やらかしの51
「ケイジ様、こちらをお試しください。」華厳が俺の前にそれを差し出す。
「ん?ラメーンの新作か?」
「はい、ケイジ様、やっとノサの醤油の秘密がわかりました。」
「おぉ、凄いな、華厳。」
「勿体ないお言葉。」
俺はその麺を啜る。
「ふわぁ、華厳、麺もスープに合わせて変えてるのか。」
「おぉ、流石はケイジ様です。」
「華厳。」
「はっ。」
「美味い!」
「おぉ、ケイジ様のお眼鏡に掛かり、光栄です。」
「では?」
「いや、華厳、遠慮なく売れ!」
「はっ、ケイジ様の仰せのままに!」
「しかし。」俺は華厳の店の壁に貼られたメニューを見ながら思う。
(最早、何の店なのか?)
俺は壁に書かれたメニューを見る。
ラメーン・・・・・・・(醤、豚骨)各40B
パオ(焼き、蒸し、水、揚げ)各40B
海老パオ(焼き、蒸し)・・・・・各50B
シャオマ・・・・・・・・・・・・・・・・・50B
チャハン・・・・・・・・・・・・・・・・・50B
もつ煮・・・・・・・・・・・・・・・・・・45B
チャーシュ(2枚)・・・・・・・・・・10B
煮卵・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10B
ガツ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50B
もつ鍋(1人前)・・・・・・・・・100B
すき焼き(バハロー 1人前)・150B
上すき焼き(1人前)
マスターバハロー肉使用・・・・400B
焼肉 バハロー
ロース・・・・・・・・・・・・・・・・・60B
肩ロース・・・・・・・・・・・・・・・・60B
ヒレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70B
カルビ・・・・・・・・・・・・・・・・・・60B
サガリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・40B
ハラミ・・・・・・・・・・・・・・・・・・40B
希少部位
タン(葱塩)・・・・・・・・・・・・・300B
ネック・・・・・・・・・・・・・・・・・200B
トンビ・・・・・・・・・・・・・・・・・200B
ミスジ・・・・・・・・・・・・・・・・・200B
うちもも・・・・・・・・・・・・・・・・200B
しんたま・・・・・・・・・・・・・・・200B
そくもも・・・・・・・・・・・・・・・・200B
くらした・・・・・・・・・・・・・・・・200B
モツ
ミノ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40B
シロ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20B
マル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20B
マメ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20B
ステーキ バハロー
リブロース 200g・・・・・・・・・・・300B
ランプ 200g・・・・・・・・・・・300B
焼肉、ステーキ、モツ、マスターバハロー(時価)
ラガー・・・・・・・・・・・・・・・・・40B
冷酒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40B
燗酒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40B
蒸留酒・・・・・・・・・・・・・・・・・50B
各種ジュース類・・・・・・・・・・20B
大小宴会承ります。店内50人収容化
出張宴会承ります。
「何だろう、95%ぐらい俺が作った物のような・・」
「ははは、仰る通り、すべて、ケイジ様のおかげです。」華厳が白い歯を輝かせて言う。
「まぁ、良いけどな。」
「さて、少し出かけてくる。」
「は、行ってらっしゃいませ。」
「主、何処に行くにゃ?」
「少し遠出をして、海に行ってこようと思う。」
「うみ?」
「あぁ、川が行き着く先だ。」
「あ~。しょっぱい水の処?」
「おぉ、間違ってはいない。」
「ケイジ様、そこにどのような用が?」
「珍しい魚があればと思ってな。」
「にゃ、魚!」
「主様、一緒に行きたいです!」
「ムーニャ、ずるいにゃ、ミーニャも行くにゃ!」
「そう言うと思ったよ。」
「じゃぁ、ミーニャとムーニャは一緒に行くんだな。」
「「はいにゃ。」」
「おや、あやや、他の嫁は反応しないのか。」
「はい、ケイジ様、行ってらっしゃいませ。」
「おぉ。」
「ヤミノツウから近くの海までは90kmぐらいか?」
「はい。」
「5跳躍って事で良いか?」
「はい。」
「んじゃ、チャッチャッと行くか。」
俺はミーニャとムーニャを虚無の部屋に入れ、華厳の店の前から跳ぶ。
「わははは、やっぱり気持ちいいなぁ!」
「流石、ケイジ様です。」
「この、風を切る感覚が何とも言えん。」
本当に5跳躍で漁港のある所に着いた。
俺は、ミーニャとムーニャを虚無の部屋から出す。
サランは指輪から現れる。
「着いたにゃ?」
「あぁ。」
「まだセリはやってるかな?」
「ん~。殆ど終わってるぽいな。」そう言いながら、まだ店を広げているところに歩く。
「こんにちは~。」
「おぉ、なんだ?」
「なんか良い物が残ってないかと思って来たんだ。」
「今日はそこにあるだけだ。」
「おぉ、ヒラメ、タイ、アジ、サバ、アンコウ、ボタンエビが残ってるな。」
「あ? 微妙に名前が違うが、買うなら安くするぜ。」
「買った。」
「おぉ、全部で500Bで良いぞ。」
「え?」
「ん?」
「500B?」
「あ~、分かったよ、450Bで良いぞ。」
「おぉ、買った!」
「ありがとうよ。」
「んじゃ、これ代金な!」
「おぉ、兄ちゃんありがとうな。」
「他に残ってるものはないか?」
「こっちに、昨日採れたサザエとアワビがあるが、全部で200Bで良いぞ。」
「200B?」
「ちっ、足元を見やがるな、150Bで良いぞ。」
「買った!」
「おぉ、切符が良いなぁ兄ちゃん、サービスでワカメをおまけするぜ。」
「おぉ、おやじさん、贔屓にするよ。」
「よろしくな、兄ちゃん。」
「おぉ、おやじさん、俺はケイジって言う。」
「おぉ、ケイジか、宜しくな。」
「定期的に、俺や、俺の部下が買い付けに来るから、よろしく頼む。」
「おぉ、兄ちゃんの顔は覚えた、兄ちゃんの部下はどう判別すれば良い?」
「とりあえず、後ろの三人だ。」
「おぉ。」
「後は。」
「おぉ。」
「合言葉を言う。」
「合言葉?」
「モスクワの雪は赤い。」
「はぁ?もすくわって何だ?」
「いや、考えるな、感じろ。」
「おぉ、それが合言葉か?」
「あぁ。それにおやじさんが答えてくれ。」
「あ?なんて?」
「ニューヨークの雨は金色。」
「はぁ?ニューヨー、何だそれ?」
「いや、合言葉だ。」
「訳が分からん。」
「判ったら、合言葉の意味がないだろう。」
「おぉ、其れもそうか、ニュヨーの雨は金色だったか?」
「ニューヨークの雨は金色だ。」
「おぉ、判った、その言葉を言ったら兄ちゃんの関係者って事だな。」
「あぁ。」
「突然目の前に現れる事もあるから、宜しくな。」
「判った。」
「あと、この辺で魚料理を食える処を教えてくれ。」
「おぉ。」おやじはにっこり笑いながら、すぐ後ろの店を指差した。
******************
「らっしゃいやせ~。」威勢の良い声が俺を出迎えた。
「何名様ですか?」
「4人だ。」
「はい、では此方へどうぞ~。」奥の机に案内される。
「お飲み物お伺いします。」
「おぉ、ラガー3個とオレンジジュース1個な。」
「はい、承り~。」
「華厳様の店に似ていますにゃ。」
「おぉ、とりあえず試食だ。」
「にゃ?」
「お~い、注文宜しく!」
「はい、承り~。」
「刺身盛り合わせって何が入る?」
「今日は、ターイ、とハマチー、マーグロ、キザンケイーカ、アーマエビ、ボーラです。」
「うん、何となく分かる。」
「まず、刺身盛り合わせ5人分、それにアジとボタン海老を刺身で5人前追加してくれ。」
「え~っと、アジーとボッタンエビを5人前ですか?」
「あぁ、それとヒラメ煮つけ4人分、タイ兜煮1個、サザエのつぼ焼きも4個な。」
「はい、ヒラーメ煮つけ4人前、ターイ兜煮一人前、サーザエのつぼ焼き4人前承り~。」
「マスター、生が多いような?」
「おぉ、サラン、気のせいだぞ。」
「そうですか。」
「お待たせ。ラガーとジュースだ、それとこれはお通しな。」
「おぉ、こっちでもお通しがあるのか?」
「ん?こっちとは?」
「いや、俺の住んでいた所にもあったからな。」
「おぉ、そうか。」
「んじゃ、サランに奉納を、そして、乾杯だ!」
「にゃ。」
「にゃ。」
「乾杯。」
「お通しは何だろう?」俺は小鉢に入った物を見る。
「おほっ、タコとワカメと胡瓜の酢の物だな。」
「主~、これ酸っぱいにゃ。」
「でも、甘さも感じるにゃ。」
「サッパリとして美味しいです。」
「これは、醤と酢と糖を1:1:1で合わせた3杯酢で味付けしたものだな。」
「にゃ~、色々試してみたいにゃ。」
「ムーニャは偉いな。」そう言いながら俺はムーニャの頭を撫でる。
「にゃ、嬉しいにゃ。」
「モズクがあれば、それと胡瓜でもいいかもな。」
「モズクって何ですにゃ?」
「おぉ、あとで近くの店に探しに行こう。」
「はいにゃ。」
「御造りお待ち、あと、ヒラメの煮つけ、タイの兜煮お待ち。」
「おぉ、これは豪勢だ、サランに奉納を。」
「ありがとう、マスター。」
「これは、どうやって食べるにゃ?」
「イワナの刺身と同じだ。」
「にゃ、小皿に醤と山葵を溶いて付けて食べるにゃ?」
「正解!」
「主、この魚の頭は?」
「あぁ、色々食べられる所があるんだよ。」
「まず、頭の後ろのところを。」
「俺は、自分で作った箸を虚無の部屋から取り出してその身を取る。」
「主様、私にもお箸下さい。」
「マスター、私も欲しい。」
「いや、紫炎に頼めば出してくれるぞ。」
「んにゃ、そうだったにゃ。」
「紫炎殿、箸を。」
「紫炎様、ムーニャも箸を。」
二人の手元に、無事箸が現れた。
「続けるぞ、この部分と、此処のヒレの付け根。」
「にゃ、身が出てくるにゃ。」
「それと、この頬の部分。」
「最後に、これは食うのに勇気がいるぞ。」
「にゃ?」
「目玉だ。」
「うにゃ?」
「とろりとして美味いぞ。」
「主?」
「主様?」
「マスター?」
「三人揃ってビビりか、俺が見本を見せるよ。」
「俺は、目玉を箸でつまみ口に入れる。」
目を保護する固い膜が口の中で邪魔をする。
俺は、それを指で口から取り出す。
そして、目を舌で上顎に押し付けて潰すと濃厚な味が口に広がる。
口の中に眼球の球が残るが、俺はそれを指でつまんで机に置く。
「濃厚で旨い。」
「にゃ~。」
「主様、ムーニャ行きます!」
「おぉ、反対側にもあるからな。」
俺は、兜煮を裏返す。
「にゃ!」ムーニャが目玉を箸でつまみ口に入れる。
俺と同じように、固い膜を指で取り出し、舌で潰す。
「ふにゃぁぁ。」ムーニャが放心した。
「おい、ムーニャ大丈夫か?」俺は思わずムーニャに声をかけた。
「あ、あ、あ、主様。」
「おぉ。」
「物凄く美味しいです。」
「おぉ、それは良かっ「マスター!」
「なんだサラ「主!」
「何だよ二人とも。」
「「食べたい!」」
「分かった、分かった、お~い、注文良いか?」
「はい。」
「兜煮いくつできる?」
「今日は後3個です。」
「全部持ってきて。」
「承り~。」
「じゃぁ、来るまで他を堪能しよう。」
「はいにゃ。」
「マスター、此のお造りはどれも美味い!」
「おぉ、良かったなサラン。」
「主、兜煮のいろんなところ、凄く美味しいにゃ。」
「おぉ、ライシーはいるか?」
「主、欲しい。」
「主様、ムーニャも欲しいにゃ。」
「マスター、私は燗が欲しい!。」
「お~い、注文良いか?」
「はい。」
「ライシー2個と、燗を2個な。」
「承り~。」
「ヒーラメの煮つけお待ち。」
「おぉ、これは美味そうだ。」
「マスター?」
「サランに奉納を。」
「身をこそげて、つゆに付けて喰うと良いぞ。」
「にゃ~、淡白だけど美味しいにゃ。」
「卵が何とも言えないにゃ。」
「骨が多くて食べずらいけど、エンガワのところも美味いぞ。」
「にゃ~、本当にゃ。」
「マスター、燗が欲しくなる。」
「ライシーと、燗お待ち。」
「サーザエの壺焼きもお待ち。」
「おぉ、待ってました。」
「とりあえず、サランに奉納を。」
「さて。」
俺はサーザエをトングで持って、蓋を箸で外す。
「少し行儀が悪いが。」そう言って、箸をサーザエの身に突き刺し、くるくると回転させながら、身を取り出した。
「此処の緑色の部分は大人の味だ。」
「にゃ?」
俺は、その身を口にする。
「おぉ、コリコリと苦みがたまらん。」
「マスター、これは至高。」
「うにゃ、緑の所は苦いにゃ。」
「ミーニャは平気にゃ。」
「おぉ、ムーニャだけお子様舌か。」
「主様、酷いです。」
「いや、苦みは大人になると美味しく感じるんだ。」
「むぅ。」
「ムーニャは、まだ苦みを敏感に感じてるんだな。」
「頑張ります。」
「いや、頑張ってもどうにもならないぞ。」
「そう言いながら、サランに燗を灌ぐ。」
「な、マスター、感謝する。」
「他に食いたいものが有ったら、ジャンジャン注文しろよ。」
「にゃ~。エビフライとターイの塩焼きが食べたいにゃ。」
「マスター、アジーフライも食べたい。」
「主様、このターイの炊き込みご飯も食べてみたいです。」
「おぉ、注文頼む。」
「承り~。」
「おぉ、早いな。」
「聞こえてました。」
俺達は、魚料理を満喫した。
何処を目指してるんだろう?