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必中必殺の〝魔弾の射手〟~異世界の冒険者学園に転入したんだけど、もしかして俺……ちょっと浮いてる?~  作者: 右薙 光介


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第36話 中二病はもう卒業したはずなんだけどな

 アリスの決意に、俺は頷く。

 このレムサリアにおいて冒険者パーティというものは、ときに家族よりも深い絆を結ぶこともあると様々な場面で聞いた。


 ――「俺達はパーティ、なので」

 ――「それを出されると不可とは言えんな」


 いつかの研修でしたやり取りが思い返される。

 あの時の俺は、そんなつもりでなく口にした言葉だが……教官にとっては無理を通さねばならないようなキラーワードだったのろう。

 で、あれば。俺もアリスの言葉に報いねばなるまい。

 『メルクリウス』として、この局面に立ち向かうというのであれば。


「コロシテヤル、コロシテヤルゾ……!」


 徐々に人格や知性を失っているように見えるゲルシュ・ザウルスがこちらに首を巡らせ、その鈍重な歩みからは想像できないような速度で噛みついてきた。

 それを横なぎの一撃をあわせてカウンターを決めたバルクが、殺気をみなぎらせる。


「やらせんぞ! ボケカスが!」


 口汚くも頼もしいドワーフの重い一撃が、首に打ち込まれる。

 半ばまで裂けたものの、すぐに元通りになってしまうそれに、連続で戦斧を撃ち付けるバルク。


「再生しながら攻撃はでけんやろが!」


 バルクのがなり声に、俺ははっとする。

 文字通りに時間稼ぎをしてくれているのだ、親友は。

 ならば、手を考えねばなるまい。


「わたしはサポートに回るわ。手持ちの魔術じゃ決定打がなさそう」

「ボクは、弱点が無いか、しらべる」


 回復用の水晶を取り出すアリスと、音もなく駆け出していくメアリー先輩。

 そして、俺は手持ちの投射弾を手探りながら考える。

 この化物をどう沈めたものかと。


 アリス同様に、決定打に欠けてしまう。

 ここまで再生能力の高い相手を制圧するには、火力が足りないのが現状だ。

 歯を食いしばって、自分の情けなさを思わず自嘲する。


 勇者の息子にして、魔貴族の息子。

 異世界チートのハイブリッドのくせに、どうして俺にはこうも『力』がないのか。

 今ここにいる俺は、『一般高校生』ではなく『メルクリウスのリーダー』で『冒険者』なのに。


「ぐぅッ!」

「バルク!」


 徐々に押され始めるバルクに援護射撃を行いながら、距離を取る。

 鉄礫を連続で撃ちこんでやったが、まるで意に介しない様子だ。

 あれだけ図体が大きいと、俺の投石紐(スリング)でも大きなダメージを与えるのは難しい。

 そもそも、あの腹立たしい頭部が弱点ではないというのは少しばかり設計ミスではないだろうか。


「きつい、かも」

「わたしも、そろそろ……まずいかも」


 つむじ風の如く俊敏に駆けながら攻撃を加えていたメアリー先輩も動きが鈍り、アリスの魔力も限界に近付いてきたその時、ついにバルクが大きな一撃をもらってしまった。


「ガ……ハッ」

「ハハハハ、シネ、シネ! オレサマ、マルカジリ!」

「やってみろや! 腹ン中から割いて出たるわ!」


 空元気とも取れる言葉で挑発するバルクに巨大な脚を踏み下ろすゲルシュ・ザウルス。

 鎧の軋む音が、俺のところにまで届いた。


「ぐああああ」

「させ、ない──ぁく!?」

「メアリー先輩!」


 フォローすべく飛び出したメアリー先輩だったが、合わせるように振り返った首の一薙ぎが彼女を捉えて大きく跳ね飛ばした。

 地面を転がって、動かなくなるメアリー先輩。


「ハハハハ、メアリー、メアリー! オモイシッタカ! ハハハハ!」


 耳障りな嗤い声を上げるゲルシュ・ザウルス。

 俺の隣では、アリスが小さく震えていた。


 このままでは全滅する。

 何もできないまま。


 俺の友人が、恋人が居場所が……失われてしまう。奪われてしまう。

 そんな焦燥感の中、気が付くと俺は無意識のうちに投石紐(スリング)を回転させていた。


 疾く、疾く、疾く……!


 心の奥底から浮かび上がってくるその言葉に誘われるままに、その回転を速くしていく。

 一体、何の投射弾を仕込んだかすら覚えていないが、右手に感じる遠心力の重みは覚えのないものだった。


「アリス、コロス」

「……!」


 こちらに向き直るゲルシュ・ザウルスに、体をこわばらせるアリスの前に出て、俺はさらに投石紐(スリング)を回転させる。

 本来、回せば回すほどいい……というたぐいのものではない。

 だが、回せば回すほど何かが膨れ上がっていくのも感じていた。


「タキ、それ……」


 肩越しにアリスの声が聞こえる。

 ちらりと振り返ると、その視線は回転する投石紐(スリング)へと向けられていた。

 つられて横目に確認すると、『それ』は七色に輝いていた。

 心の奥で、何かが「カチリ」と収まるような音が聞こえ――俺は『これ』を理解した。


 父がこの世界で得た力に連なるモノ。

 母がこの世界で失った力に連なるモノ。

 レムサリアと地球、二つの世界どちらにも在って、どちらにも属さない俺に編纂された神話のひとかけら。


 『〝虹の投石紐〟を揮う者』の得物の一つが、いま俺の手にある。


 その名を呼ばれるのを待ちながら、虹色に輝いている。


「ああ、くそ。中二病はもう卒業したはずなんだけどな……」


 そんな自嘲じみた笑いを独白しながら、俺は『その名』を呼ぶ。


「穿てよッ! ――【フラガラッハ】!」


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