やらかしの67
「華厳、ムーニャ、今日は俺に付き合え。」
「な、ケイジ様直々の御命令、御意でございます。」
「主様、ムーニャも大丈夫にゃ。」
「よし。」俺は二人を虚無の部屋に入れる。
「紫炎、ベカスカの孤児院に。」
「御意。」
「あ?ケイジ兄ちゃんだ。」
「おぉ、今日の仕込みはどうだ?」
「終わった~。」エスが言う。
「そうか、売れてるか?」
「うん、毎日即完売、最近はもっと増やせって怒られてる。」エスが言う。
「ほぉ、流石エスだ。」
「な、褒めても何も出ないよ!」エスが俺を睨む。
「いや、純粋に褒めてるんだが。」
「まぁいいや、褒美って訳でも無いけど、お前達を道具屋に連れてってやる。」
「道具屋?」
「行ってみたいかも。」エヌだけが反応する。
「よし、エス、エル、エヌ、エム、リノ一緒に来い。」
「え?」一瞬躊躇するエス達。
しかし数秒後、5人とも承諾する。
「紫炎、虚無の部屋に。」
「御意。」
「残った奴だけで、弁当を売れるか?」
「売るだけなら大丈夫~。」孤児の一人が言う。
「よし、任せるぞ。」
「はい~。」
「んじゃ、行くか。」
俺はシバパッカに潜る。
最初に訪れたのは、例のおろし金を発注した店だ。
「おぉ、お待ちしておりました、これが答えです。」俺を見た店長が、俺にそれを手渡す。
「ふぅ。」俺はため息をつきながら、俺がクリエイトで作ったおろし金を店長に渡す。
「なぁ?」
「こ、これは。」店長が驚愕した顔をして俺に言う。
「私の物は児戯と言う事ですか?」
「すまないが、そう言う事だな。」
「あの、これを買わせてください。」店長が言う。
「いや、進呈しよう。」
「え?」
「追いついてくれ。」
「な、解りました。」店長は何かを感じてそれを受け取る.
実際は,俺が、只面倒くさかったから、が正解。
(精神世界に、実技が追いつく、う~ん、この世界なら有かも知れない。)俺がそう思っていると、周りがガヤガヤしている。
華厳をはじめ、料理大好き~ズが店の中を見て、目をキラキラさせていた。
「おやじさん、中、見させてもらうな。」
「え? は、はい、どうぞ、どうぞ。」
「お前達、好きな物買ってやるぞ。」
「マジにゃ?」
「け、ケイジ様、本当ですか?」
「ケイジ様、言質とったよ!」そう言うと、皆店の中に散っていった。
「ははは、お手柔らかにな。」
「にゃ~。ミスリルの鍋にゃ。」
「おぉ、これはアダマンタイトのフライパン。」
「あぁ、原始龍の鱗のフライパン。」
「お~い、お前ら、程々にな。」
「こ、これは、玄武切りの包丁?」エヌがそれを見つけて言う。
「ちょ、何でそんな厄災級の刃物がそこに有るんだ?」俺が疑問に思うが、其れは確かにそこに存在した。
しかも、平台の上に無造作に。
「値段は、200G? こんな高級品、盗まれないのか?」
「ははは、大丈夫です、其れは持ち手を選ぶので、一般の方は持てません。」
「へぇ?」そう言って俺が手を伸ばそうとするが、何かにそれを阻まれた。
「ふうん、なるほどなぁ。」そう思いながら見ていると、エヌがその包丁をひょいと持った。
「お!」俺は少し驚いた。
「へぇ、軽くて使いやすい。」エヌが軽く振って台に戻そうとするが
「え?手が離れない!」エヌが言う。
「それに認められたって事だな。」俺が言う。
「え?」
「うまく使えよ。」俺はそう言いう。
「ふええええ。」
「よし、その包丁はお前のものだ。」俺がサムズアップを決めて言う。
その包丁はエヌの手の中で淡く光を放っていた。
「よし、エヌはそれで良いとして、他はどうだ?」
「アダマンタイトのフライパンを。」華厳が大事そうに抱えている。
「お客様、其れは一生ものの価値がございます。」
「300Gか、んじゃそれな。」俺が言う。
「ありがとうございます、ケイジ様。」
「ミスリルのお鍋と、オリハルコンの包丁で悩んでるにゃ。」
「どれどれ、両方とも100Gか、両方ともいいぞ。」
「にゃ~、主様大好きだにゃ。」
他の4人も、それぞれ欲しいものは決まったようだ。
「おやじさん、決済してくれ。」
「承りました、端数がありますが、おまけして1500Gになります。」
「ところで、ミスリルやら、オリハルコンは何処で産出されるんだ?」
「あちらの方向に、高い山が見えるんですが、その方向にあるオカタにあるダンジョンだそうです。」
「へぇ。解った、ありがとうな。」
「またお越しくださいませ。」店主が頭を下げるのを見ながら店を出る。
「さて、何か食ってくか?」
「何か、食べたいものあるか?」
「お魚!」
「他は?」
「何でもいい。」
「ほんじゃ、港町の食堂に。」
「はい。」俺達は、紫炎が繋いでくれた虚無の窓を潜る。
「うわぁ、何この匂い?」エスが言う。
「海の匂いだ。」俺が言う。
「うみ?」
「後ろを見てみろ。」俺の言葉に全員が振り返る。
「うわぁ、大きな水たまり。」
「水がしょっぱいんだ、この匂いはその匂いだ。」
「さぁ、店に入るぞ。」
「らっしゃいやせ~。」威勢の良い声が俺達を出迎えた。
「何名様ですか?」
「9人だ。」
「はい、では此方へどうぞ~。」奥の机に案内される。
「お飲み物お伺いします。」
「おぉ、ラガー3個とオレンジジュース6個な。」
「はい、承り~。」
「お~い、注文宜しく!」
「はい、承り~。」
「刺身盛り合わせって今日は何が入る?」
「今日は、ターイ、とブーリ、マーグロ、キザンケイーカ、アーマエビ、ヒラーメです。」
「まず、刺身盛り合わせ9人分、それにアジとボタン海老を刺身で9人前追加してくれ。」
「え~っと、アジーとボッタンエビを9人前ですね。」
「あぁ、今日の煮付けはなんだ?」
「今日はキーンメです。」
「おぉ、それも9人前な。」
「主様、兜煮もほしいにゃ。」
「兜煮はいくつできる?」
「5個です。」
「んじゃ5個。」
「はい、承り~。」
「サザエのつぼ焼きも9個な。」
「はい、サーザエのつぼ焼き9人前承り~。」
「あと、ライシー6個な。」
「はい、承り~。」
「お前達、食べ方わからなかったら聞けよ。」
「は~い。」
「お待たせ。ラガーとジュースだ、それとこれはお通しな。」
「んじゃ、サランに奉納を、そして、乾杯だ!」
「いただきます。」
「にゃ。」
「乾杯。」
「お通しは何だろう?」俺は小鉢に入った物を見る。
「おお、巻貝の煮つけか。」
「ケイジ様、これは旨いですな。」
「これは燗だな。」
「お~い、注文良いか。」
「はい、承り~。」
「燗を3個と、お通しの貝の煮物をどんぶりでくれないか?」
「はい、承り~。」
「御造りお待ち、あと、キーンメ煮つけ、ターイの兜煮お待ち。」
「おぉ、これは豪勢だ、サランに奉納を。」
「ありがとう、マスター。」
「ケイジ様、これどうやって食べるの?」エスが聞いてくる。
「にゃ、小皿に醤と山葵を溶いて付けて食べるにゃ。」
「ケイジ様、この魚の頭は?」華厳が聞いてくる。
「あぁ、色々食べられる所があるんだよ。」
「まず、頭の後ろのところを。」
俺は、自分で作った箸を虚無の部屋から取り出してその身を取る。
「おぉ。」
「紫炎殿、箸を。」
「紫炎様、ムーニャも箸を。」ムーニャとサランが箸を手に持ち食べ始める。
「ケイジ様、私にも箸をいただけませんか?」華厳が言う。
「あたし達も箸が良い。」エス達も言う。
「解った、ほれ。」俺は虚無の部屋から、俺自作の箸を取り出して、全員に渡す。
「その箸は、お前らにやるから、自分で管理しろよ。」
「解りました。」
「「「「「は~い。」」」」」
「続けるぞ、この部分と、此処のヒレの付け根。」
「それと、この頬の部分。」
「最後に、これは食うのに勇気がいるぞ。」
「はい。」ごくりと唾を飲み込みながら華厳が答える。
「目玉だ。」
「え?」
「あたし大好きにゃ!」そう言いながらムーニャが別の皿の目玉を食べ、ライシーをかきこんだ。
「とろりとして美味いぞ。」
「因みに、キンメの煮つけの方も、同じところが食べられる。」
「主様、マジにゃ?」
「本当だ!」エスが目玉を食べて言う。
「おぉ、反対側にもあるからな、ケンカしないで食えよ。」
「燗、おまち~。」
「おぉ、サランに奉納を。」
「マスター、ありがとう。」
「ほれ、華厳。」俺は徳利を持って華厳に燗を注いでやる。
「勿体無い。」そう言いながら華厳が猪口を差し出す。
「ほい、サランも。」
「ありがとう、マスター。」
「サーザエのつぼ焼きお待ち~。」
「おぉ、サランに奉納を。」
「ありがとう、マスター。」
「これは、どうやって食べるの?」エムが聞いてくる。
「こうにゃ。」ムーニャがトングで貝を掴み、箸で身を刺してくるくる回しながら取り出す。
「この緑の処はすごく苦いにゃ。」そう言いながらそこを外して食べる。
「華厳は食ってみろ、旨く感じるはずだ。」
「解りました。」そう言って華厳もサーザエの身を取り出して口に入れる。
「おぉ、苦みが心地よい。」
「だよなぁ。」
「はい、燗が進みます。」
「ムーニャはお子様舌だからなぁ。」
「あぁ、苦くておいしい。」リノがうっとりしながら言う。
「この苦み、嫌いじゃないわ。」エスも言う。
「うぅ、裏切り者がいるにゃ。」
「あたし、駄目かも。」エルが言う。
「ん~、微妙?」エヌが言う。
「仲間にゃ~。」ムーニャが二人を抱いて言う。
「まぁ、もう少し歳を取れば、味も変わるからな。」そう言いながら俺はラガーを煽る。
「ケイジ様、サーザエの壺焼き、追加して良いですか?」華厳が聞いてくる。
「あたしも欲しい!」リノが手を上げる。
「あたしも!」エスも言う。
「私、キーンメが欲しい、後ライシーも。」エヌも手を上げる。
「ボッタンエビのお造りのお替り。」エルが言う。
「おぉ、勝手に注文して良いぞ。」
「食べ過ぎには、注意な、特に華厳とムーニャ。」
「ははは、解っております。」
「任せるにゃ。」
「マスターどうぞ。」サランが俺に燗を注いでくれる。
「おぉ、サランも飲め。」そう言ってサランの猪口にも燗を注ぐ。
「で、これだ。」燗を飲みながら俺が言う。
「うぅ、腹が、腹が。」
「うにゃ~、動けないにゃ~。」
「ケイジ様、美味しかったです。」
「おぉ、エス達は流石だな。」
「食べ過ぎは、美容に良くないですから。」エヌが言う。
「華厳とムーニャは、学習しような。」
「面目ない。」
「お腹がきついにゃ。」
「んじゃ、丁度いいから、バゲを仕入れて帰るか。」
「はい。」元気よくエスが答えた。
支払いを終えた後、歩いてバゲ屋に向かう。
勿論、華厳とムーニャは虚無の部屋の中だ。
「そういえば、新作のバゲはどうだった?」俺がエスに聞く。
「一つだけ、使えそうな物がありましたが、後は尖りすぎて、お弁当には使えませんでした。」
「そうか、で、その一個は使えそうか?」
「細長く整形して、焼いたものを半分にして中身を挟めば使えると思います。」
「おぉ、そうか。」
そして、バゲ屋の前に着く。
「邪魔するぜ~。」
「おぉ、ケイジ様、いらっしゃいませ。」(ち、ギャグはなしか。)
「いつもと違うタイミングだが、出来てるか?」
「はい、大丈夫です、今回は40個ほど。」
「おぉ、全部もらう。」
「あと、新作についてだが。」
「はい。」
「エス。」
「はい、全粉瘤のライバクの物を、細長く形成して焼いたものがあれば使えます。」
「だそうだ。」
「ほ、他の物は?」
「私達には必要ありませんでした、でも、ここで売る分にはある程度の需要があると思います。」
「そうですか、ありがとうございます、励みになります。」
俺達は、バゲを持ち虚無の窓を潜って、ベカスカの孤児院に行く。
「明日のバゲはいくつ必要だ?」
「20」
「んじゃ、ここに置いておくぞ。」
「解った。」
「あと、他の孤児たちにお土産な。」俺は虚無の部屋から、あの店の煮物と、屋台の焼き魚を食堂のテーブルに多めに出す。
「そして、寮母さん達には。」そう言いながら、よく冷やしたラガーの樽を手渡す。
「あら、いつもいつもすみません。」
「入れ物は、次に回収しますので、捨てないでくださいね。」
「ほほほ、存じておりますよ。」
「んじゃ、エス、エル、エヌ、エム、リノ、又な。」
「今日はプレゼントありがとう、大切に使う。」
「一生大事にする。」
「ケイジ様だと思って、一緒に寝る。」
「お風呂にも一緒に入る。」
「あたしも。」
「こら、最後の3人、絶対にやめろ。」
「え~。」
「え~、じゃない!絶対するなよ!」
「ぶー。」
「ぶーじゃない、もし本当にやったら。」
「やったら?」
「取り上げて、粉々にする。」
「やだなぁ、そんな変態チックなことしないよ。」
「当然だよね。」
「うちら変態じゃないし。」
「お前ら、俺を貶めようとするなら容赦しないからな。」
「貴方達、マスターはやると言ったらやりますよ、本当に。」サランが言う。
「う~、肝に銘じる。」リノが残念そうに言う。
「今度こそ、本当に帰るからな。」そう言いながら、ヤミノツウの華厳の店に潜った。
「お読みいただき、感謝するにゃ。」
「マスターに成り代わり、御礼申し上げます。」
「さぁ、その勢いで評価をするにゃ。」
「か、感想を書いてもマスター殿は、嬉しく思うと思います。」
「お前ら、頼むからそういうのはやめてくれ。」
「でもマスター。」
「そうにゃ。」
「頑張るにゃ!」
「あぁ、心が痛いよ。」




