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人形姫ローズ  作者: ブリガンティア
スズキノヤマ編

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74/811

74. スズキノヤマ帝国 キヌア島(5)

「リンカさんの料理って本当に美味しいね。お代わり!」


護衛官のケルゼックは三回目のお代わりをしている。朝っぱらから皆がこんなに食べても大丈夫のか、とローズは心配になってきた。エフェルガンもリンカにお代わりを要求した。いつも大食いのローズは今日はライバルが多くて、お代わりするかどうか、迷ってしまう。


「オレファ殿が手伝ってくれたからだ。私はこの地方の野菜があまり詳しく知らなかったから、いろいろと教えてもらった」


リンカがケルゼックのお皿に料理を入れて、そのお皿を彼に渡した。


「いやいや、俺はただ一般的な食べ方を教えただけだったよ。俺は料理できないから、手伝うと言っても野菜を洗うぐらいだ。ははは」

「やはり料理人の腕が良いってことだ」


いつも食が細いハティまでお代わりしている。


「ローズ、ぼーっとしないで、早く食べないとなくなるぞ」

「そうですよ、姫もちゃんと食べないと昼餉の前におなかが鳴いてしまいます。お代わり!」


エフェルガンもそうだけど、エトゥレにまで言われてしまった。エファインは無言で一つの皿に手を伸ばして、全部食べてしまった。


「あ・・」

「ほら、食事は早い者が勝ちだから、ぼーとすると全部エファインに食べられるぞ」


エフェルガンが笑いながら言った。


「そうだね、エファインは結構大食いだからな」

「分かった。早い者が勝ちね!」


ローズが言うと、オレファまで笑った。


「こら、ちゃんと噛んで食べなさい。はしたないよ、ローズ」


ローズがリンカに怒られた。


「ははは、これから毎日このような楽しい食事を想像するだけで幸せを感じる」

「殿下は今までずっとお一人で食事するからですよ。職員の食堂では毎日この様子です」

「じゃ、これから僕も職員食堂で食事するか」


エフェルガンが笑いながら言うと、他の人々が笑った。


「フォレットさんに相談しないといけないと思いますよ」


ハティが言った。


「私も職員食堂で食事したいな」

「ローズ姫まで食堂で食事したら、皆が遠慮してしまうのでは?」

「里では毎日こんな感じだよ」

「姫のご実家ですか?このような感じで?」

「うん。毎日の朝餉と夕餉は宴のように賑やかだよ」


ローズがうなずいた。


「そうだね。懐かしいね」


リンカがそう言って、うなずいた。


「リンカさんも里の出身ですか」


オレファが聞いた。


「出身は・・ちょっと違うけど、でも(あるじ)と一緒に里にいた」

「聞いても良いなら、リンカさんはどこの国の出身ですか?」

「この世界ではなく、遙か遠い異世界の国だった」

「そうか、あの伝説の鬼神の配下だったんだ」

「だったというか、今もダルゴダス様の配下です」


リンカが微笑んで、そう答えた。


「なるほど、だからお強いんですね」


ケルゼックがそう言って、お皿に残った物を食べている。


「でも、私には、強いリンカよりも、かわいいリンカの方が印象が強いな・・」

「そうだね。普段は屋敷の家猫としてやっているからね」


ローズが言うと、リンカが微笑んで言った。料理はもうほとんど残ってない。


「その技もすごいだ。大きさは調整できるのか?」


エフェルガンが聞いた。


「ええ。猫としてやっている時は魔力をほぼ見せないようにしている。だから普通の猫でさえ、気づかないほどに調整している」


リンカがうなずいて、答えた。


「あ、思い出した。リンカはオオラモルグでエフェルガンを探しに行った時、たくさんの雄猫に求愛されていたね。発情期だったかな、その時期って」

「ふん!」


ローズがそう言うと、リンカが鼻を鳴らした。


「ははは、すごいな。俺たちも普通のフクロウに化けるように練習しないといけませんね」

「良いなぁ~。私は何も化けられないわ」


エフェルガンが言うと、ローズが口を尖らせながら言った。


「薔薇人間になれるんじゃないですか?トゲトゲっと・・」

「いやー、それだけはいやだ」

「見たいな、ははは」


エフェルガンが笑いながら言うと、ローズは顔を隠した。


「それは興味ありますね」


オレファが言うと、リンカが笑った。


「体中にトゲが生えていたわ。ちくちくっと」

「リンカ、・・見たの?」

「ええ」

「いやー、やめて。恥ずかしすぎる」


ローズが言うと、エフェルガンたちは笑った。


「あ、エファインに全部食べられた!」

「ご馳走様でした!」


会話している間、ずっと無言だったエファインがしっかりとすべての料理を食べ尽くした。一欠片も残さずに食べた。けれど、皆の笑顔で何よりも心が満たされた、と誰もが思った。


楽しい朝餉の後、今日は三つの班に分かれる。魔法師を探す班と闇商人を捜す班と市場や周囲の村に歩き回る班だ。一番最後の班は観光っぽくて楽しそうなので、ローズとエフェルガンとハティとケルゼックでやることになった。闇商人探しは暗部の二人がやると言った。魔法師探しはハインズとエファインとオレファがするそうだ。リンカは猫として自由行動となった。


リンカは食器の後片づけている間に、オレファと護衛官達も部屋の掃除を手伝っている。美味しい料理の御礼として皿洗いをしてくれたエファイン達で、とても協力的な男性達だ。エフェルガンと暗部の二人は色々と地図を見ながら会話している。


ローズは暇だから布団の片づけをしたら、ケルゼックに仕事を奪われてしまった。彼はてきぱきと次々と毛布をたたんで、布団を片づけている。オレファも台所の掃除までしてくれて、家中がぴかぴかになった。意外と鳥人族の男性って家庭的だ、と感心した。


しかし、エフェルガンは多分家庭の仕事をしたことがないでしょう、とローズは思った。正直に言うと、エフェルガンは家庭の仕事をなに一つもやったことがない。


ハインズは洗濯物をまとめて外で待っている洗濯専門の人に渡した。午後にできあがるそうだ。その時にお金を払うというシステムだ。


すべての準備が整えて、ローズたちは貸し家を出て、それぞれの行くところに向かう。エフェルガンは踊り子ニラが言ったムイネ村を訪れたいと言った。やはりなんらかの情報が欲しい。少なくてもこの人さらいの闇を明らかにしたいと思っているようだ。


ムイネ村はキヌア島の東にあって、海の近くにある。とても小さな村で、村人の多くは漁師として生活している。村には踊り子の練習場がある。賑やかなリズムの音楽に一所懸命踊りの練習をしている若い女性が大勢いる。ローズたちが見えていると、おみやげ売りの子どもたちが集まってくる。


学校はないのか?、とローズが聞くと、子どもたちは首を振って、村には学校がないと答えた。それを聞いたエフェルガンの顔が曇ってきた。大国であるスズキノヤマでは隅々まで教育が届いていると思ったばかりで、現実を見ると、このような島や地方には国の方針が届いてなかった。予算があったというのに、予定通りに使わなかった。


恐らく、汚職でお金が役員の懐に入ってしまったのでしょう、とローズは思った。


貧しい生活で生きている村人達であるけれど、彼らの目がキラキラと輝いている。好き勝手にふるまっていた領主とその一族が捕らえられている噂が島中に広がっている。新しい領主がきっと島民を優しくしてくれるんだ、と願いを込めて話してくれたのは果物売りのおじさんだった。ローズが一袋の果物を買っていたら、おじさんは色々な話をしてくれた。あのニラという娘もこの村の出身で、三年前村を出たまま帰って来ない、と彼は言った。ニラの母親の家がこの近くにあると情報をもらって、早速見に行くことにした。とてもきれいな家だった。しかし、そのニラの母親は今病気で足が不自由になった。空を飛ぶこともできず、歩くこともできず、惨めな生活をしている。娘からお金をもらっているけれど、ほとんどの薬代に消えてしまった、という。


この村に、まともな診察所が町の中の数ヵ所と軍事施設の中にあるところだけだった。町から離れた村になると、医療師が月に一回しか村を訪れないという現実に、エフェルガンの顔がますます曇ってしまった。医療師の代わりに、村人が訪れてきた薬売りの商人に頼るしかなかった。質の悪い薬で高額で、村人を苦しめている。エフェルガンの目に、この現実はどう映っているのでしょう。


ローズ達は近くの売店で売られている薬を何袋か買った。後で医療師である暗部のガレーに調べてもらうためだ、とエフェルガンが言った。あの人なら、薬のことが分かる。ローズはまだ薬学を習ったばかりで、薬のことがまだ何も知らない。もう少し勉強すれば役に立つのに、と彼女が悔やんでいる。


ムイネ村から北へ行くと小さな村がある。この村もムイネ村と同じぐらい貧しい村である。畑仕事が主に村の生活を支えている。村の娘達は主に町で売春婦として仕事をしている。売春で得た収入は村にいる親兄弟の生活を支えている、という。学もなくスキルもない女性達は、体を売るしか道がなかった、と一人の年老いた女性が言った。


その村を出て、エフェルガンはずっと静かになってしまった。彼は現実の厳しさを知ってしまった。そしてどうしたら良いか、とずっと考え込んでしまった。エフェルガンは現実と理想が違ってしまったことに気づいた。けれど、それでも、その現実から目をそらしてはいけない、とローズの言葉にうなずいて、次の村へ足を運んだ。


この村には広い綿の農場がある、農業もかなり盛んで、仕事を励んでいる村人が多く見える。ただ、他の村と同じく、生活が豊かではなかった。村でとれた農産品は前領主の関係者の問屋へ売らなければならなかった。しかも安い金額で。だからいくら働いていても、彼らにお金があまり入ってこなかった。直接工場や町へ売ってしまったら、領主から圧力がかかってしまうという。領主が逮捕されて、これからはどうなるのでしょう、と戸惑っている村人も多くいる。


昼餉は北西辺りにある村で取ることにした。漁師が多いこの村では新鮮な魚が多くあり、料理として提供してくれた漁師小屋も海岸線に多々ある。店選びはハティに任せた。ハティが選んだ店でいくつかの料理を注文した。ハティが毒味してからローズたちが昼餉を食べ始めた。結構美味しい。しかし、エフェルガンはあまり食欲が無かったようだ。


「ちゃんと食べないとダメだよ」

「あ、うん。ごめん。ちょっと考え事している」

「昔言われたことあるんだ。頂きますの意味を、ね」

「ほう?」

「命を頂きますという意味なんだ。この食事になった魚や動物たちの命を頂いているから、私たちが生きているんだ。だからちゃんと敬意を持って、食べないとダメだ、と言われた」

「そうか。誰に言われたの?」

「里の料理長に」

「分かった。ちゃんと食べよう」

「うん。考え事は良いけど、食事もちゃんとしないとね」


エフェルガンは目の前にある食事を食べ始めた。心配したケルゼックは彼女に微笑んでくれた。4人で今日の昼餉を美味しく食べた。


食事を終えて、次の村へ足を伸ばし、そこには工場がたくさんある地域だ。労働者として村人が数多くいるけれど、その大半は子どもたちの労働者ばかりだった。子どもの労働者だと安い賃金で働いてくれるから大人の労働者よりも人気だという。学校がない貧しい村だ、と勉強するよりも働きに行った方がお金になる。家庭の支えにもなるから、多くの村人は子ども達を働くようにと指示している。この村で、外で遊んでいる子どもたちがほぼいなかった。


いくつかの村を見て回り、今度は町へ入ると、その生活の差を感じる。市場で売られている製品が安いものがあれば高いものもある。似たような綿の布一枚でも、なぜ価格の差があるかエフェルガンは布屋でずっとその布を見つめていた。品質も大した差がなかったというのに、値段がとても安い布と高い布がある。これでかかるコストや中間コストがあるかと思うけれど、彼はどう考えているのか分からない。


結局エフェルガンはそれらの布一枚ずつ買うことにした。布を作った工場も記録に残すようにとケルゼックに命じた。


そして夕餉の材料の買い出しに市場へ行って、野菜や肉などを買って、リンカの買い物リストにある調味料を探しに市場の隅々まで探しに行った。なんとか、リストに載った物を全部そろえた。


貸し家に帰ると、家の前に洗濯専門の人がいた。ローズたちの服をきれいに洗って乾かし、きれいにたたんである状態だ。お金を払ってから、ローズたちが家に入った。まだ誰も帰ってこなかった。珍しい。


ローズはとりあえず風呂の準備だけしようとしたら、ケルゼックがもうすでに風呂場にいて、お湯の準備をしている。ローズは暇なので、終わってない小論文を書くことにした。エフェルガンは隣で黙々と何かを書いている。仕事モードのエフェルガンは声をかけても反応しないので、そのままにしておくことに、とローズは思った。ハティは台所に行ったけれど、薪がないことに気づいて、頭をかきながら出て行った。


しばらくして、ハインズ達が帰って来た。そして暗部の二人も帰ってきたが、リンカが帰って来なかった。日が沈んで、周囲が暗くなってきた。リンカに何があったのでしょう、と心配になって仕方がない。リンカは強いから問題ないはずなんだけど、やはり約束の時間に帰って来ないと心配だ。オレファも落ち着かなくなって、外に出て行った。けれど、やはりリンカの気配がない。


「ちょっと周りを見て回る」


その一言を言って、オレファは翼を広げて、空へ飛んで行った。


一時間ぐらい時が流れていて、外でオレファの羽ばたき翼の音が聞こえてきた。ローズたちは扉を開ける、とそこでオレファの手に黒猫のリンカがいた。そしてそのリンカの口でくわえられたのがペンダントに繋がれている魔石だった。その魔石の中に、人の気配があった。


オレファは家の中に入って、リンカを絨毯の上に置いた。リンカがかなり汚れている姿を見たローズは驚いたぐらいだ。口にくわえているペンダントを机に置いた。ローズはそれを手にして見つめた。中に人がいることが分かった。


「遅くなってごめん。ただいま」

「お帰りなさい。これは?」

「道でそれを身につけている人を見て、奪ったんだ。追われていて、なんとか逃げ切ったけど、宿がある方向が逆で、遠ざかってしまって、どうしようかと思ったところで、オレファ殿が見えていた」


リンカがそう言って、オレファを見ている。


「いやぁ。ものすごく高い木の上にいたよ、どうしたんだと思ったよ」


オレファが言うと、リンカは自分のアゴを後ろ足で掻いた。


「助かった。ありがとう、オレファ殿」

「いえいえ。その殿の呼び方やめて下さいよ、リンカさん。耳がかゆい」

「そうか。じゃ、なんて呼べば良い?」

「オレファで良いよ、リンカさん」

「じゃ、私もリンカで良い」

「了解」


リンカがオレファに言った。


「で、この魔石はどうする?中に人がいるけど」

「まだ生きているか?」

「弱いけど、生きているよ」

「じゃ、ローズ、出してくれ」

「はい」


エフェルガンの要請でローズは魔石を絨毯の上に置いて、呪文を唱えた。魔石に向かって魔力を込めて、魔石の呪縛の術を破壊した。パリンと砕けた魔石の音がした。そして中からまぶしい光とともに一人の女性が現れた。ガレーは素早くその女性の脈をとって、確認した。そして回復魔法を送り込んだ。 


「弱まっているが、命の別状がなさそうだ」

「良かった」


ローズがうなずいた。


「ハインズとエファインは軍事基地まで行ってくれ。この女性をあちらで保護する」

「はっ!」


ハインズとエファインが外に出て行った。リンカはかなり汚れているため、先にお風呂に入ってもらうことになった。ガレーはオレファが持ってきた白湯で、その女性に回復薬を飲ました。エトゥレは家の外に出て、周囲の確認して行った。


お風呂から上がったリンカは直ちに台所に入って、調理し始めた。オレファがすべての食材は事前に処理したため、調理もスムーズになった。あの二人は本当に良いコンビだ。


台所からオレファがスープを持ってきた。やっと気がついたあの女性はとても弱まっているため、少し食べ物を食べないと、軍事基地まで行くと体が持たない、とガレーが言った。ケルゼックに体を支えてもらって、ガレーは優しくその女性の口にリンカが作ったスープをスプーンで飲ませている。


彼女の青白い顔から段々赤色が現れてきた。言葉も少し話せるようになった。オレファは次々とエフェルガン達の分のスープを持ってきた。全員スープを飲みながらその女性を囲んで話を聞くことにした。


「助けてくれてありがとうございます。私はビリナと言います。ドイパ国からきました」

「ドイパ国・・?」

「はい、友達と観光にきて、キヌア島の安くて良い布を買いにするために来たのですが宿に戻る途中で襲われてしまったのです」

「それはいつの話?」

「えーと、お正月の前に、買い物するためにここに来たのですが・・」

「ずいぶん前の話だね」

「えっ?!」


ビリナは驚いた。


「どのぐらい閉じこめられていたか、分かりません」

「それはそうだな。閉じこめられると時間の感覚が分からなくなるからだ」


エフェルガンが言った。


「襲われて、何にされていたか・・話してくれる?」


ローズが聞くと、ビリナという女性が突然顔を手で隠し、泣き出してしまった。辛い思いを思い出してしまったのでしょうか。ケルゼックはその女性の肩を優しく抱いて、安心するようにと優しく言った。彼はポケットからハンカチを取り出して、その女性に差し出した。女性は涙を拭いて、ガレーが差し出した白湯を飲んだ。落ち着いてきたようだ。


「知らない男達に・・無理矢理・・相手に・・何回も・・」

「そうか。辛かったな」

「はい。その後、袋に入れられて・・馬車でどこかに運ばれて、売られた」


ビリナがそう言って、ことを話した。


「その売買されたところで、何か覚えがある物や、何かあれば教えて欲しい」

「匂いがきついところでした」

「匂い?どんな匂いだった?」

「分かりません。ただ、薬のような、きつい匂いでした」

「薬・・」

「甘いにおいもありました。占い館で嗅いだことがあるようなにおい・・」


ビリナが思い出しながら言った。


「なるほど。もう安心して良い。あなたは今安全なところにある。これからスズキノヤマ軍事基地へ移動して、明日は首都への移動を手配する」

「ありがとうございます」


エフェルガンの言葉にビリナが頷いた。安心したようだ。オレファがまた台所からおかゆを持ってきた。ガレーはスプーンで手伝おうとしたら、自分で食べられると言った。久しぶりの食事はきっとおいしく感じているのでしょう。ビリナが嬉しそうにお粥を食べている。


ビリナが食事終えてまもなく国軍基地からハインズとエファインが帰ってきて、移動用巨大フクロウを連れてきた。国軍隊長とエフェルガンはシリアスな顔で会話している。念のためエトゥレとケルゼックが今夜国軍基地まで一緒に行って、詳しい話を聞いてもらうことになった。またドイパ国の大使への連絡など、エフェルガンは細かい指示を出した。被害者が外国観光客と分かった以上、ことの重大さを理解した国軍隊長は真剣にエフェルガンの指示を従っている。


オレファは袋できれいに包まれているお弁当をケルゼックとエトゥレに渡した。二人は嬉しそうにお弁当を受け取った。明日の朝は帰ってくる、とケルゼックが言った。そして彼らは移動用巨大フクロウで国軍基地へ飛び立った。


夕餉を食べてから、ローズはお風呂に入ってさっぱりしてきた。けれど、次にエフェルガンにお風呂に入るようにとローズは言ったけれど、返事がなかった。ローズが見に行くと、彼は仕事モードの最中だ。仕方がないので、ローズはハインズとエファインに先に入るようにと言った。


護衛官オレファ、毒見薬ハティとリンカは台所で後片付けと皿洗いをしている。また明日の朝の料理の仕度もするそうだ。ガレーは昼間ローズたちがムイネ村で買ってきた薬の成分など細かく調べている。ハインズとエファインは順番にお風呂に入り、そして布団の準備をしている。エフェルガンは相変わらず仕事モードで、ガレーの向かい側に座って机に向かっていろいろと書いている。ローズはエフェルガンの隣に座り、自分の小論文を書くことにした。黙々と書き物しているローズたち三人に、誰も声をかける人がいなかった。護衛官たちとリンカは外に出て屋根に登り、上で会話しているようだ。やっと小論文が書き終わった、と思っていたら、もう深夜になった。


ガレーは細かい仕事を終えて片付けている最中だ。今度ガレーに薬の成分など教えてもらいたいと言ったら快く返事してくれた。隣のエフェルガンはまだ仕事モード中だった。彼のすごい集中力に驚かされた。邪魔しないようにローズたちもその部屋から出ることにした。


しばらくしてから、ローズが眠くなったので、寝る準備する、とリンカに声をかけた。すると、リンカが屋根の上から降りて、そのままローズと一緒に家の中に入った。エフェルガンが何時まで仕事していたか、ローズは知らない。

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