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32話

 

 エントリーナンバー4『憤怒剣アエシュマ』

 

 これも一応、既出の魔剣だ。全長2メートルはあるかという錆びたノコギリ。『これは剣ですか?』シリーズ第三弾。そのステータス強化能力は凄まじいが反動も大きく、使用するだけでダメージを負うため【再生強化】が追い付かない。

 

 この魔剣の固有能力も判明していないのだが、ちょっと今は調べる気分じゃないので次の機会に回したいと思う。『憤怒』という感情も『嫉妬』に負けず劣らずネガティブである。嫉妬剣の影響で世界滅べばいいのに、とかつぶやいた後で憤怒剣を使った日にはもう、ほんとに世界滅ぼしてやろうかと思ってしまうかもしれない。危険だ。俺のメンタルさんがドクターストップをかけたため、憤怒剣の検証は延期します。

 

 ステータス強化:A

 攻撃性:A

 防御性:D

 特殊性:E

 精密性:B

 射程距離:E

 攻撃速度:B

 ペナルティ:E

 デザイン:E

 

 * * *

 

 エントリーナンバー5『色欲剣ヴェレノ』

 

 はい、来ました。俺が最も警戒していた魔剣である。なぜならその頭に冠する文字は『色欲』。エロである。装備するだけでエロい気持ちになる剣とか、どんな変態御用達だ。チ○コの形したピンクのブルブル震える大人のオモチャじゃないだろうな。

 

 ピンクのブルブルで戦わせられるこっちの身にもなれよと愚痴をこぼしながら受領箱から色欲剣を取り出した俺は、出てきた魔剣を見て目を見張った。

 

 「なん……だと……!?」

 

 ピンクのブルブルじゃない!? それは一振りの刀、まごうことなき日本刀だった。これまで俺が見てきた魔剣の中で、一番まともな形をしていると言っていい。真剣の現物は初めてみたが、その刀身の美しさは芸術的である。まさに名工が打ち上げた逸品。

 

 そう、剣とは戦いに用いる武器である。そこに余計な装飾など不要。奇抜な形にする必要はない。ただ斬ることを目指し、研ぎ澄まされたこのシンプルなフォルムこそ、俺が求めていた剣だった。そうだよ、こういうのを待ってたんだよ!

 

 感慨に胸を打たれていると、突然刀身から黒い何かが噴き出した。真っ黒い影のように光を持たない炎。揺らめく黒い陽炎が刀身を覆い尽くしていく。しかし、すぐ近くにいる俺は熱を感じなかった。どうやら俺には無害なもののようだ。

 

 黒き炎を纏いし刀。なんて魔剣っぽい魔剣なんだ。言うなれば、その姿はTHE魔剣。とてつもなく魔剣魔剣している。おい! エントリーナンバー2から4番! 見てるか、これが本当の魔剣だぞ!

 

 『我を封印から解き放つ者は誰ぞ……』

 

 「しゃ、シャベッタアアアアア!?」

 

 うおおおおお! 魔剣様がおしゃべりになられたぞ! 意思を持つ剣とは、何というテンプレ。王道路線一直線だ。まさに物語の主人公のためにあつらえられた魔剣である。魔剣魔剣しすぎて俺なんかが持っていていいのかと恐縮してしまう。

 

 「えっと、あなたはこの剣の声なんですか?」

 

 『否、我はこの剣に宿りし精霊ヴェレノなり。汝の名は?』

 

 「お、俺はエンです!」

 

 『エン……我が新たな主よ、聞くがよい。この世界に隠された大いなる秘密を……』

 

 世界に隠された大いなる秘密だと? なんかいきなり物語の核心に迫るような話が始まろうとしている。もしやそれは、俺がこの世界に転移してしまった理由にも関係しているのではないだろうか。俺はたたずまいを正して精霊ヴェレノの話に耳を傾ける。

 

 『この世界は……かつて巨大な時計塔だった……』

 

 「時計塔、ですか?」

 

 『いかにも。神々が作り上げし塔也。その頂に掲げられし巨大なる時計こそ、この世界を、宇宙を表していた。長針に住まいしは太陽の神ヒェイジュエウェイ。短針に住まいしは月の神メウシコムイ。その二柱が世界を巡ることで世界に秩序がもたらされた。そして世界を守護する十二の守護神獣が誕生する。一の守護神獣、ブイウンシュナオウ。二の守護神獣、ナイウノフソアオ。三の守護神獣、ラテイナテサラテ。四の守護神獣、コリコリプニレイオ。五の守護神獣、ニサナトイニゥ。六の守護神獣、モソツイナ。七の守護神獣、チレモマニラサセマ。八の守護神獣、リイナマレラサ。九の守護神獣、モトイナンニチテ。十の守護神獣、レテラサヨ。十一の守護神獣、テチウユワサシクニト。十二の守護神獣、セテユウナワシイ……完全なる調和のもとに秩序を保っていたこの塔に、あるとき一人の人間が訪れる。塔の最下層、天上とは最も離れた地に位置する人間界から最上階にある時計部、天上界まで登りつめることは不可能かに思われた。しかしその人間……勇者テモユンクサニ・テユツクシクナハイはその偉業を成し遂げた。見事に塔を登頂したテモユンクサニだったが、その先に待ち受けるは十二の守護神獣。彼らは聖域への侵入者を許さない。一の守護神獣ブイウンシュナオウが言った。『愚かなる人間よ。この地から立ち去れ。さもなくばお前に神の裁きが下るであろう』。それに対して、十二の守護神獣セテユウナワシイが言う。『生ぬるい。聖域へと足を踏み入れた時点で許されぬ大罪。その命をもって償え』と。しかし七の守護神獣チレモマニラサセマが言う。『待て。聖域の秩序を乱してはならぬ。この人間の処遇は神にのみ定められる』と。そこに五の守護神獣ニサナトイニゥ『殺せ。我らこそ神の秩序なり』。だが三の守護神獣ラテイナテサラテ『聖域を人間の穢れた血で汚すつもりか』。そこで十一の守護神獣テチウユワサシクニト『ならば、我が一息にて愚かなる人間を吹き飛ばし、塔の外へと落してみせよう』。八の守護神獣リイナマレラサ『その役目ならば我が』。六の守護神獣モソツイナ『いや我に任せよ』。四の守護神獣コリコリプニレイオ『同胞たちの手を煩わせるまでもない。下がっていろ』。九の守護神獣モトイナンニチテ『気に障る言い方をする。お前の方こそ下がるがよい』。十の守護神獣レテラサヨ『皆の者、落ちつかれよ。悠久の時を生きる我らの前に現れた初めての侵入者、娯楽を前に気が立つのはわかるが、守護神獣にあるまじき醜態ぞ』。二の守護神獣ナイウノフソアオ『我は矮小なる人間になど興味はない。勝手にするがよい』。一の守護神獣ブイウンシュナオウ『なんという言い草。貴様、聖域の守護を神よりたまわった誇りはないのか』。二の守護神獣ナイウノフソアオ『人間一人にかかずらっている貴様に誇りを問われるいわれなどない。それならば、まだ殺せと主張する者たちの方が賢明というものだ』。十二の守護神獣セテユウナワシイ『そうだ、殺せ。それですべてが片付く』、後の守護神獣ニサナイトイニゥ『もはや結論は出ぬ。こうなれば互いを力を示し、勝利した者がこの人間の処遇を決めるより他にない』。こうして十二の守護神獣たちは争いを始めた。そして勇者テモユンクサニはその争いの脇をすり抜け、太陽の神ヒェイジュエウェイの御元までたどり着いてしまった。太陽の神ヒェイジュエウェイは言った。『見事なり、人間よ。その知恵を認め、この天上の地に住まうことを許す』。こうして勇者テモユンクサニは時計塔の頂上にて神にその存在を認められたのであった』

 

 「……」

 

 『……』

 

 「……」

 

 『……』

 

 「……そ、それで?」

 

 『それで、とは?』

 

 「いや、世界の秘密とか……」

 

 『フッ…………さすがは我が主、さらなる深遠の智を求めるか。その通り、今語った真実はこの宇宙の創世史のほんの序章にすぎぬ。そこまで望むというのならば、よかろう…………聞かせよう、第二部を…………太陽の神ヒェイジュエウェイに認められた人間の勇者テモユンクサニだったが、しかし月の神メウシコムイはその存在を疎ましく思っていた。月の神メウシコムイは勇者テモユンクサニに様々な試練を、待て、我が主よ、何をする。なぜ我を暗き封印の箱へと収めようとしている。まだ話はおわt』

 

 

 

 こ れ は 後 回 し で い い よ ね ?

 

 

 

 ステータス強化:B

 攻撃性:E

 防御性:E

 特殊性:E

 精密性:E

 射程距離:E

 攻撃速度:E

 ペナルティ:F

 デザイン:A

 



まじめに読む必要はないです。

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