第四話 魔眼発現
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何時ものように死に戻り、教会のようなスペースに降り立つ俺。
そんな俺を、笑顔で迎えてくれる天使イシュタルさん。
「ただいまーイシュタルさん。」
「おかえりなさーい♪俊哉さん♪お食事の準備をしますから、少し待って下さいね♪」
何回死に戻りしても、何故かイシュタルさんは毎回上機嫌である。
一番最初は表情も沈んでいたが、変われば変わるものだ・・・まあ、笑顔でいてくれるのは、俺としても嬉しいから良しとしよう。
誰か他人が見たら羨ましがりそうな、新婚サラリーマン夫婦のような会話を済ますと、イシュタルさんは早速料理に取り掛かる。
ただし、本人達はいたって気付いていない。
何故イシュタルさんが食事の準備をしているかというと、代わり映えの無い転送の行き来に飽きてきたので、試しに食事の事をお願いして、作ってもらった事が切欠だ。
験しにと思っただけだったが、意外にもイシュタルさんの料理があまりにも美味しかったので、ついついべた褒めしたら今の様なやり取りになっていた。
さて、この空間では空腹感は全くといって訪れない。
実際、幾日経ったかも解らないが、その間に空腹はもちろん、睡魔も訪れないのだ。
これは此処が神界の一部であり、神力に満たされている為にそうならないらしい、とイシュタルさんの説明である。
だからこそ、リズムと言うか生活サイクルを掴むことも出来ないし、なにより強制的に休むという場面が無いので、つい無理をしてしまいそうになる。
それに、行動を起こした先で失敗続きだと、肉体的疲労よりも精神的疲労が物凄く溜まってくる。
肉体的疲労は、この空間でも休めば回復するが、精神的疲労は蓄積されるばかりだ。
だからこそ、食事をしてみると言う行為で、精神的疲労を回復させることを思いついたのだ。
やはり3大欲求の一つである食欲を満たす行為は、非常に有効だったようで、この所心の平穏が保たれている。
ただ、こんな風に欲望を幾つか満たして、心身共にリフレッシュする事も考えたのだが・・・・3大欲求の中で食欲以外の眠欲・性欲は無理がある。
だって眠欲は当然眠くならないので満たせない。
では性欲は・・・・無理でしょ?
この空間には、イシュタルさんしかいないっしょ?つまり対象が・・・決まってしまってるわけで、ヤラないか?など言えないっしょ??
しかもイシュタルさんは、天使ですよ天使!?
襲ったら神罰食らいそうですよ!神罰を交わすほどに相手を口説くなんて、童貞が出来る訳ないっしょ!!
世の中には神罰食らってもご褒美の人もいるかもしれない。
でも、俺はそっちの趣味はない!断じてない!!だから、俺はイシュタルさんに、唯一弊害の無い食事という行為で、欲望を満たす事をお願いしたのだった。
もちろん腹は減ら無い。
でも何とか心の疲労を回復したいじゃないですか。
だから食事をする、無意味かもしれないが・・・それでもこうやって一緒に食事をしている。
ちなみに、初めて食事を共にした時は、かなり感動した。
流石ドジでも天使は天使、作るものが旨過ぎて腹が減っていないにも拘らず、美味しく楽しく食事が出来た。
俺自身も嬉しかったのと、褒めて上機嫌になったイシュタルさんも俺の為に作る機会が多い方が良いと言う事で、毎回死に戻るたびに食事をする事に決まったのである。
今台所では、イシュタルさんが鼻歌を歌いながら食事の用をしている。
裸エプロンが見たいけど、それは言わない、流石に殺されそうだ・・・
食事の材料は・・・何処から出しているのだろう?それに、この空間の何処が厨房設備になっているかは謎だがw
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
食事の準備中、今までのことを振り返って見た。
これで何度目の死に戻りだろうか?
死に戻る理由は、本当に・・・本当に色々あったんだよな~。
次に繋げる為に、色々試した事を順を追って整理していく。
肉体強化系のスキルを全て取得し、更にスキルLvもMAXで挑んだ。
あ、スキルLvは10がMAXとの事。
10の効果がどんなのかは知る由もないが、凄いんだろうと勝手に解釈しておく。
肉体強化系は自分の肉体硬度はもちろん、魔法耐性を初めとした各種状態異常耐性を全てスキルLvMAX取得。
HPやMPも人間では最高峰の保有数値になっているはず。
どれ位のHPかと言うと、地球の常識なら上空1万メートルからダイブしても地面にめり込むだけで死なない肉体だ。
試してはないが、それ位はあるとイシュタルさんも言っている。
ここまでしても、あの竜には殺されてしまうのである。
諦めずに、追加で初級魔法から神級魔法を取得し、全てスキルLVは10にして挑む。
魔法のランクや武芸のランクは、初級・中級・上級・聖級・神級の5段階で強くなっていく。
一般的な普通の人なら王級まで位が限度で、それ以上の取得は聖霊で聖級、神が神級を扱えるらしい。
つまり俺は、神の魔法を手に入れているのである。
それでも死ぬんですけど~あの竜にかかると・・・魔法攻撃が、ききゃーしない。
今度は身を守ることも平行して、土魔法による間接防御(壁とかね)から始めた挑んだが惨敗。
更に火魔法・水魔法・風魔法・氷魔法・雷魔法と自身の周りを防御できる魔法で重ねがけして応戦したが結果に結びつかない。
闇に神聖魔法による完全防御結界も使用したが無駄に終わる。
そこで防御しながら、肉体にも肉体強化系で物理攻撃も合わせたが失敗。
もうやけくそだと、考えうる全部のスキルを同時発動して挑んだが無理だった。
死に戻る度に、イシュタルさんと食事をして反省会を開き、またスキルを取得して挑む繰り返しだ。
魔法だけでは足りないのならと、武芸も一通りスキルを取得していく。
もちろん神級ランクまで武芸を上げている。
今度こそは、ヤツに一泡吹かせれるかもしれない。
肉体強化に魔法で防御、武芸による美しき回避!を目指す!
ちょっと自慢げに言って見たw
反省会を生かして、今度こそはと乗り込んでみると、これらを屈指して初めて、あの黒竜と数時間対峙出来るようなった。
ただ、数時間激戦するだけでは会話が成り立たない。
戦闘に集中するのが誠意一杯なのですよ・・・
今度は熟練度を上げて挑む事にした。
熟練度は数値化されてはいないが、初心者とベテランの違いはやはり大きいようなので『熟練度飛躍』スキルを取得するのだ。
これは行動に対して、瞬間的に熟練度絵を上げる効果が付与する。
スキルLVやランクでは補えない、行動力の上昇を意味する。
正にチートスキルだ!何年も研鑽を積んで手に入れる熟練の動きをあっという間に身につけれるのだから。
が、結果は同じだった。
俺の動きは良くなっても黒竜の攻撃が弱くなる訳ではない。
ヤツが強すぎて、人間やめる?って思いたくなるほどに万策尽きる。
マシな戦闘が出来るようになり、数時間は必ず全力で喧嘩している感じだ。
正直話し合いをするような暇はいつも無い。
いい加減最近は、もうお互いにまたかよ!!と思うほど顔見知りに感じてきていると思う。
何時もの出会いから戦闘、そして何時もの終焉、この繰り返しで相手を見知っていくと、この激闘のやり取りが、ちょっと楽しくなってきた。
そうライバル?とでも言おうか・・・
もちろん黒竜は、某ロボットアニメの敵の様な仮面も被ってもいないし、額に傷も無いけどね♪
コホン・・・有名なパロを思い出しちまったぜ。
なんにせよ、相手を認めつつあるのは言うまでも無い。
「お食事が出来ましたよ♪」
「ん、ありがとう。」
こうして今日も死に戻りの後の、食事を楽しむ。
イシュタルさんの料理に舌鼓を打ち、会話を楽しみ疲労を発散させる。
恙無く(つつがなく)終わった食事の後には、暖かい珈琲を飲む。
満腹感は無いが満足感は十二分にある。
心の平穏と疲労の発散を確認した後、イシュタルさんと二人、次の対策を話し始める。
何度もこんな風に過ごしていると、自然とイシュタルさんとの距離は縮まってきている・・・と、感じたい。
何時までも他人行儀だと、寂しいからね。
反省会には必ず、何処から沸いてくるのか、テーブルと椅子が用意される。
ホント、何処から出て来るんだろうか?w
疑問は脇において、二人で向かい合って腰掛けて、今日も真剣に対策を練る。
2人で過ごしていると、心地よい感情の行き来を感じる。
「ここまでしてもアイツには通じないんですよ、どうしたもんですかね?イシュタルさん。」
「んーそうですね~、ルビさん強いですから~ね~俊哉も強くなってるのに~ルビさんも認めればいのに!!」
気が付けば話し方も砕けてきている。
更には呼び捨てになっているが、それも今まで培ってきた親愛の情であると思って心地よく感じている。
そんなイシュタルさんは、黒竜ルビニアにご立腹のようである。
といっても激オコプンプンではなく、何と言うか友達を嗜める様にだが。
「まー認めたからと言ってどうなるでもないですが・・・」
「イシュタルさん此処は、アプローチの方法を変えてみせんか?」
押して駄目なら引いてみなである。
「何か閃いたんですか!」
またそんなキラキラした目で見つめてくれて・・・ホント参るぜ。
「相手の力に耐える事はせず、いっそ相手を無効化する方法を模索してみようと思うんですよ。」
「それは、どんな方法ですか?」
食いついてるな~もう、イシュタルさんたらマジ天使♪天使だけどw
「魅了を使ってみるのはどうかと、もちろん効果絶大で龍にでも効く魅了が望ましいのですが・・・そんなスキルあります?」
「竜に・・効く・・魅了ですか・・・・ちょっと待って下さいね・・」
そう言って考え込みだすイシュタルさん。
ウーンウーンと考える姿も可愛いぜ・・・一々見惚れてしまうがな。
俺が妄想、イシュタルさんが思案という変な沈黙が続いて数分経った頃、突然叫びだすイシュタルさん。
「あ、ありますよ!最上級の魅了!」
「おおおお、本当ですか?」
「はい!魅了スキルではありませんが効果は魅了以上でばっちりです!魅惑の魔眼を使えれば、俊哉の思惑が叶うかもしれません♪」
魅惑の魔眼・・・だと・・・!
何その中二病全開のお言葉!!!
高校生になっても、そんなフレーズ聞いたら欲しくなっちゃうですやん♪
「そ、それなら早速付けてください、プリーズ ギブミー マガン」
アホ丸出しで・・・しかも訳解らん英語話している俺・・・
「じゃあ早速・・・付けてあげたいんですが・・・これはちょと反則と言うか・・・んんーーーーー」
え?なんぞ問題ありそうなかんじだが・・・
「んーーーーもうここまで来たんだしバレても私が何とかします!俊哉のためにも!」
なんか俺の為にバレてもって言ってる時点でやばそうなんだが・・・それにイシュタルさんの目が逝っちゃてる気がするよ?
「あー無理なら「いえ、してみせます!」いい・・」
あーさえぎられちゃいました・・・
その後、何処かへ急いで出掛けたイシュタルさん。
その行動は、天使なのに盗賊の如き動きだ、頭に手拭でも被れば尚いっそうらしく見えそうだがw
暫くして、魔眼の元になる物?を持ち帰ってきた。
今までに無いイシュタルさんの突飛な行動に、実は俺、不安を感じていたんだが、それは当たりだったようだ。
俺の目の前に、イシュタルさんは気持ち悪いドロッとした丸い緑の塊を見せる。
「ささ、グッと飲んでください♪」
勢い良く俺に組み付き、躊躇する俺を無視して、強引に口元を開け飲ましてきた。
抵抗虚しく飲んでしまったが・・・飲んだ感触は、トラウマになりそうだった・・・・味的に。
緑の物体が喉を通っていく・・・非常に気持ち悪い・・・
飲み込んで数分は変化も無く失敗かと思っていたら、俺は自分の右目が急に凄まじく熱くなるのを実感する。
いってーーーーいてーよーーーーー!!
右目に手を当てて痛みに蹲まる・・・
数秒が数分に感じるほど、痛みが続き転げ回り、意識は朦朧とする。
痛さに耐え切り、朦朧としてたが何とか立ち上がることが出来た。
俺は、右目の違和感に戸惑いながらも、体の状態を確認するようにあちこち触れたりした。
確認した後、右目に手を当てて、左目だけでイシュタルさんを見る。
なんとか大丈夫とイシュタルさんに微笑みかけ、早速黒竜への転送準備をしてもらう、痛みもあるが効果の確認が先だ、善は急げとも言うしね。
イシュタルさんは、心配そうにしながらも転送準備を終わらせ俺の傍にやってくる。
俺は転送をお願いする。
もう痛みは引いてきている、大丈夫だ、いける!
この右目がどうアイツに効果を及ぼすか解らないがやってみるさ!!駄目で元々だからな!
そう決意を胸に転送が始まる感覚を感じ、右目を開けてイシュタルさん見る。
そう、右目の『魅惑の魔眼』を全開にした状態でだ、わかるだろう?
そんなことをしてしまったら・・・・
目の前で恍惚の表情をして、両手を胸元のメロンの前で組み、少し開いた口は濡れて淫靡さを感じさせる。
イシュタルさんが魔眼の虜にされていたのである。
そして・・・視界は真っ暗闇へと
「やっちまったあああああああ」
闇に響くは、俺のボンミスを後悔する絶叫だけであった。
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