やらかしの82
すみません、ごたごたして更新が遅れました。
昨日も更新してるので、未読の場合はそっちから宜しくお願いします。
そこは、今までと同じダンジョンだった。
入り口は、只の洞窟に見える洞穴。
「なんだ、何も変わらない、 ん?」俺はそれを感じ取る。
「これは、前に感じた存在か?」俺は、シハリクを思い出す。
「ダンジョンマスターは、あいつと同じ奴か。」俺はそう思いながら、そこの一階層に入る。
「「「「「「「はぎゃぁぁぁぁ」」」」」」」一階層の魔物が消える。
「紫炎、虚無の部屋に。」
「はい。」そこに有ったドロップがすべて消える。
「この階層は、レベル3までの、ゴブリン、オーク、血吸い蝙蝠が最大3匹で7パーティ現れました。」
「うん。」
「ドロップは、葛魔石5、魔石1、アイテムは無しです。」
「若いダンジョンだな。」
「はい。」
「お、早くも2階層への入り口か?」目の前には緩やかな坂が見える。
「らせん状に回りながら降りるのか。」
「罠は確認できません。」
坂を下りた先は、少し広い部屋があり、入り口から反対側の壁の中央に、木製のドアがあった。
「さて、次だな。」俺はドアを開ける。
「迷路か?」俺はそこを覗いて言う。
ドアから、真っ直ぐに続く道があり、左右と行き止まりにドアが見える。
俺は、そこに入る。
「「「「「「「「「「あぎゃぁぁぁぁぁ」」」」」」」」」」2階層の魔物も消えた。
「迷路の意味ないな。」
「レベル5までの、オーク、オーガ、一角ウサギ、毒ガエルが最大5匹で12パーティ現れました。」
「ドロップは、葛魔石7、魔石3、オーク肉(並)1kg、角2本、毒ツボ1です。」
「一応、虚無の部屋に。」
「はい。」
「紫炎、正解の道を。」
「正面、右、右、正面、左、右です。」俺はその通りに進み、ドアを開ける。
「で、3階層な。」
「今回も同じだな。」俺は3階層に入る。
「「「「「「「「はぎゃぁぁぁあぁ」」」」」」」」
「レベル7までのオーク、オーガ、ランナー鶏、一角ウサギ、毒イボガエルが最大で6匹15パーティ現れました。」
「ドロップは、葛魔石6、魔石5、オーク肉(並)5kg、ランナー鶏の肉(並)3kg、角3本、毒ツボ2です。」
「あ~、中堅レベルのパーティの良い狩場だな。」
「はい。」
「で、次が最後かな?」
「はい。」
「マジかぁ、4階層で帰ってこないって。」
「次のボスはどんなレベルだよ?」
「レベル30、吸血鬼です。」
「え?」
「レベル30、吸血鬼です。」
「レベル30?」
「はい。」
「俺、踏み込んで平気?」
「多分?」
「何で疑問形?」
「いえ、敵意が感じられないので。」
「そうか。」俺は4階層への階段を下りる。
ボス部屋の前の安全地帯。
「ここに入ったら、瞬殺じゃないか?」
「敵意がないので、平気でしょう。」
「はぁ、とにかく話してみるよ。」俺はそこへの扉を開く。
「おやぁ、又、お弁当が来たでありんすか?」そこにいた女が言う。
「あぁ、違うぞ。」
「あれ、なんで、自我がありなんす?」
「あぁ、俺に魅力は効かない。」
「あら、あら、其れはまずいでありんすね。」
「あ~、一応警告するな、お前が、俺に敵意を向けた瞬間に、お前は死ぬ。」
「あらぁ、其れは怖いでありんすねぇ。」その女が言う。
「あ~、俺に敵対しない限り、お前に敵対しない、其れを理解してくれ。」
「え? はい、わっちは理解したでありんす。」
俺は、その女の前に行く。
「あ~。俺はケイジだ、宜しくな。」
「はい、初めまして、わっちは吸血姫のカミラと申します、以後お見知りおきを。」
「あぁ、カミラと言ったか? お前の周りにいる人間は何だ?」
「はい、お弁当です。」
「お弁当?」
「はい、私、7日に一回、人の血を飲まないと暴走してしまうのでありんす。」
「暴走?」
「はい、半径200長の人間の血をすべて吸わないと収まらない暴走でありんす。」
「嫌な情報だ。」
「でも、7日に一度、血を飲ませて下されば、其れは収まるでありんす。」
「吸う血の量は?」
「コップ2杯で充分でありんす。」
「あぁ、献血程度か。」
「けんけつ?」
「いや、気にするな、血を吸ったら眷属化するのか?」
「まさか、眷属になったら美味しい血が吸えないでありなんす。」
「あぁ、そう言う。」
「あ~、今から言う条件を飲むなら、討伐しないぞ。」
「え?」
「今お前の周りにいる者を開放し、今後、吸血姫として、人に敵対しない、人を必要以上に捕食しない。これを守れるなら、ここに居られるように交渉してやる。」
「其れは、わっちの居場所を確保して頂けると?」
「あぁ、それで良い。」
「ここにいて良いのであれば、願ったりでありんす。」
「お前はダンジョンマスターなんだよな?」
「そうでありんす。」
「では、血を吸った相手に、対価を与えられるか?」
「対価?」
「あぁ、ダンジョンで生成できる物で良い。」
「武器や、防具、魔石でも良いぞ。」
「では、こんなのはどうでありんすか?」そう言って、魔石を作り出す。
「紫炎。」
「はい。」紫炎が其れを鑑定する。
「中魔石(並)10Gの価値があります。」
「血400ccの代金なら貰いすぎだな。」
「よし、今回血を吸ったのはどいつだ?」
「そこの女の人でありんす。」
「わかった、こいつらの魅了解けるか?」
「はい。」
「うあ。」
「ここは?」
「なぁ。」
「うぁ。」
「あ~、お前ら、落ち着け。」
「な、何だお前?」
「俺らをどうする気だ?」
「いや、落ち着け、お前らをどうする気もない。」
「な、そこにいるのは吸血姫か?」
「いや、待て、話を聞け。」俺はその男の前に出て言う。
「あんたは?」その男が俺に言う。
「あぁ、俺はケイジだ、ベカスカのギルド所属でAランクだ。」ギルドカードを見せながら言う。
「おぉ、Aランク、初めて見た。」その男が言う。
「お前ら、全員深呼吸、吸って!」
「「「「「すぅ~」」」」」
「吐いて。」
「「「「「「はぁ~」」」」」
「よし、落ち着いたか?」
「あぁ、ケイジさん、そこにいるのは吸血姫だよな?」リーダーらしき男が言う。
「あぁ、そうだ。」
「討伐対象だよな?」
「ん~、違うかな?」
「何でだよ?」
「そこの女の人。」
「え? あたし?」
「あぁ、あんた、血を吸われたってさ。」
「え?」
「なに?」
「マジか?」その傍にいた男たちが後ずさる。
「あたし、吸血鬼になったの?」その女が狼狽える。
「なってないってさ。」俺が言う。
「は? なんでだ? 証明するものは?」リーダーの男が言う。
「お姉さん、喉乾いてる?」俺がその女性に聞く。
「いえ、全然。」
俺は、首筋を出して、その女性の前に行く。
「吸って良いよ。」
「はぁ、何言ってるんですか、気持ち悪い。」その女性が嫌悪した顔で俺に言う。
「と言う事だ。」俺がリーダーに言う。
「ここにいる吸血姫は、血を吸ってもその相手が眷属にはならない。」
「はぁ?」
「しかも、血を吸う量は、コップ2杯で、対価はこれだ。」そう言いながら魔石を血を吸われた女性に渡す。
「え? 魔石?」
「中魔石で、10Gの価値があるぞ。」俺が言う。
「なんだと?」リーダーの男が言う。
「では、俺も血を提供するぞ。」
「申し訳ないでありんすが、わっちは今、お腹いっぱいでありんす。」
「な?」
「7日の間は血はいらないってさ。」
「な。」
「このダンジョンは、中堅のパーティの狩場として最適だと思うが、どうだろう?」俺がリーダーの男に言う。
「あぁ、出てくる魔物、ドロップ品も充分だ。」
「じゃぁ、一緒にギルマスに、進言してくれないか?」
「え?」
「7日に一度、血をコップ2杯提供するだけで、この美味しいダンジョンを維持できるって。」
「え?」
「しかも、その対価は10Gの価値がある魔石だと。」
「あぁ、いい話だ。」
「もし、吸血姫が暴走したら、俺が討伐する。」
「ひぃ。」吸血姫が竦む。
「だが、逆に、吸血姫を傷つけるなら、俺がそいつらを消す。」
「十分な対価だな。」リーダーの男が言う。
「納得してくれた、で良いんだな?」
「あぁ、そうだ。」
「んじゃ、お前ら全員、ギルドに連れて行く。」
「え?」
「紫炎。」
「はい。」そこにいた全員が消える。
「カミラ。」
「はい。」
「もし、お前に害意がある奴が来たら、魅了して、ダンジョンの餌にしてかまわないぞ。」
「え?」
「俺が許す、そんな奴らは屠って良いよ。」
「解りました、旦那様。」
「紫炎。」
「はい。」俺はダンジョンの入り口に潜る
「で、次はカオズシのギルドに。」
「はい。」
カオズシのギルドの前に着いた俺は、ドアを開けて中に入り、受付の前に行く。
「ギルドマスターを呼んでくれ。」そこにいた受付嬢に言う。
「は、はい、お待ちください。」そう言いながら、受付嬢が奥に消える。
「俺を呼ぶのは誰だ?」不機嫌そうな男が、奥の部屋から出てくる。
「あぁ、俺だ。」俺が手を上げて言う。
「何の用だ?」更に不機嫌そうにその男が言う。
「あぁ、とりあえずこれからだな。」俺はそう言いながら紫炎に指示する。
「冒険者をここに。」
「はい。」
そこに13人の冒険者が現れる。
「な?」
「ダンジョンで行方不明になっていた冒険者たちだ。」俺が言う。
「おぉ、其れはご苦労だった。」ギルマスが言う。
「あと、ダンジョンの在り方について相談したい。」俺が言う。
「ん?」
************
「・・と、言う訳だ。」
「成程。」う~んと考え込むギルマス。
「悪い話ではないと思うぞ。」そこに、このダンジョンでドロップした品を出しながら俺が言う。
「う~む、ドロップ品も悪くはない。」
「ギルマス、俺はケイジさんに乗った。」リーダーの男が言う。
「あたしも。」魔石を貰った女が言う。
「7日目に潜る権利を抽選にして、一枚100Bで売れば、良い儲けになるんじゃないか?」
「ふむ、乗った。」ギルマスが俺に右手を差し出す。
「よし、交渉成立だな。」俺はその手を握る。
「吸血姫は、保護対象にしてやってくれ。」
「あぁ、ギルドに利益をもたらしてくれる存在だ、大事にするよ。」
「あぁ。ここに出したものは買取してくれるか?」
「おぉ、良いとも、おい。」ギルマスは傍にいた女性に声をかける。
「査定終りました、葛魔石18個、180Bです。」
「魔石9個、4G500Bです。」
「オーク肉(並)6kg、3Gです。」
「ランナー鶏の肉(並)3kg、1G200Bです。」
「角5本、2G500Bです。」
「毒ツボ3個、3Gです。」
「因みに、毒ツボって何に使うんだ?」俺が聞く。
「薄めると、高級な化粧品に使用できます。」
「ほぉ。」
「で、合計14G380Bです。」
「あぁ、良いよ、決済宜しく。」俺はカードを渡す。
「はい、ダンジョンドロップ品買取確認しました、14G380Bです。」
「各パーティー保護、確認しました、400Gです。」
「ダンジョン情報、確認しました、20Gです。」
「あぁ、其れと、これは俺から特別報酬だ。」そう言いながらギルマスが受付嬢に紙を渡す。
「ギルドへの貢献、100Gです。」
「おぉ、気前がいいな、ギルマス。」
「うははは、ギルドに利益をもたらしてくれた礼だ。」
「おぉ、気に入った、ここにいる全員にラガーを奢るぞ!」
「ラガー、58杯、23G200Bです。」
「うははは、ケイジと言ったか、気前がいいな!」
「何、あんたほどじゃないさ。」
「うははは、気に入った、俺はここカオズシのギルマス、ログマと言う、宜しく頼む。」
「おぉ、俺は、「ケイジさんだろう、精霊様のご加護を貰った。」そう言いながら、ログマは俺の手を握ってくる。
「で、コカトリスの料理を振舞うのは本当か?」
「あぁ、俺が気に入った奴だけにな。」
「なぁ、1kgで良いから買わせてくれないか?」
「ん?」
「実は、俺には余命6か月の娘がいるんだ。」
「ほぉ。」
「娘に、食べさせたい。」
「・・」
「ジフの領主前婚の話は、おとぎ話のように広がっているんだ。」
「それを聞いた娘が・・・」ギルマスは、その場で声を詰まらせる。
「はぁ、其れを無視したら、俺は悪人だよな。」
(肯定します。)
(紫炎さん、突っ込み感謝。)
(どういたしまして。)
「ログマ、娘さんを俺に紹介してくれ。」
「え?」
「料理を提供するのに、顔を知らないのはおかしいだろう?」
「な、あ、あぁ、頼む!」
「よし、すぐに行くぞ。」俺はログマの手を取ってギルドを出る。
「どっちだ?」
「あぁ、こっちだ。」ログマが街のある方向を指して言う。
「案内頼むぞ。」俺はログマに続いた。
「展開が急すぎないか、色々と。」
(気のせいです。)
「紫炎はともかく、なんでサランが出てこないんだ?」
(気のせいです。)
「作為しか感じられないんだが。」
(気のせいです。)
「あ~。」
(気のせいです。)
「お願い、止めて。」
(・・・。)