表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
邪神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
98/106

再会

二人は街へ到着していた。


――エルドニア公国。


資源に恵まれ、交易で栄える国。


大通りには様々な国の商人や冒険者が行き交い、聞き慣れない言葉があちこちから飛び交っている。


ガレスは辺りを見回し、目を丸くした。


「すっげぇな……。」


ヒロは一枚の地図をガレスへ差し出す。


「ほら。」


「地図くらいは読めるでしょ。」


ガレスは地図を受け取る。


ヒロは会場を指差した。


「今日の昼、この建物で会議がある。」


「時間になったらここへ来て。」


そう言うと、ヒロは踵を返して歩き出した。


ガレスは慌てる。


「おい!」


「どこ行くんだよ!」


ヒロは振り返り、ニヤリと笑う。


「武器屋。」


「工房。」


「鍛冶屋。」


「全部回るよ。」


ガレスは額に手を当てる。


「……始まった。」


その時だった。


人混みをかき分け、一人の女性が真っ直ぐこちらへ駆けてくる。


長く美しい黒髪が風になびく。


「ヒロ!」


その声に、ヒロはゆっくりと振り返った。





その女性は人混みをかき分けると、そのままの勢いでヒロへ飛びついた。


「ヒロー!」


ぎゅっと抱きつく。


街中が一瞬静まり返る。


「……え?」


「あれ、勇者様じゃないか?」


「勇者様!?」


「誰だ、あの男!」


「知り合いなのか!?」


周囲は一気にざわめき始める。


ヒロは顔を真っ赤にして慌てた。


「レ、レイナ!」


「みんな見てるよ!」


レイナは満面の笑みのまま首を振る。


「気にしない!」


「久しぶりなんだから!」


ヒロは困ったように苦笑するしかない。


その様子を見ていたガレスは額に手を当てた。


「……始まったな。」


そこへ三人がゆっくりと歩いてくる。


大きな盾を背負った戦士グラム。


白い法衣を纏った聖女エミリア。


そして長い白髪を揺らす大魔術師オズワルド。


三人は顔を見合わせ、揃ってため息を吐いた。


「……相変わらずだな。」


その一言に、レイナはようやくヒロから離れた。


そして今度はガレスへ視線を向けた。


「ガレス!」


「久しぶり!」


その口元がニヤリと吊り上がる。


「十五勝十五敗。」


「決着をつける時が来たわね。」


勇者らしい鋭い眼差しになる。


ガレスも獣のように口元を歪めた。


「望むところだ!」


二人の間に緊張が走る。


周囲はざわつく。


「お、おい……。」


「勇者様とSランク冒険者だぞ!」


「ここで始める気か!?」


ヒロはため息をついた。


「やめろ。」


「周りの人たちが驚いてる。」


「場所を変えようよ。」


グラムが腹を抱えて笑う。


「がははは!」


「相変わらずだなお前ら!」


オズワルドは髭を撫でながら笑った。


「それなら、落ち着ける場所を知っとるぞ。」


「ほれ、ついてこんか。」


ヒロは苦笑しながら頷く。








街外れの静かなカフェ。


テラス席。


それぞれ飲み物が運ばれてくる。


ガレスは湯気の立つ黒い液体を一口飲んだ。


「……にがっ!!」


思わず顔をしかめる。


その反応に、一同が吹き出した。


「はははは!」


「ふふっ!」


グラムは腹を抱え、レイナは机を叩いて笑う。


オズワルドは髭を揺らしながら目を細めた。


ヒロは呆れたようにコーヒーを口へ運ぶ。


「バカには、この味が分かんないんだよ。」


ガレスは勢いよく立ち上がる。


「なんだと!」


また笑いが起きる。


しばらくして笑いが落ち着くと、ヒロはレイナへ視線を向けた。


「そういえば。」


「聖剣の調子はどう?」


「良かったら見せてよ。」


レイナは嬉しそうに微笑み、迷いなく背中の聖剣へ手を伸ばした。






レイナは静かに聖剣を鞘から抜いた。


ヒロは両手で受け取り、刀身を光にかざす。


刃先。


刃文。


鍔。


柄。


一本一本、確かめるように視線を走らせる。


誰も口を開かない。


しばらくして――


ヒロの表情が険しくなった。


「……何を切ったら、こうなるの?」


その一言で。


レイナたち四人の表情が曇る。


さっきまでの笑顔は、もうなかった。


ガレスも眉をひそめる。


ヒロはしばらく聖剣を見つめていた。


刃ではない。


刀身に宿る魔力を、じっと見つめている。


ヒロは静かに聖剣を撫でる。


「作ってるところを見てたから分かると思うけど。」


「この剣には、戦姫アンネローゼの魔力が込められてる。」


一拍置く。


「……その魔力が濁ってる。」


ヒロはレイナを見る。


「何を斬ったの?」


レイナはゆっくりと答えた。


「邪神教徒の奇跡。」


ガレスが思わず身を乗り出す。


「奇跡が斬れるのか!?」


ヒロは顎に手を当て、考え込む。


「……なるほど。」


「勇者の力は普通の魔法とは別系統だからね。」


「神聖魔法……いや、神聖力そのものに近い性質なのかもしれない。」


オズワルドが腕を組む。


「儂らも同じ結論じゃ。」


「じゃが、詳しい理屈までは誰にも分からん。」


ヒロは何も言わず、聖剣へそっと手をかざした。


淡い光が刀身を包む。


濁っていた魔力が、ゆっくりとほどけていく。


まるで汚れた水が澄んでいくように。


オズワルドが思わず立ち上がった。


「こ、これは……!」


「神聖魔法!」


「お主、使えたのか!」


エミリアは即座に首を振る。


「違います。」


その表情は驚愕に満ちていた。


「これは神聖魔法ではありません。」


「……似て非なるものです。」


やがて光が消える。


聖剣は、かつての輝きを取り戻していた。


レイナは目を見開く。


グラムは言葉を失う。


ガレスでさえ息を呑んでいた。


ヒロは何事もなかったかのように聖剣をレイナへ返す。


「はい。」


レイナは恐る恐る受け取り、その刀身を見つめる。


「……元に戻ってる。」


エミリアは立ち上がり、ヒロを真っ直ぐ見据えた。


「禁忌です。」


「その技は……神への冒涜です。」


ヒロは静かに頷いた。


「だから、破門されました。」


その一言に、その場の空気が止まる。


ヒロは穏やかな表情のまま続けた。


「それでも。」


「使わずにはいられませんでした。」


「決して、悪いようには使いません。」


「人を救うためだけに使います。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ