やらかしの90
「え~と、ケイジ様、もう一度お聞きしても?」アイリーンが言う。
「あぁ、マシクフの肉ダンジョンを踏破してきた。」
「え~っと、情報は頂けるのですか?」
「あぁ、かまわないが、ギルドが破産するんじゃないか?」
「え?」
「紫炎、マスターミノタウルスのレベルは?」
「500です。」
「と言うことだが?」
「あの、階層は?」
「50だった。」
「それだけで、250万G・・・」
「やめとくか?」
「う~。」
「大体、マシクフのダンジョンは、2階以降人が潜れるダンジョンじゃないだろう?」
「いえ、誰かさんのおかげで、5階層までは踏破が確認されています。」
「へぇ、凄いな。」
「パンピーもやるもんだ。」
「ケイジ様が規格外なだけです。」
「否定はしないぞ。」
「受けましょう。」アイリーンは言う。
「くっ、くっ、くっ、お主も悪よのう。」
「いえいえ、それもこれも、ケイジ様のお仕込みでございます。」アイリーンが頭を下げて言う。
(おぉ、アイリーン、成長したな。)
「んじゃ、39階層までな
。」
「偶数階ごとに、フロアボスはミノタウルスが出る。」
「はい。」
「レベルは80から120の間だな、完全にランダムだ。」
「はい。」
「16階と、32階層は、マスターバハロー8頭が守るルームになっている。」
「そのフロアボスも、当然ミノタウルスだ。」
「はい。」
「39階層までの、全ドロップは屑魔石多数、魔石1200、上魔石177、特上魔石15、バハロー64、マスターバハロー14、ミノタウルス10だ。」
「はあぁ。」
「アイリーン」
「はい、何ですか、ケイジ様?」
「疲れてないか?」
「ははは、いえ、少しも。」そう言うアイリーンの目はハイライトが消えている。
(今夜は、温泉に連れて行こう。)俺は思う。
「で、40階層だ。」
「フロアボスはレベル200ミノタウルス。」
「ドロップはバハロー1、ミスリルの網、上級魔石2個だ。」
「はい。」
「41階層ロアボスは、レベル300イエローボアだった。」
「弱点は植物魔法。」
「え?」
「収穫は特上魔石。」
「42階層もイエローボアがフロアボスだ。」
「魔石7、上魔石8、アダマンタイトの鍋? が残った。」
「はい。」
「イエローボアが残るかもしれない。」
「43階層だ。」
「魔石9、上魔石11、マスターバハロー1。」
「フロアボスは、ブルーボア。」
「弱点は、植物魔法。」
「はい?」
「44階層。」
「魔石12、上魔石5。」
「フロアボスは、ブルーボア2頭レベル220。」
「植物魔法が弱点」
「ブルーボア2頭ドロップするかもしれない。」
「45階層。」
「魔石15、上魔石7、マスターバハロー2。」
「フロアボスは、レッドボア。レベル300。」
「弱点は水魔法。」
「46階層。」
「魔石20、上魔石18、マスターバハロー3。」
「フロアーボスは、レッドボア、レベル310。」
「弱点は氷魔法、レッドボアが残るかもしれない。」
「47階層。」
「イエローボア、ブルーボア、レッドボア各一頭。」
「フロアーボス、グレートボア、レベル380、弱点なし」
「それぞれが、残るかもしれない。」
「48階層は、16階層と同じボーナスステージで。入口から続く廊下の左右に8個の扉があり、7部屋はマスターバハローがフロアボスだ。」
「今回のドロップは7部屋分で、魔石77、上魔石33、マスターバハロー7だった。」
「最後の部屋は、魔石11、上魔石4、マスターバハロー4だった。」
「フロアボスは、マスターボア、レベル400、討伐できれば、特上魔石とマスターボアのお肉が残るかもしれない。」
「そして49階層。」
「フロアーボス、グレートマスターボア、レベル400一頭のみだ。」
「グレートマスターボア、ですか?」
「あぁ、全長5mを優に超え、およそ50cmはある牙が付いている。」
「毎回かは知らないが、今回はグレートマスターボアの肉と、特上魔石5個が残った。」
「そして、最後の階層、50階だ。」
「はい。」
「フロアボスは、レベル500、マスターミノタウロス。弱点は左胸への氷魔法だ。」
「はぁ。」
「マスターミノタウルスは、全身が希少部位のお肉だ。」
「はぁ。」
「アイリーン?」
「はい、ケイジ様?」
「大丈夫か?」
「えぇ、何とか。」
「最下層には、ダンジョンマスターのバラン派閥、第13位、火焔竜マグマがいる。」
「ケイジ様。」
「なんだ?」
「お腹いっぱいです。」
「今の情報だけで、支払いが天文学的数字になってます。」
「あぁ、じゃぁ、フロアーボス情報は、前回と同じで下から2階層だけで良いぞ。」
「ありがとうございます。」
「あぁ、愛するお前のためだ。」
「はぅう、ケイジ様。」
「では、今回の情報料、400×100×49+500×100×50=446万Gです。」
「あぁ、決済は待てばいいんだな?」
「はい、前回の決済も済んでいません。」
「あぁ、良いよ。」
「ありがとうございます。」
「あぁ、アイリーン。」
「何でしょう?」
「今夜は、温泉でどうだ?」
「ケイジ様ぁ!」アイリーンが俺に抱き着き、口付けしてくる。
「喜んでお供いたします!」そう言うアイリーンの目は、ハイライトが戻っていた。
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「温泉は、いつもの通り、嫁さんたちに楽しんでもらえたようだ。」
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次の日、孤児院の先生役を引き受けているハクに聞く。
「さて、ハク。」
「な~に?」
「今日は、オカタのダンジョンに行くが、付いてくるか?」
「オカタ? あぁ、行きたい。」
「んじゃ、今日は休校だな。」
「うん。」
「と、言うことだから、今日は華厳の店を手伝え!」
「「「は~い。」」」
「んじゃ、オカタまで跳ぶぞ。」
「ん、虚無の部屋に居れば良い?」
「おぉ、ハク、大正解だ。」
「ははは、久しぶりに褒められた。」
「ん? 前に褒められたのは?」
「ん~? 100年ほど前?」
「ハク、それはノーカンだ。」
俺はハクを虚無の部屋に入れ、オカタに跳ぶ。
今回は、蕎麦うんぬんはいらないよな。
そう思いながら、ハクを虚無の部屋から出す。
「あぁ、オカタのダンジョンの気配がする。」ハクが言う。
「ハク、今どんな気持ちだ?」
「ん~、懐かしい?」
「何で疑問形?」
「よくわからないや。」
「そうか。」
「わぁ、こんな風になっていたんだ。」ハクがダンジョンの入り口を見て飛び跳ねる。
「あぁ、それじゃ並ぶか。」
「あぁ、今ならすぐ入れますよ。」そこにいたギルド職員が言う。
「おぉ、じゃぁ3人な。」俺は300Bを渡す。
「え? あぁ、ケイジ様ですか、サラン様の分ですね。」
「あぁ。」
「でも、今回はサラン様のお姿が?」
「気にするな、指輪の中でふて寝しているだけだ。」
「な、マスター、ふて寝はないだろう!」指輪からサランが飛び出して俺に抗議する。
「おや、違ったのか?」
「マシクフのダンジョンで、呼び出されなかった事を、気にしてなどいない!」サランは頬を膨らませながら言う。
「ははは、お前の手を借りるほどではなかったんだよ。」俺はそう言いながらサランの頭を撫でる。
「な、マスターがそう言うのなら仕方ないな。」サランは頬を染めながらそう言う。
(ちょろいな。)
「んじゃ、潜るか。」俺はそう言いながらオカタのダンジョンに入る。
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「紫炎、ここまでの戦利品は?」
「屑魔石180、魔石231、鉄720重、ミスリル390重、アダマンタイト20重です。」
「おぉ、さて、7階層か?」
「はい。」
「レベル120の玄武だっけ?」
「レベルは違いますが、玄武です。」
「おぉ、その都度違うんだ。」
「はい。」
「おぉ、」そう言いながらその階に一歩踏み出す。
「ははは、よく来たな、って前にも来たね?」そこにいた者が声を出す。
「おぉ、久しぶりだな。」
「前は、一瞬で首を落とされたね。」
「おぉ、記憶は残るのか?」
「え? そこにいるのは白虎?」
「やほ~。」
「なんで、そこにいるの? 9階層の防衛は?」
「ここにいる、ケイジ様に名前を貰ったら、剥がされた。」
「何それ、羨ましい。」
「で、今回も俺の進行を阻むか?」
「いや、僕にも名前をください!」
「は?」
「このダンジョンに囚われて数十年。」
「はぁ。」
「誰も来ないのが耐えられない!」
「あぁ、俺ぐらいだよな、来れるの。」
「お前もハクと同じ人型になれるのか?」
「あぁ、もちろん。」そう言って、玄武がハクと同じような巫女装束の少女になる。
おやぁ、女子中学生に見えるな。
衣装はハクと色違いか。
「さあ、僕に名前を!」
(あぁ、僕っ娘の亀?)
(カメ、って言ったら殺されるなきっと、負けないけど。)
〈玄武、亀、ミドリガメ、ミドリ。〉
「よし、君の名は『ミドリ』だ。」
「おぉぉ、僕は、ミドリ・・」その身体が光に包まれる。
「あぁ、気持ち良い、ケイジ様、私も貴方の盾になりましょう。」そう言って、玄武が巫女装束のまま俺に言う。
「おぉ、宜しくな。」
「はい。」そう言って、ミドリが俺の後に続く。
「さて、次は鳳凰か。」
「はい。」
俺は、8階層に足を踏み入れる。
「「「「「「ひぎゃああぁぁぁぁあぁぁ。」」」」」」
「魔石22、上魔石11、鉄550重、ミスリル220重、アダマンタイト50重、ヒヒイロカネ15重を虚無の部屋に入れました。」
「あぁ、鳳凰だな。」
「はい。」
「前回は、最大級の炎で滅したが、今回はどうするかな?」
「ケイジ様に下るのでは?」
「そうだと良いがなぁ。」
その先に、鳳凰が現れ言う。
「あぁ、ケイジ、炎で焼かれる感覚最高だったよ!」
「それはよかった。」
「で、そこに玄武も、白虎もいるってことは、僕もここから剥がしてくれるの?」
「あ~、そうだな。」
「どうすれば良い?」
「は?」
「お前に、魂を捧げれば好い? この身を捧げれば好い?」
「いや、落ち着け。」
「落ち着けないよ、自由になれるんだよ。」
「もう一度焼いてやろうか?」
「ひぃ。」鳳凰が怯える。
「ん~、火の鳥、炎、エン、んじゃ、お前の名前はエンな。」
「エン、僕の名前。」その身体が光に包まれる。
おや、今度は少し大人っぽくなったな。
衣装はやっぱり色違いか。
「さて、9階はどうなっているかね?」俺はそう言いながら、階段を下りた。
「「「「「「「ひぎゃぁぁぁぁぁ。」」」」」」
「上魔石29、特上魔石2、虚無の部屋に。」紫炎が告げる。
「で、当然白虎はいないっと。」
「さぁ、10階、10階。」
「「「「「ひぎゃあああぁぁ」」」」」
「上魔石23、特上魔石2、アダマンタイト40重、ヒヒイロカネ20重、オリハルコン10重虚無の部屋に。」
「おや、また来たのかい?」
「あぁ、飲みに来た。」
「あれ? 玄武と鳳凰? 君たちも名を貰ったのかい?」
「あぁ、僕はミドリだ。」
「僕は、エン。」
「いいなぁ、羨ましい。」
「さぁ、お前の体力が心配だから、軽く飲んで帰るぞ。」
「青龍とハクは前と同じで良いか?」
「「うん。」」
俺は二人に燗酒を渡す。
「ミドリとエンは?」
「それお酒?」
「あぁ、清酒を温めたものだ。」
「僕もそれが良い。」
「僕も。」
「サランは冷酒か?」
「はいマスター。」
「サランに奉納を。」
「おっと、つまみつまみ。」そう言いながら、色々と机に並べる。
「卵の燻製は?」
「おぉ、あるぞ。」俺はそれを出す。
「塩辛は?」
「勿論あるぞ。 あぁ、サランに奉納を。」
「ありがとう、マスター。」
************
「んじゃ、また来るな。」
「うん、待ってるね。」
「それじゃあ。」
「元気でね。」
「バイバイ。」
「うん、僕の分まで楽しんで。」青龍は少しだけ悲しそうに言った。




