↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/25

第1話 黄昏の埠頭にて

『死神少女の箱船星海』をお読みくださり、ありがとうございます。


本作は『死神少女の箱庭世界』の続編にあたる二期です。前作を追ってくださった皆さま、おかえりなさい。あの世界の続きを、またご一緒できることを嬉しく思います。

はじめての方も、この一話から入れるように書いていますが、背景をより深く知りたくなったら、どうかシリーズ一作目から。

https://ncode.syosetu.com/n9961ml/

  挿絵(By みてみん)


“そっちに行ったぞ!”

“逃がすな!”

 コンテナの積み上がる埠頭の中、そんな声があちこちに響き渡る。夕闇迫る黄金の光が、隙間から矢のように差し込んでくる。

「な、何でこんなことに!」

 声から少しでも遠ざかるように、二十代ぐらいの若い男性が足をもつれさせながら走り続ける。

 ベージュ色のブレザーと赤のネクタイ‥‥少し茶色がかった髪は染めているのかもしれない。

「とにかく逃げないと」

 コンテナの陰に隠れるように、背中をもたれかける。

 息は完全にあがっていた。

 そして青年を追っている者達の数は多く、既に周囲を取り囲まれつつあった。

「俺は‥‥こんなとこで掴まるわけにはいかない」

 男性はコンテナに上る。それまで遠慮がちに届いていた夕日の輝きに、青年は目を細めた。 このまま上を渡って隠れながら行けば‥‥そう考え、姿勢低く、速足で港の出入り口に向かう。

 鉄を踏む硬い音が静かに響くが、波止場の波の音に紛れてそれは大したことではなさそうだった。

 しばらく進んでいると、追手の声が聞こえなくなった。

 何とか逃げ切れたようだった。

 この先どうすべきか‥‥とにかく落ち着けるところまで行ってからにしようと考えた。

 男性はコンテナを降りようとしたが‥‥。

「!」

 足元のコンテナの壁に、銃弾が当たった。カン‥‥という乾いた音の後、小さな振動が伝わってくる。

「‥‥‥‥くそ」

 複数の警察の制服姿の男が、男性を狙っている。外したのはわざとで、いつでも撃たれる状況にあるのがすぐに分かった。

 スーツ姿の中年の男性が手前に出てきた。

 拡声器を口に持ってくる。

=後藤幸平、君がやった事は重大な罪だ!=

「‥‥‥‥」

 既に身元がバレているようだった。つまりこのまま家に戻るわけにもいかなくなったということだ。

「‥‥‥‥」

 男性‥‥幸平は警官たちを睨みつける。

 待ち合わせの場所は確かにここだった。もしかしたらそれ自体がおびき寄せる罠だったのかもしれない。

 上がっているコンテナの周囲には警官に取り囲まれている。遠くからは銃で狙われており、逃げることは無理そうだった。

「‥‥分かった! 投降する!‥‥!」

 幸平は手を挙げたが、その瞬間、足に焼けるような鈍い感覚が走り、直後にそれは激痛に変わった。

「うがっ!」

 銃声は聞こえなかった。だが撃たれたのは確かだった。遅れてきた痛みに、こらえきれずに下に落ちて転んで足をおさえた。流れる血が滴り、周囲に血だまりが出来ていた。

「ぐ‥‥そんな‥‥いきなり」

 捕まれば拘束される‥‥その程度だと考えていた。いきなり発砲してくるとは考えられない話だった。

 警官達が集まってきた。全員が拳銃を手に持っている。

「後藤幸平、立ち入り禁止区域へ進入しようとしたこと、間違いないな?」

 警官の一人が淡々とした声でそう聞いてきた。

「まだ行ったわけじゃない。そ、それより‥‥」

 痛みに気を失いそうになる。

「間違いないな」

「あ、ああ」

 仕方なく幸平は警官の言葉に首を縦に振った。

 質問してきた警官が手を上に上げた。それを合図に、全員の銃口が幸平に向けられた。

 幸平の顔から血の気が引いて、足の痛みを忘れそうになる。

「ま‥‥待ってくれ!」

 夕日の逆光で警官達の表情は分からないが、陰になったその顔は人間には見えない。

 彼らは躊躇なく撃ってくる‥‥幸平は確信をもってそう思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。