を開けるとアラタが午後の練習を始めようかと体操をしていが、人間はあんなにも曲がるものかと思うくらい屈伸をしていた。

アラタが、自分の屈伸を驚いて見ていた俺に気づくと

「何を驚いている。これくらいできないとケガをするぞ。

そうだ、私からの贈り物だったな、好きな剣道着を選んでさっさと着替えたまえ」

彼は俺の期待を裏切らずに、やっぱりそうきたかと思っていると

メイドの楓さんが俺の目の前に剣道着を並べて

「さぁ、お好きなものを選んで下さい」と言うが、

俺から見るとどれも同じなので、貰えるなら新しいやつがいいかと

「じゃ、これで、お願いします」と新しいものを選ぶと

剣道着を着たことがなかった俺の着替を彼女が手伝ってくれたが、

初心者にしては俺が意外に簡単に着れたので、

彼女は俺に「以前、剣道をなさっていた経験はありますか」と尋ねるので、

「確か、経験は無い筈です」と自分でもおかしな答えになっていた。


「それで、平助は防具を付けて、武器は、そうだな今日は竹刀にしよう。

すまないが、聖剣での練習は後の掃除が大変だと苦情を言われてな」

とアラタがすまなそうに言うと、楓さんがクスクス笑っていたが、

今度も彼女が防具と竹刀を俺に手渡し、俺が防具を身に付けるのをまた手伝ってくれたが、

「本当に、剣道の経験はないのですか」とまた不思議そうに訊いてきたので、

「確か、俺の記憶には剣道の経験は無いです」とまたおかしな答えになっていた。

そして、剣道の道具一式を俺が身に付けると

「じゃ、かかってきたまえ」とアラタは俺をまくし立てた。

俺は、やっぱりこれかと納得したが、今日は朝の練習をしていなかったので、運動には丁度いいかと軽い気持ちでお誘いに乗ってしまい

「では、お願いします」とアラタにかかっていった。

 

 最初の30分は俺が攻めに攻めたがアラタはヒラヒラとダンスをしているかのように俺の攻撃を交わし、まともに立ち会おうとはしなかった。

 しかし、30分が過ぎる頃に「じゃ、今度は私から」と一方的に攻めてきた。

最初はどうにか交わしていたが、後は防具の上からめった打ちにあった。

 俺が道場に倒れこむと、アラタは「はい、5分休憩」とすっと引き、奥に正座すると呼吸を整えるだけで疲れた様子はなかった。

「攻めるも守るもお前の足の運びは同じだ、それに呼吸も不規則だ、それでは長くは戦えないぞ、まずはその基本からだな」と言って「はい5分過ぎたぞ」とまた俺に稽古をつけてくる。

 それを何度か繰り返すと「はい、5分休憩」とまたすっと引き、隅に正座すると呼吸を整えるだけで疲れた感じはなかったが、さすがに汗が流れていた。


 既に俺はボロ雑巾のようにハアハアと息が上がり道場の床に大の字に寝ていた。

昨日の朝、俺が見たアラタの汗の量だとこいつは何時間練習していたのかと思ったが、こいつはヒカリと違って人を苛めて上達させるタイプかと、どうでもいいことを考えていた。

「もう、終わりか平助。それでは「昨日のこの命にかけて」は大嘘だな」とアラタが笑い出したので、

「嘘は嫌いなのでね」と膝がガクガクしながらもどうにか立ち上がったが、ものの5分でまた道場の床に大の字になった。

「それでは、誰も守れないぞ。そして彼女を失いたいのか」とアラタの一言が俺の闘志に火をつけた。

「まだ、まだ」と立ち上がってみたものの、やはりもう動けなかった。

「動けないなら、俺の動きを見て考えろ」とアラタは飛び込んで打ってくる。

道具の上からでも頭を打たれると足まで響く。

それが何十本か続くと記憶がなくなってきたが足の動きと竹刀の連動が少し分かるようになり、ふらふらしながらもアラタの飛び込み面を体の動きだけで交わすと、そのまま道場の床に大の字になった。

「少しは見えたみたいだな、これ以上無理をしても何もならない。

じゃ、今日はここまで、明日からは朝からここに来なさい。

俺はサウナに行ってくる。楓さん後はよろしくお願いします」と言われ、ヒカルより先に明日の予約が入ってしまった。


 メイドの楓さんが奥から冷たい水と救急箱を持って俺に近づき、優しい言葉で

「平助様、おケガなどありませんか」と今日も心配してくれて、少し手足に打撲があったのでやさしく治療してもらったが、

「平助様、明日からも頑張って下さい。それと毎日の柔軟体操も忘れずにね」と俺にはきつい言葉で今日も励ましてくれたが、期待していた頬にチュはなかった。


 どうやって家に帰ったのだろうか、楓さんが車を用意してくれたのだろか、

気がつくと頭に冷たいタオルを乗せてヒカルの膝枕で寝ていた。

アラタの道場で軽い脳震盪でも起こしたようだ。

「ごめん、ごめん、かなり寝ていたみたいだな」と起き上がろうとすると

「じっとしていて、このままでいいのよ」と彼女は俺の頭を撫でながら、少し泣いているみたいだったが「今日の夜の練習はお休みね」とポツリと呟くと昔話をし始めた。


 昔々、ある小さな国にかわいいお姫様がいました。

そのお姫様は、ずーっとお城に住んでいましたが、外の世界が見たくてみんなの反対を押し切って旅に出ました。

 そして、旅の途中に素敵な勇者と出会いました。

それから2人は愛し合い結婚しようとお姫様の国に許しを請いに帰りましたが、

欲に汚い王族はよそ者の勇者はきっと財産が目当てだと王様に進言しました。

身内の王族を信じた王様は2人の結婚を許してくれませんでした。

 それでもお姫様が泣いて頼むので、王様は一つだけ条件を出しました。

それは勇者がこの国で一番い男に勝つことでした。

もし負ければ勇者には死を、お姫様にはその男との結婚という条件でした。

確かに勇者は強いがその国の男はもっと強く、夜にはもっともっと強くなるのでした。

 そして、果たし合いは夜行われ、無残にも勇者は負けてしまい殺されて、お姫様は勝った男との結婚が否で海に身を投げました。おわり。


「悲しい話だね。俺はハッピーエンドが好きだよ」

「私もよ。じゃ、次からは勇者が勝ってお姫様と結婚して末永く幸せに暮らしましたに変えとくね」とヒカリが答えると

「あぁ、俺が絶対変えてみせるよ、ハッピーエンドに」

「そうね、きっとそうなるわよね」と彼女はニコッとした。

「でぇ、君がかわいいお姫様かい?」

「かわいいは合っているけど、夏休みにバイトしているお姫様はいませんよ」と冗談ぽく答えたが、俺はそれを素直に信じることが出来なかった。

 そして、後にこの昔話が血の花婿の話に変わっていったと彼女から聞いたのだった。 




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