ツノトカゲ捕獲
魔物の捕獲依頼の邪魔になりそうな岩蛇を無事に倒すことができた。
「よし、じゃあ次はツノトカゲの捕獲だね。あ、確認なんだけどツノトカゲの反応ってまだある? 今の戦闘の間にどっか行っちゃってたりしないよね?」
「ん、ちょっと待ってね。…うん、大丈夫。さっき見つけた場所のまま動いてないみたい。」
一応イオルに確認をしてもらったけど問題ないようだ。これだけ近くで戦ってて気づかれてないとは思えないし岩蛇みたいに待ち伏せしてるのかね?
「ありがとう。じゃあちょっと行ってみる。イオルはここで待機よろしく。」
岩蛇戦の前に話し合った時に捕獲時の立ち回りも決めていたのだが一応確認のために言っておく。
「…わかった。」
ただイオルは少し不服そう。
さっきの岩蛇との戦いの時、所々危ないところを見せたためか、心配されているようだ。
「大丈夫大丈夫。今度はそんな危ないことにはならないって。」
「それは私もそう思うけどー。何にも手伝えないってのがこう、うーん…」
「ああ、そういうことか。でもイオルには周りの警戒っていう重要な役目があるからね。役割分担だよ。」
イオルには俺がツノトカゲを捕まえようとしてる間に周囲の警戒をしてもらって他の魔物とかが近寄って来ていないか探知してもらうという重要な仕事がある。
それに捕獲というからにはおそらくイオルよりかは力のある俺が実行役の方がいいだろうという話になった。
「よし、準備出来たから行ってくる。」
話しながら皮の手袋を着け終えた。
ツノトカゲは全身にトゲがあるらしいからね。用心するに越したことはない。
「うん、気をつけてね?」
「おう。」
ツノトカゲらしき魔物の反応があるらしい場所に着いた。
と言っても岩蛇が潜んでいた岩場の真裏なのでそう歩いたわけでもない。
「…あー、どこにいるのかさっぱりわからん。」
岩の表面やら隙間やらに居ないか確認するが見つからない。
岩蛇もだがこういう岩場に住んでいるだけあって隠れるのが上手なようだ。
「さてどうするか。さすがに岩蛇にしたように火魔法撃ち込むわけにはいかんしなあ。」
倒すつもりで戦った岩蛇相手ならともかくツノトカゲは捕獲しなくてはならない。
あまり弱らせるようなことはしない方がいいだろう。
「うーん、どうするか…。あ、魔法でもダメージ与えるようなのじゃなければいいか。よし、やってみるか。」
手を岩場に向けて突き出し、魔法の準備に入る。
別に体内から魔法を撃ちだしているわけでもないからわざわざ手袋を外す必要もない。
「よし、弱風!」
そう言うと突き出した手の前から涼やかな風が吹き始め、砂や小さな小石などが少し動く。
「うむ、では次。中風!」
風が少し強くなる。弱風では動かなかった小石が転がっていった。
「ツノトカゲは…動く様子は無いか。じゃあこれでどうだ? 強風!」
さらに強い風が吹き荒ぶ。これはかなりの風圧が出ているんじゃないだろうか。
「さあどうだー? ここかー? それともこっちかー?」
吹き出す風を岩の隙間やら色んな場所に向けてかかるように手を向けていく。
扇風機の首振り機能みたいなもんだ。もちろんイメージしたのも扇風機。
しばらく扇風機になっていると堪えきれなくなったのか岩の隙間から顔を出してきたものがある。
「お! お前がツノトカゲか。」
その覗かせた顔に扇風機魔法を向けてみる。
吹き飛ぶようなことはないが不快ではあるようで口を開けて威嚇してきた。
そのまま体を這い出してくる。
「よーし、よし。出てこい出てこい。」
風を当てながら少しづつ後ろに下がって行く。
しばらくすると全身が岩の外に出てきたので観察してみる。
大きさは全長40センチ近くあると思う。てかこいつ胴体の部分がえらく横に広いせいでパッと見じゃトカゲってかカエルみたいだな。あーでも名前の通りツノ、ってかトゲがすごいな、手袋があって良かった。これは素手で持ったら痛そうだ。
その間もツノトカゲは風に逆らって俺に向かって進んでくる。
ここで後ろに下がるのをやめ、魔法も止める。すると当然こちらに近づいてくるツノトカゲとの差は縮まるわけで。
「よいしょ。……すごい簡単に捕まったぞコイツ。しかもメッチャ持ちやすい。」
テクテクと歩いてくるものだから足元に来たところで左右から胴の辺りをむんずと掴んでみると簡単に捕まえてしまった。
このまま持ち上げると頭が下になってかわいそうな気がするのでちょっと持ち替えて頭を上に、腹をこちらに向けるようにしてみる。
一応暴れるというか抵抗しようとはしてるみたいで、一生懸命首を伸ばして俺の手を噛もうとしているのだが全然届いていない。
「こんな簡単に終わるとは…。まあ、とりあえずイオルのところに戻るか。」
捕獲用の籠も背嚢の中に入れたままなのでこのまま持って戻るとする。
まあ上手くいったのだからいいか。
「それにしても風魔法はいまいち使い所が分かっていなかったけど、試してみた甲斐はあったな。うん、まだ魔法が使えるようになって数日しか経ってないわけだしもっと色々試してみるべきだよな。」
というわけで思いの外簡単に捕獲出来てしまったツノトカゲを両手で持って戻ることにした。




