89. スズキノヤマ帝国 ガリカ(2)
「ハインズとエファインはいつごろ部屋を出たか分かる?」
ローズの質問に対して、エフェルガンは首を振った。
「いや、分からない。同じ部屋で寝ていたハティも、気づかなかったと言った」
「エトゥレとガレーもいなくなった。おかしいよ」
「暗部は基本的に自由行動だから、急にいなくなることは想定済みだがな・・」
「外出して、武器を置きっぱなしの暗部はどう考えてもおかしいよ」
ローズはガレーの短剣を見つけた。その短剣が枕元に置かれたままだった。
「ありえないよね」
「本当は何があったんだ?」
「他の客はどうなった?」
エフェルガンはケルゼックに問いかけた。
「私たち以外に誰もいません」
「なぜだ?」
エフェルガンが首を傾げた。この事件を、どう考えても、おかしい。
「考えよう。私たちはなぜ無事だったか?私たちの共通点は何だ?」
「同じ部屋で寝た」
「ハインズとエファインが私たちと同じ部屋にいたが、失踪した」
「同じ夕餉・・エトゥレ達も一緒に食べたよね」
ローズとエフェルガンがヒントを探して、考え込んでいる。
「お風呂」
リンカの一言で全員顔を見合わせている。
「お風呂か・・確かにここに残ったのは私たち六人で、全員は同じ部屋の庭にある露露天風呂に入った」
「でも他の客もそれぞれの部屋にあるお風呂に入ったよね?」
ローズが言うと、全員うなずいた。
「ではなぜ僕たちが無事だったのか?」
「分からない」
「結界ではなさそうだ」
「結界を張る覚えがないよ」
「ではなぜ?」
エフェルガンが考え込んでいる。
「ローズと入ったから・・だったりして」
「え?」
彼がその結論に至った。すると、全員、彼女を見ている。
「そうかもしれませんね」
「他には考えられない」
ケルゼックが言うと、エフェルガンがうなずいた。
「エフェルガンと入ったからだとか、リンカと入ったからだとか・・」
「では、なぜ僕と入ったから無事だったか説明が付かないよ」
「私も分からないよ」
ローズは首を振った。
「庭にあるあの風呂に先に入ったのは誰だ?」
「ローズだった」
リンカがエフェルガンの質問に答えると、全員またローズに視線を移した。
「うん」
「それだね」
「え?」
「ローズが先に入ったから、何らかの原因で僕たちが無事になった」
「私は何もしていなかったよ?」
「何もしなくても、何かが発動したとしか思えない」
「うむ」
それしかない、とエフェルガンが言った。
「この宿全体が術にかかっていたかもしれませんね」
「術・・」
ローズが考え込んだ。
「心当たりがあるのか?」
「昨日の夜、町を歩いたあと、宿に戻ろうとした時に、何かあったと気がしたけど・・気のせいだと思って、無視した」
ローズが答えた。
「ふむ、その時ハインズとエファインの様子はどうだった?ハティ」
「普段と変わりませんでした。夜もぐっすり寝ていました」
「ふむ」
ハティが答えると、全員また考え込んでしまった。
「発動したのは夜中だったかもしれない」
「おかしいね」
ケルゼックとオレファも顔を見合わせている。
「状況を整理する。僕達以外、この宿の人たち、客含む、全員が失踪した。僕たちが無事だった理由は恐らく同じお風呂に入ったからだ。先に入ったのはローズだった。考えられるのは温泉の湯に術が仕掛けられているが、ローズが先に入ったことによって、術が破壊された」
「うむ」
「ローズはその術を破壊する能力を持っているとしか考えられない」
「うむ」
「心当たりはない?」
「ない」
ローズの答えに、全員それぞれ考え込んでいる。
「ローズは龍神の娘だから・・」
「だから?」
「聖なる力を持っている」
「うむ。使った覚えがない」
「覚えがなくても、ローズが入っただけでお湯に仕掛けられていた術を消し去った」
「まるで私から出汁が出たような言い方なんだけど・・、スープじゃないんだから」
「でもそれが事実だ」
「うむ」
エフェルガンが言うと、全員うなずいた。
「ローズの出汁のおかげで、私たちが無事だった」
リンカの一言で、ローズは昆布類決定だ。昔、前世のお母さんが良く昆布で出汁を作って、料理してくれた。どんな料理か思い出せない・・、とローズは思った。
「出汁という言い方が悪いが、実際にそれが起きていたかもしれません」
「そうだね」
オレファが言うと、エフェルガンがうなずいた。
「じゃ、問題は、誰が術をしかけたのか。そしてかかった人たちはどこへ」
エフェルガンが言うと、全員もまた考え込んだ。
「とりあえず、着替えよう。寝間着でうろうろしたらまずい」
「うん」
「武器も持っていこう、戦闘になる可能性もある」
「うん」
ローズたちは着替えて、そして宿のすべての部屋を確認して、やはり誰もいなかった。宿にある源泉を確認しても術式も何もなかった。
「昨日どの辺りで変な感じがした?」
エフェルガンが周囲を確認している。
「宿の門の周辺だった」
「この辺りか?」
エフェルガンは歩いて場所を確かめている。
「うん、その辺り」
ローズがうなずいた。
「今、変なものがある?」
「何も感じない」
「誰かが撤去したか、あるいは発動した後消える仕組みになっていたか」
「そういうのがあるんだ」
「僕が知る範囲ではそんな感じかな」
「ふーむ」
エフェルガンがそう言って、周りを見ている。誰も居ない町が不気味すぎる。
「じゃ、町に行こうか。何か分かるかもしれない。念のため、全員一緒に行動をする」
「はい」
ハティもうなずいた。彼は軍人ではないけれど、エフェルガンとともに戦場まで行ったことがある人だ。腰にいつも持っている短剣はあまり使う機会がなかったらしいけれど、家宝だそうだ。
「誰もいないね・・」
「まだ朝餉の時間だから皆が家の中にいるかな」
ローズが言うと、エフェルガンが可能性を言ってみた。
「朝餉の時間でも外に出る人はいるよ」
「そうね。これは不自然ね」
「もっと町の中へ移動しよう」
「その前にちょっと探知魔法をかけたい。高い所あるかな・・」
ローズがキョロキョロして、当たりを見渡した。
「ローズ、あまり目立つと危ないわよ」
リンカが注意してくれた。でもどうしても調べたいんだ。どうしよう・・。
「布で隠そう」
エフェルガンは自分の布を外し、ローズの頭にかけて、きれいに巻いた。
「ありがとう」
「じゃ、あの屋根の上に移動しよう」
エフェルガンが示した方向を見ると、とても高い建物がある。ローズたちがその屋根の上に移動した。
「ここならかなり高い位置にある。僕らはローズの周りにいるから安心して探知魔法をかけて良いよ」
「うん。ありがとう。じゃ、行きます」
ローズは心を落ち着かせ、意識を集中した。探知魔性をかけて、広い範囲でかけたが、人がいない。どういうことだ?
「誰もいないよ」
「なぜだ」
「分からない」
「ハインズ達に頭の中で呼びかけることができるか?」
「やってみる」
また意識を集中した。今回はハインズを呼びかけたが、返事がない。繋がらなかった。エファインにも呼んでみたけれど、ダメだった。ガレーを呼んでみると、返事がなかった。エトゥレはどうだ、とローズは強く念じた。繋がりそうで・・、反応があったけれど、様子がおかしい。どの辺りから反応があったか、再び探ってみる、とローズはエトゥレの波動を探る。しかし、この場所からかなり遠く離れている。
「エトゥレから反応があったけど、様子がおかしい」
「どこにいるか分かる?」
「探ってみる。ごめん、誰か乗せてくれる?上から探りたい」
ローズが言うと、ケルゼックが言った。
「私の背中にお乗り下さい」
ケルゼックは変化しようとしたが、エフェルガンは手で制止した。
「僕が乗せる。ケルゼックはしっかりと護衛してもらわないと困る。オレファはリンカを乗せるから、ハティのこともちゃんと守ってくれ」
「はっ!」
エフェルガンが言うと、ケルゼックがうなずいた。
「ごめんね。本当は私が飛んでも良いけど、今回はちょっと気を集中しなければいけないんだ」
「問題ない。あの4人は僕の大事な護衛官達だ。本来なら、ローズの力を借りずに僕らが探さなければいけないんだ」
「あの4人も私の大切な人たちだよ。いきなりいなくなると、やはり心配だ」
「そうだね。じゃ、乗って」
「重かったら言ってね」
「問題ない。ローズは軽いんだ。しっかりつかまって」
エフェルガン達が上に飛んで、ローズの指示に従いながら移動している。かなり町の外まで移動した。エトゥレの波動が感じていて、段々と強くなっている。
「あの辺りで感じる」
「あそこは森だ」
「何で森にいるんだ?」
「分からない」
「降りて見よう」
エフェルガンたちが降りようとしたら、ローズが何かを感じた。
「待って!術式を感じているの」
「破壊しないといけないね。どんな術式だ?」
「この森全体・・術式に囲まれている」
「この広さじゃ僕が破壊しきれない」
「うむ」
困った。とても広い範囲なんだからエフェルガンの術破壊魔法だけだと破壊しきれないのが分かるが、この下にエトゥレがいるかもしれない。どうしよう・・。
(浄化の雨を降らせるが良い)
「ん?」
ローズの頭の中に声が聞こえた。
「どうした?ローズ」
「頭の中に話をかけられた」
「誰に?」
「分からない」
「なんて?」
「浄化をせよ・・と」
「聖龍様かもしれない」
「そうか。分かった」
「頼む。ケルゼック、周りを注意せよ」
「はっ!」
浄化の雨となると、水属性に聖属性を乗せるような感じで良いかもしれない、とローズは思った。空にちょうど良い雲もあるから、広い範囲で雨を降らすことができるかもしれない。基本的に水分がたくさん集まると重くなるため、雲の中にある水分が落ちてくる。雲に空気中の水分を集めなくてはいけない。
「皆、びしょぬれになるかもしれない」
「大丈夫だ」
エフェルガンが言った。
「まって、魔法を張るわ」
リンカは片手を上にかざして、円のような魔法陣が現れてきた。その傘はローズたち全員をカバーできるぐらいの広さの傘のような形になった。
「良いわ」
「うん。いきますよ」
ローズがうなずいた。
「自然よ、ローズが命じる:我に力を与えたまえ!」
今回は大魔法を唱えるため、体が光ってしまった。水属性を唱え空気中の水分を認識して雲に集中した。ぽつん・・ぽつん・・と、雨粒が少し落ちてきている。
「いにしえの聖なる神、聖龍の名の下に、ローズが命じる:我に力を与えたまえ!」
凄まじい力が集まっている。これで一気に聖属性をかけて、広い範囲でその水滴一つ一つにエンチャントする形にした。空に大きな魔法陣が現れてい光り輝いている。これで聖なる浄化の雨を降らす。
「ホーリー・レイン!」
魔法陣が雲にかかるとザーー!、と一気に雨が降り出した。そしてその魔法陣は雨とともにゆっくりと下に降りてくる。光がローズ達を通ると、リンカの傘の術も消えてしまって、ローズたちが雨に濡れてしまった。
びしょびしょだ。
光輝く魔法陣が地面に到達すると地面からまぶしい光が上に向かって現れた。とても強く、とても神聖な感じがする。エフェルガン達が無言でそれを瞬きもせず、見つめている。彼らの顔に汗が見えた。
(ローズ様・・)
頭の中にエトゥレの声が聞こえている。
「エトゥレ? 今そこに行く」
「エトゥレから返事がきたのか?」
「うん。あの方向だ」
エフェルガンは直ちにローズが示した方向に向かっている。そこは山の斜面で草や低い植物に覆われている場所だ。探知魔法をかけてみると一人の男性の姿が地面に倒れているのが見えた。
「エトゥレ!」
エトゥレの姿が見えていると、ローズが思わずエフェルガンの背中から飛び降りて、エトゥレの所に向かって走った。エフェルガン達は慌ててローズを追って走った。エトゥレは地面に横たわった。太ももに自分の短剣が刺さっている。
わざと刺していたのか?
それよりもまず状態を確認しなければいけない、とローズが焦っている。
「エトゥレ!しっかりして!今助ける!」
「エトゥレ!大丈夫か?何があった?」
ローズがエトゥレに回復魔法をかけながら、エトゥレの太ももに刺さっている短剣を抜いた。毒がなさそうだけれど、傷口がひどい。エトゥレの短剣は暗部の短剣だから、ギザギザがあって、殺傷能力が高い。細胞生成をしなければいけない。でないと、エトゥレは暗部として再び仕事復帰できるまで時間がかかってしまう。でも、おなかが空いた。
ぐ~~~~~~~~~~
「うむ、食べ物がない・・」
「朝餉食べてないよね」
「うん」
「待って、ちょっと小動物ぐらい狩りに行ってくる」
リンカは周囲を見て、いきなりどこかに飛び込んで、森の奥に消えた。
「じゃ、今から細胞再生をやります。エトゥレ、私はまだ傷の手当てをガレーに教えてもらってないんで、多分うまく傷口はふさがらないと思う。予め、了承して下さいね」
「はい」
雨で体が濡れているエトゥレが弱々しく答えてくれた。
「細胞再生!」
エトゥレの太ももにある傷をきれいに拭いて魔法をかけている。その間にエフェルガン達がローズたちの周りに簡単な屋根を枝と葉っぱで作った。
細胞の再生は、血液再生魔法と比べたらそんなに魔力を消費しないけれど、大魔法を連続して使ったあとなので、かなり体が辛く感じ始めた。ハティは地面をきれいにして石と枝を使って、火を起こした。焚火で少し体が暖まってきた。高地は本当に寒い。この雨でますます寒く感じている。
しばらくすると、リンカは数匹の獲物を両手にもって帰ってきた。山兎三羽と子鹿一頭だった。短時間で良くあんなに狩りできたなんて、とローズはリンカを嬉しそうに見た。
リンカが無言で少し離れたところで、それらの動物たちの皮を剥ぎ、降りかかった雨できれいにし始めた。オレファはリンカがきれいにした肉を、きれいにした葉っぱで受け取った。リンカの慣れている動きに、エフェルガンが観察している。
鹿の処理まで終わって、今度は枝を切って、鋭く先端を切って、槍のような形にした。そしてぶすっと肉の塊になった兎や子鹿を刺して、大きな葉っぱの上に乗せた。リンカはポケットから小さな袋を出した。
「それは?」
オレファは興味深い顔で聞いた。
「塩」
リンカが答えると、オレファが首を傾げた。
「塩?」
「そう、塩」
「持ち歩いているのか?」
「ええ。塩があれば便利よ。里の武人なら、誰もが塩を持ち歩いているの。常識だから」
「では、ロッコ殿も?」
「あの人は主の配下だけど、里で育ったものではない。塩を持ち歩いているかどうか、知らない」
「そうなのか」
「ええ。あの人のことは主とローズ以外は、誰も知らないわ。秘密が多い人だから」
リンカは話ながらてきぱきと肉に塩を擦った。そして塩の袋を閉じて、再びポケットに入れた。今度は別の小さな箱を出した。あの猫の毛の箱だ。リンカの猫の毛は魔力の結晶だから、火起こしとして使うことができる。
「その火で焼くのか?」
エフェルガンが聞くと、リンカがうなずいた。
「こんな雨だから魔法で焼いた方が早く火が通る。味は炭火や焚き火で焼いた方が美味しいけれど、あまり時間をかけると、ローズがおなか空いて、倒れてしまうかも」
「あはは、ごめんね」
ローズが笑いながら言った。
「僕が手伝うよ」
「じゃ、この兎の焼き具合を見ながら、焼いて回してね」
リンカはエフェルガンとオレファに指示を出しながら子鹿を焼いている。ものすごく香ばしい匂いがした。
「ハティ、この鹿もよろしく。私はまた狩りに行く」
そしてハティの返事を待たないで、リンカはまた森の中へ消えた。
「すごいな・・」
「うん。野生の勘というか、捕食者の目をしているリンカは誰にも止められないからね」
エフェルガンが言うと、ローズが笑った。
「殿下、その兎が多分もう大丈夫ですよ」
ハティの一言でエフェルガンが手に持って小さめの兎の焼き具合を確かめた。
「ハティは毒味する?」
「大丈夫ですよ。目の前で調理してくれたから大丈夫だと思います。この塩も普通の塩で、問題ありません」
「ちゃんと味見したのか」
「はい。ちょうどう良いの塩加減ですよ」
「やはりリンカはすごいな」
ハティが言うと、エフェルガンがうなずいた。
「嫁にできるなら幸せだな・・」
何気なくオレファの一言で全員の視線がオレファに向かった。
「ガンバレー、オレファ」
エフェルガンは笑みを浮かびながらオレファに言った。言われた本人が恥ずかしそうに首を振った。
「いや、今はまだその気持ちを伝えられないよ。リンカのような人を、強引にされたら絶対反発するから時間をかけるしかありません」
「そうだね。リンカは面倒くさがり屋だからね。それに、アルハトロスでは非公式リンカファンクラブがあるんだ。彼女は大人気の美女なんだからね」
「すごいな」
「誰かリンカの心を手に入れた人が現れたら、きっとそのファンクラブの会員から挑戦状が送られるでしょう」
「怖いな。会員がどのぐらいいるのか?」
「分からない。数百人、数千人がいるかもしれない」
ローズがその疑問に答えると、全員の目がオレファに向かわれた。
「ガンバレー、オレファ!」
痛みを耐えていながらエトゥレがオレファに応援を送った。微笑ましい護衛官の友情だ。
「ありがとう、頑張るよ・・ははは・・・はぁ~」
オレファは苦笑いしながら、再び焼いている肉に集中する。
「ローズ、これを食べながらでも」
エフェルガンは焼いた兎を持って、近くに持ってきた。食べやすくするために乾いた葉っぱの上にちぎった。美味しそう、とローズが思った。
「エフェルガンも食べて良いよ」
「僕は後にする。ローズが今倒れたら大変だから」
「ありがとう」
もぐもぐしながらエトゥレの治療に集中して、傷口を最優先で、細かい治療はあとにして、まずできるだけ血を止めて作業からにした。そして痛みを和らげていく。なんだかんだと、ローズが兎一羽を食べた。オレファが二羽目の兎も持ってきて、エフェルガンに渡した。そして彼はもう一羽の兎を焼き始めた。
リンカはまた帰ってきた。今度は大きなトカゲと猪を持って帰ってきた。相変わらず、無表情でてきぱきとさばいて、準備にかかる。トカゲが見た目が悪いけど、意外と味がタンパクで白身魚のようだ。逆に猪は獣くさいのため、かなり念入りの下処理が必要だ事細かくオレファに説明しながら、リンカは森で取ってきたハーブなどで猪の下処理をしている。そして塩を擦り付けて焼いている。香ばしい匂いが漂ってくる。
治療はいよいよ回復の段階に入り。念入りにエトゥレの体に回復魔法を入れた。エトゥレが座ることができるようになった。これで治療が一応終わりにした。念のため怪我したエトゥレの太ももにエフェルガンの布で巻いた。包帯ぐるぐる巻きぐらいなら、ローズがキヌア島の国軍基地でマスターした。
リンカの絶妙な火の魔法と料理スキルで美味しそうな丸焼き料理ができて、7人で遅い朝餉を食べることになった。雨も止んで、丸焼きを食べながらエトゥレの詳しい話を聞くことになった。
話によると、夜中に誰かに呼ばれたような感覚になって、抵抗をしても体が言うことをきかずに、エトゥレが先に起きていたガレーの後ろに歩いて、宿を出た。宿の人たちの中にエファインとハインズもいたけれど、呼びかけていても返事がなかった。エトゥレは必死に抵抗して、町はずれにいた時になぜか一時的に手を動かすことができて、腰にある短剣を出して自分の太ももを刺したと言った。あまりの痛さに術が少し解けていたが完全に抜けられず体がまだその呼びかけの方に向かおうとしていた。仕方なく、短剣をもっと深く刺して歩けないようにしたという。そしてローズの呼びかけに応じてきたけれど。力尽きた。そのときに大雨が降って、ローズたちが現れた、と彼が説明した。
「分かった。食べ終わったら、残りの3人を探しに行こう」
「はい」
エフェルガンが言うと、全員うなずいた。
「待ってろ、エファイン、ハインズ、ガレー。今助けに行くからな!」
エフェルガンは立ち上がって、そう言った。その目に、怒りが見えている。




