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奥手な勇者の恋の相手はモンスター  作者: ゴーヤウリウリ
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1-5-3

1-5―3

 仕事から帰って来た母と3人で一緒に夕飯を食べながら、ヒカリが俺と2人で午後からホラー映画を観に行った話をすると

「珍しいわね、平助がホラー映画って、あんた怖がりじゃなかったの、 

そうそうヒカリちゃん、平助は子供の頃は夜トイレに一人で行けなかったのよ」と母が俺のウィークポイントとあっさり話すので

「平ちゃん、怖がりなんだ。夜トイレに一人で行けないんだ」と彼女はつけ上がり

「そんなことあるか、一人で行けます。行きました」と反論すると

「嘘よ、嘘。特に田舎に遊びに行った時などは酷くてね」と母の否定で、2人してゲラゲラと笑らい、それから母から俺の子供の頃の話が次々に出てきて俺を肴して会話も弾み楽しく夕飯を済ごせた。


 楽しい夕飯の後、2人でまたジョギングして公園に行くと既に人影はなく

俺は正直に今日は既に剣と盾を使ったことをヒカリに話すと

「じゃ、今日もトンファーの復習でもしますか」と彼女は大人の姿になり、昨夜の続きを始めた。

 彼女が振り下ろす棒を剣とみなして、握りになる垂直の短い簿を持って長い棒を腕から肘まで覆って攻撃を受け、空いている手で持ったトンファーを彼女に攻撃する練習や、逆に長い方を彼女に向け棍棒のように扱い、それらを手首を返し半反転することで瞬時に入れ替える練習などをし、俺が上手く棒を受け彼女を瞬時に攻撃すると

「そうでう、そうです。さすが勇者様」とまた上手く褒めちぎる。

「子供の頃見たカンフー映画を真似しているだけだよ」と照れると

「カンフー映画は怖くなかったみたいですね。まずは真似からでいいんですよ」とニコニコしながら褒めちぎる。

 そんな練習を15分ほどやると防御と攻撃が上手くできるようになったので、5分間休憩することにした。


 いつものようにベンチに座り、隣に座った大人のヒカリにずーっと疑問に思っていた「本当のヒカリはどっちなんだ」と尋ねてみると

「本当の私って?」不思議そうな顔をして俺を見つめてくる。

「気を悪くしたら謝るけど、最初、俺は女子高生姿のヒカリが好きになった。

それが今も本物だと思っているけど、君が大人の姿のときは素が出ているというか、それが本物に見える。

まぁ、俺が高校生だから同じ年ごろの女性を好きになったかもしれないが」

「難しいですね、どちらも私なんです。

もちろん半獣の姿も私ですけどね。

金貨の裏と表みたいなものでしょうか、本物も偽者もないんです。

じゃ、どっちが疲れないかというと大人の方かな。お酒も自由に飲めますしね。

でも時と場合によりますけど」と笑って答えた。

 俺はアラタの「今だけを見るな、全てを受け入れろ」の忠告が単に外見のことだけを言っていると勘違いしていたのかもしれない。

全てとは現在、過去、未来のことでも意味すのだろうか、或いは家柄、身分、人生の全てとか、本当の意味は何だろうかと悩んだ顔をすると、

「難しい話は帰って私の部屋でも話しましょうか」と彼女が言うので

「やった、今日は彼女と話ができる」と残りの練習はいつもより力を入れて真剣にやったつもりだが、顔がニヤけていると何度も注意をされて5日目の練習は終了した。


 彼女が手にしたトンフーを腰に付けてあるホルダーにスッーと掛けたとき

「いつも使い慣れている警察官のように決まったね」と俺が言うと、彼女の顔色が少し変り、薄笑いで

「こんな素敵な警察官がいますか」

「そうだね。いたら、今直ぐ俺を逮捕して欲しいくらいだ」と冗談を言うと

「では、中村平助、窃盗の現行犯で逮捕します」と彼女は手を強く握って俺を見つめたて、顔を近づけると

「だめですよ、私の心を盗んじゃ」と優しく耳元で呟いた。

「じゃ、俺の懲役は終身刑だね」と手を強く握り返すと

「えぇ、その時は私も一緒に」と笑っていた。

 そして、ヒカリはいつもの女子高生に戻ったが、大人の彼女にも俺の心は奪われ始められていた。


 2人で仲良く家に帰り、それぞれ風呂に入って部屋に戻ったが、待ちきれなくて直ぐにお誘いのとおりに隣のドアを叩くと返事がない。

「ヒカリちゃん、いないの」とドアを開けたが部屋の灯りはついているが、少し窓が開いているだけで部屋には誰もいなかった。


 突然メールの着信音が鳴った彼女からだった。直ぐに開いて見ると

「すみません、急用が出来たので外に出てきます。

帰りは遅くなりますが、心配しないで下さい。

机の上にプレゼントがありますので、よかったら使って下さい。

                        婚約者ヒカリより」

 彼女からのお誘いが反故にされたので奈落に落とされた俺は怒り心頭で思わず

「気にしなくて良いよ。夜遅いので気を付けて帰ってきてね。プレゼントありがとう」と返信し、机の上にプレゼントを見つけ重い箱を開けると、かわいいリボンを付けた木槌と杭とが入っていた。

 確か南の持っていたやつか、その意味がよく分からずブラックジョークにしては酷すぎると苦い笑いした。

 そして、最後の「婚約者ヒカリ」よりの文字を見て思わずガッツポーズをしたが、何を基準にいつランクアップしたのだろうかと思った。

 その後、登録名を彼女から婚約者に変更して、ベッドで横になりスマホで女子高生が選ぶスイーツベストテン、噂の甘味処などを検索し時間をつぶし、いつもの寝る時間になったので灯りを消して寝てしまった。


 その頃公園には3人の人影があった。楓が2人の護衛のようにベンチの前に立ち、ベンチに大人のヒカリとアラタが、まるで他人の振りをするかのように2人の間に間隔をあけて座り、他人には聞き取れないような小声で話をしていた。

「アラタさん、この前はご無理なお願いをしてすみませんでした」と彼女が軽く頭を下げると

「姫に剣を向けるなどの願いはこれを最後にして下さい。お父上に知られましたら私の命など、それよりも、中村平助にお決めになられたのですね」

「はい、決めました。いや、初めから決まっていたのかもしれません」

「そうですか、私は何も言える立場ではありませんが、これからどうなされます」

「3日後に特捜本部への帰還命令が出ますので帰還時に辞職して、一度国に帰りたいと」

「特捜本部をお辞めになるのですか、あれだけ苦労してお入りになられたのに」

「平助様がそれ以上の方だと言うことです。

それで、私がここに戻ってくるまで平助様を助けては下さいませんでしょうか」と彼女が軽く頭を下げると

「はい、わたくし宮本アラタ、姫のご希望とあらば」

「ありがとうございます。無関係な貴方にご無理を言って申し訳ありませんが、こちら世界で頼れる人がアラタさんしかいなくて」

「恩義に報いるのが勇者の証です。それで、失礼と思いますが気になることが一つございます。

王族の女性と人間の男性の婚姻となりますと、平助は交流会に出場する必要が出てきませんか」

「私もそれが気になりますが、それだけは避けねばなりません。

やっとあの方に出会えたのです。いざとなれば王位継承権など捨てるつもりです。

どうせ末娘ですのでもともと王位には興味はありませんし、平助様と2人ならそれだけいいのです」

「姫のお考えは十分に理解できますが、お父上はそれをご理解して頂けるか、それに王族の方々が何と言われるか。

でも、姫の決心が固いようなので、それでは、わたくし宮本アラタも微力ではありますが力添えを」

「何から、何までありがとう御座います」とまた彼女が軽く頭を下げると

「勿体無いお言葉。それでは、無事、ご帰還を願っております」アラタと楓は夜の闇に消えていく。

 大人のヒカリは辺りに誰もいないことを確認すると、今度は平助にも見せたことがない第ゼロ形態の飛翔体として家の方に飛んで帰った。




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