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ギルドマスター
ヒロとガレスは何も言わず執務室を後にした。
扉が閉まる音だけが静かに響く。
リリアはその場から動けなかった。
力が抜けるようにソファへ腰を落とし、そのまま俯く。
「……なんで。」
震えた声が静かな部屋へ落ちる。
「なんで、ヒロくんなんですか。」
「こんな危ないこと……。」
「なんで、あの子にやらせるんですか。」
ギルドマスターは何も答えなかった。
ゆっくりと椅子から立ち上がる。
静かにジャケットを脱ぎ、椅子の背へ掛ける。
続いてシャツの袖を肘までまくった。
リリアは涙を拭いながら顔を上げる。
そのままギルドマスターは部屋の壁へ歩いていった。
壁には一本の大斧が飾られている。
長年、執務室へ飾られたままの古びた大斧。
誰もが装飾品だと思っていた。
とても人が振るえるような大きさではない。
だから誰一人として疑わなかった。
ギルドマスターは何のためらいもなく、その柄へ手を掛ける。
そして。
片手で持ち上げた。
「……っ。」
リリアは思わず息を呑む。
飾りではなかった。
本物だった。
ギルドマスターは肩へ大斧を担ぐと、振り返ることなく扉へ向かう。
「しばらく留守にする。」
短くそれだけ言い残し、執務室を後にした。
閉じられた扉を、リリアはただ呆然と見つめ続けていた。




