やらかしの91
「今回の実入りは、魔石253、上魔石63、特上魔石4、鉄1270重、ミスリル610重、アダマンタイト110重、ヒヒイロカネ35重、オリハルコン10重か。」俺は虚無の部屋をのぞきながら思う。
「そういえば、マシクフのダンジョンのドロップは?」
「屑魔石多数、魔石1375、上魔石275、特上魔石25、バハロー65、マスターバハロー31、ミノタウルス10、イエローボア2、ブルーボア3、レッドボア1、グレートボア1、マスターボア1、グレートマスターボア1、マスターミノタウルス1です。」
「ミノタウルスの解体を頼めるか?」
「おぉ、お任せ下さい。」
「はいにゃ。」
「「「頑張る!」」」
華厳、ムーニャ、エル、エヌ、エムが元気よく手を上げる。
わずか半刻で10頭全部の解体が終わる。
「凄いな。」
「ははは、お任せください。」華厳がポーズを決めて言う。
「もう一頭、良いか?」
「はい、いくらでも!」
「ほい。」俺はイエローボアを取り出す。
「おぉ、初めて見ます。」
「にゃ、オークっぽいにゃ。」
「では、それを参考に。」そう言いながら華厳は見事に皮を剥いでいく。
「内臓はどうするにゃ?」
「ケイジ様、ボア種は内臓を食べることはお勧めできません。」紫炎の声が聞こえる。
「何故?」
「ボア種の内臓に寄生する虫は、熱などで駆除できません、また虫の死骸を食べても食べたものに寄生します。」
「寄生されると?」
「7日間、地獄の苦しみを味わった後、その虫が腸を食い破って皮膚に出て、宿主を食べます。」
「うわぁ、焼却処分だな。」
「解ったにゃ。」
「で、これがコカトリス以上のお肉?」
「普通のオーク肉のようにも見えますが?」
「うん、とりあえずロースっぽいところを薄切りにして、焼いてみるか。」俺はその肉を薄切りにすると、コンロの処に行き、フライパンを取り出して焼いてみた。
途端に広がる、肉の焼ける匂い。
「うぁぁ、匂いで解る、これ絶対に美味い奴だ。」
「け、ケイジ様、よだれが止まりません。」
「にゃ~、魚よりも食欲がそそるにゃ。」
「あ、あ、あ、ケイジ様、これ、凄くダメな奴です。」
「エルの言う通りです、これは麻薬に近い依存を受けそうです。」
「あたし、このお肉食べられるなら、死んでもいい。」
「食べるのやめるか?」俺が言う。
「まさか。」
「食べるに決まってるにゃ。」
「食べます。」
「勿論。」
「絶対。」
「後の責任持たないぞ。」
「自己責任ですね。」
「あぁ。」
と言いながら、焼けた肉を口に入れる。
「なんだこれ。」俺は膝から落ちる。
「おぉう!」
「うにゃ!」
「はう!」
「へあ!」
「あぅぅ。」
口の中に広がる脂の旨味。
「これは、コカトリス以上なの解るな。」
「はい。」
「しかも、その上に6種か。」
「ははは、この肉を国王に献上するだけで戦争が起きますね。」
「マスターミノタウルスの肉はどんだけだろうな?」
「私は、ケイジ様の配下であることを、精霊様に感謝します。」
「おいおい、華厳、肉だけの忠誠か?」
「ははは、まさか。」
「華厳、棒読みだぞ。」
「いえ、まったく、そのような。」
「まぁいいや、素材を売ってくる。 紫炎、ベカスカのギルド前に。」
「はい。」
俺はそこを潜る。
「おにぎり、完売です、次の補給は一刻後です。」
「サンドウイッチ、後5個です。」
「おぉ、2個くれ。」
「はい、どうぞ。」
「おぉ、頑張ってるな。」俺はそう思いながら、ギルドの傍に在る道具屋に入る。
「邪魔するぜぇ。」
「おぉ、ケイジ様、いらっしゃいませ。」
「ちっ。」
「この度はどのようなご用件で?」
「あぁ、ベカスカの孤児たちは、モウチクを買いに来ているか?」
「はい、よくいらっしゃいます。」
「そうか。」俺は安心した。
(流石、エスだ。)
「今日は、ミノタウルスを持ってきた。」
「おぉ、すべて買い取ります。」
「即答だな。」
「ははは、ケイジ様の持ち込むものはすべて最高級ですからね、当然です。」
「んじゃ。」そう言うと、俺はそこに10頭分のミノタウルスの皮と蹄を出す。
「おぉ、今回も傷一つないものですな、全部で1200Gで買い取ります。」
「あと、こんなものも持って来たんだが。」そこにイエローボアの毛皮を出す。
「おぉ、初めて見るものです、鑑定させていただいても?」
「あぁ、イエローボアの毛皮だ。」
「はい?」
「マシクフのダンジョンの41階層で出たものだ。」
「はぁ?」
「買取は無理か?」
「いえ、お待ちください。」そう言うと親父さんは毛皮を奥に持って行った。
しばらくして、おやじさんが震えながら俺の前に来る。
「ケイジ様、買わせてもらっていいのですか?」
「あぁ。」
「あの、国王様に献上すれば、領地がもらえて、爵位も貰えるものですよ。」
「興味ないから良いよ。」
「この店の取引記録、ぶっちぎりです。」
「へぇ。」
「90万Gです。」
「は?」
「王国の道具屋に持ち込んだら100万Gを超えるかもしれません、本当に良いのですか?」
「あぁ、まだあるから、其れで良いよ。」
「なんと?」
「では、ありがたく、買い取らせていただきます。」
「あぁ、決済してくれ。」俺はカードを渡す。
「はい。」
「お支払い、901200Gです。」
(ははは、日本円で90億か。)
「最近、コンロは売れているか?」
「はい、その後で持ち込まれたオーブンも売れています。」
「オーブンは、何に使っているんだ?」
「孤児院で売り出した、パンに使われているようです。」
「そうか。」
「おやじさん、オーブンは今後売れるから、多めに仕入れた方がいいかもな。」
「おぉ、そうなのですか?」
「俺が、オーブン料理を広めるからな。」
「はい、判りました。」おやじさんは直立して、腰を90度曲げて俺に礼をする。
「んじゃな。」
「はい、またのご来店をお待ちしています。」
「あぁ。」
そして、少し歩き、魔石の店に入る。
「おぉ、ケイジ様、お久しぶりです。」
「魔石の買い取り、頼めるか?」
「はい、喜んで。」
「どうぞ。」受け皿を出して言う。
「足りないぞ。」そう言いながら、俺は魔石を出す。
300個ぐらいで、受け皿は満杯になった。
「お待ち下さい。」そう言いながら受け皿を2個出してくる。
「まだ足らないぞ。」俺はそう言って、更に魔石を出す。
「あぁぁぁ、お待ちください。」そう言いながら、更に3個の受け皿を出してくる。」
「おぉ、これなら。」そう言いながら、魔石を受け皿に出す。
「あと、今回は上級魔石も出すよ。」
「へ?」
「あれ? 支払いが無理か?」
「いえいえ、買わせていただきますよ。もちろん。」そう言いながら新たな受け皿を出してくる。
「んじゃ、出すぞ。」おれはそこに上級魔石を出す。
「あぁ、ボーナスで、これも出すよ。」俺は特上魔石を一個取り出す。
「なぁ?」
「お、お待ちください。」そう言って、男が奥に引っ込んだ。
「時間かかるんだよなぁ。」
「はい、マスター。」今回はサランしか付いて来ていない。
「仕方ない、自分でお茶を用意するか。」そう思いながら準備を始めると、サランが言う。
「マスター、私でもお茶を用意できる。」
「え?」
「何のお茶が飲みたいのだ?」
「え、番茶?」
「解った。」そう言うとサランは番茶を煎れる。
「どうぞ。」サランが湯飲みを俺の前に出してくる。
「おぉ」俺は湯飲みを手に取ると口に含む。
「あぁ、番茶だな。」
「よかった、マスター。」
「凄いな、サラン。」
「マスターの為だ。」
「ははは、ありがとうサラン。」そう言いながら俺はサランの頭を撫でる。
「はぅ。」サランが固まった。
「ケイジ様、鑑定が終わりました。」
「おぉ。」
「はい、魔石1628個、上魔石338個ありました。」
「魔石が8140Gです。」
「は?」
「上魔石は16万9千Gです。」
「おぅ。」
「特上魔石は魔石の6000個分の魔力が蓄積されているので、3万Gです。」
「え~っと。」
「カードを。」
「あぁ。」俺はギルドカードを渡す。
「決済金額は、20万7140Gだ。」
(日本円で約21億?)
「おぉ、この店の最高取引です。」
「ははは。」俺は乾いた笑いで答える。
特上魔石が、数百個虚無の部屋にあるのは内緒にしておこう。
そう思いながら、ギルドに向かう。
孤児たちは、弁当を売り終わったのか、階段の横で休憩していた。
俺はその横の階段を上がり、ギルドに入る。
中にいた者たちがちらりとこちらを見るが、興味なさそうに元に戻る。
(嫁さんたちを連れていないと、反応が薄いな、本当に。)俺はそう思いながら、カウンターに近づくと、受付の獣人のお姉さんにカードを渡して、俺宛の連絡がないかを聞いた。
獣人のお姉さんは、カードを端末に差し込んで操作する。
「ケイジ様へ、ワシカのギルドより送金があります。」
「あぁ。」
「金額は、あの。」お姉さんが俺を呼ぶ。
「ん?」
「もう少し近くに。」
「あぁ。」俺は身を乗り出す。
「11万3100Gです。」囁くように言う。
「あぁ、お気遣いありがとうな。」
「いえ、其れと、お漬物を預かっています。」
「おぉ、来てたのか?」
「お支払いは、ケイジ様の口座より行っております。」
「あぁ、かまわないよ、で、物は?」
「奥の、倉庫の保管所にあります。」
「あぁ、行ってもらってくるよ。」そう言いながら俺は倉庫に向かう。
「あの~、漬物を引き取りに来ました。」そこにいたお姉さんにカードを見せる。
「はい、あぁ、ケイジさんのお荷物はこちらです。」そう言いながら、部屋の一角にある、保存部屋に連れていかれる。
この部屋は、俺の虚無の部屋と同じで、時間も止まる保管場所だ。
「どうぞ。」そう言いながら、お姉さんがドアを開ける。
「な?」俺はそれを見て固まった。6畳ほどある部屋の中に、天井まで高く積みあがった漬物と思われるものが、入口まで詰め込まれていた。
「え~っと、これ何回分ですか?」
「ここ数か月で4回分です。」
「あのばばぁ、いや、あちこちに回せばいいか。」俺は紫炎に漬物を回収させる。
「因みに、いくら分だろう?」
「10Gですね。」
「ははは。」俺はカードを照会する。
カード所有者:ケイジ
ギルドランク:A 6、172、731G
伴 侶:獣人:ミーニャ
伴 侶:人 :カリナ・ゴウショーノ
伴 侶:獣人:ムーニャ
伴 侶(血族):サラン(サラマンダー)
伴 侶(血族):リアン(リバイアサン)
伴 侶:エルフ:アイリーン
伴 侶:ノーム:モーマ
伴 侶:人 :アヤ・ミカンナ
伴 侶:魔族:ヨイチ
伴 侶:魔族:ヒドラ
義 弟:獣人:メーム
隷 属:四獣:ハク
隷 属:四獣:ミドリ
隷 属:四獣:エン
「ははは、所持金額が豪い事になっているな。」そう思いながらカードをしまう。
「紫炎、華厳の店に。」
「はい。」
「漬物ですか?」
「あぁ、定食に小皿として付けても良いし、カウンターや机にサービスで置いても良いんじゃないか?」
「確かに、良いお考えです、流石はケイジ様。」
「アヤか、ムーニャに言えば出せるから、種類を見て出してもらえばいつでも使えるぞ。」
「はい、仰せのままに。」
「ぐふふ、漬物、確かに良いですね。」
「あぁ、高菜とかチャーハンに良いよな。」
「しかも、福神漬けですか?」
「あぁ、ばばぁにネタを与えたら、再現しやがった。」
「ぐふふ、これは、「アレ」を再現しないと駄目ですねぇ。」
「あぁ、だよなぁ。」
「そう言えば、山椒はどうなりました?」
「あぁ、ヤミノツウの孤児院の奥の畑で、絶賛育成中だ。」
「おぉ。」
「檸檬の木の横で、かなりの数になっているぞ。」
「ぐふふ、野望の完遂も近そうですね。」
「あぁ、期待しているぞ、ダンサ。」
「ぐふふ、勿体ないお言葉。」
「で、主様、ムーニャはベカスカの孤児に梅干しや、沢庵を提供すれば良いのですにゃ?」
「あぁ、ちゃんと対価は貰うけどな。」
「主様、でも凄く格安にゃ。」
「あぁ、俺は今後一切、施しはしない。」
「でも、ちゃんと助けてるにゃ。」
「いいんだよ、それより、俺が知らない孤児が増えているな?」
「はいにゃ、ヤミノツウの孤児にも、何人かいるにゃ。」
「ん? なんでだ?」
「解らないにゃ。」
「ほほほ、ご主人様、ギヤミのイダンセで、「魔王9位、超神ザード」が挙兵し、王都ヤゴナを目指しているとの事です。」
「それ、スナやここ、ヤミノツウも通るって事だよな。」
「はい、ご主人様。」
「そいつは、今どこにいるんだ?」
「はい、マシクフのマウソと言う村に進軍中です。」
「と、言うことは?」
「リトナ、マヌワイの村を蹂躙していますので、そこの孤児たちが、流れてきています。」
「あと数日でテダもその進行を受けます。」
「アイリーンとモーマ。」
「はい。ケイジ様。」
「何ですかケイジ様ぁ。」
「これ、ギルド案件か?」
「領土を超えた、侵略行為は違いますね。」
「つまり、これを抑えても只働きかな?」
「ギルドから、ヤゴナの王都に報告が上がりますから、王陛下から褒章があるかと。」アイリーンが言う。
「何をくれるか知らないが、要らないな。」俺は思う。
「ザードを屠る!」
「ほほほ、ザード終わりましたね。」
「あぁ、それでは討伐報告書を書かなくては。」アイリーンが言う。
「アイリーン、実際に屠ってから書いてくれ。」
「はい、ご主人様。」
俺はテダに行く事にした。




