吾作爺さんの話
続いて腰の曲がった男が話始める。
男の腰は骨折しては癒着するを繰り返したのか地面にお辞儀している様に曲がっている。
「ほんま食べるもんが無いわ。」
「ここ数年洪水と干魃が繰り返して来てのう。
畑の雑草さえ枯れとる。」
「なのに全く税が変わらぬ。」
「わしらの税をまとめて納めてくれる馬借の者らが同情してくれて心を痛めてくれとるんじゃ。」
「とりあえず食わにゃならんで土倉や酒屋から金を借りまた借りてでよう首が回らん。」
「こないだ来とうた亀を覚えちゅうか?兵衛どん。」
「長生きしてくんろと亀と名付けたやが。
もう、おらん。人買いにうったがや。」
「わしがじゃ?」
「とっても可愛がっとじゃが、目の前に食べ物ば出されたら頭が働かなくなってな。」
「亀は笑ってじいじいお腹いっぱい食ってな取られたら容赦せんようと言っておった。」
「実は忘れておった。」
「今木の枝ばもろうてかじっておったら思い出したわ。」
「あーー。」慟哭。慟哭。慟哭。慟哭。慟哭。
「わしは人でなしじゃ。」
「あんなに可愛いがっておったに。」
「わしはじいじいとずっと言って付いて来ておったに」
「わしに言ってもらう価値なんてないじゃが。」
「のう。のう。のう。わしはケダモノじゃきに。」
「何故忘れていたんじゃろう。」
「くりごとばかりじゃ。」
「亀を奈落に突き落としておいて。」
「なあ、長生き?」
「亀のお金を年の暮れに取り立てるそうな。」
「なあ、兵衛どんアホな年寄りの繰り言やがこのお金を守りたい。」
「今となってはこのお金が亀なんじゃ。」
「右手が仏様。
左手がこの世の衆集。
わしはひたすら手を合わせる。
わしにも救いを。
わしにも救いをくりゃあ。
せめてそれが分かる内にわしにもくりゃあ。」




