第三話 初めてのスキル
10/7 更新
「ねえねえ、イシュタルさや・・・」
「はい、なんでしょう?俊哉さん?」
あかん、この天使さんはボケか天然か?
普通は竜に対して『人』という単語をつかわないでしょ?
せめて『ある種族』とか直球で『あるドラゴン』とか、前振りで言うべきでしょ。
せめてもう少し事前情報を下さい、マジでお願いします。
と心の中でひっそりと嘆願していた。
「ある人って竜の事ですかね?」
「はい、古竜で黒竜のルビニアさんといいます」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「竜って人って言いますかね?」
「いえ?竜は竜、もしくはドラゴンといいますね」
ダメだこりゃ(苦笑)
呆れている俺を他所に、イシュタルさんは何を言ってるんだろうと、キョトンとして俺を見つめている。
まー美人に見つめられるのは悪い気がしない。
何といってもイシュタルさんだし、その仕草は愛らしく、ヘンテコでも俺の心をときめかせる。
しかーーーし!!だ、ここは甘い顔をせずビシッと言っておかないといけないんじゃないか?
このままだと何も解らないままになってしまう。
聞けるだけの情報を集めるべく、イシュタルさんとの会話に励む。
「イシュタルさんは俺に『ある人の願いをかなえて欲しい』といいましたよね?」
「はい、その通りです」
「では竜は、人ではないんですよね?」
「はい、竜は人とは・・・・・ッハ!」
どうやら気付いたらしい。
イシュタルさんは、ワナワナと口を震わせ、更に手の指を胸の前で忙しなくワキュワキュしだした。
どうもこの天使イシュタルさんはアクシデントに弱いらしい。
天使なのに大丈夫なのか?と心配してしまう。
そんな俺の心の声に反応してか、少し拗ねるように口を尖らせ拗ね出した。
拗ねながらも悪いと思ってるのか、顔色は優れない。
ここは俺がいっちょフォローして、ご機嫌を直してもらうべきだろう。
円滑な会話の為にも、イシュタルさんを優しく慰める。
「どうして、・・・何とか言う竜の事を、人って言ってたんですか?」
「あの、えと、その、あの方は、竜という単純な種族的な見方で接した事が無く、私個人があの方、ルビニアさんを対等の友人として過ごしてきたので、どうしても竜とは言わず、人といってしまっていたのだと思います。」
あー、なんか解らないでもないかな~
俺も、もし竜が友人で、竜を名前で呼んでたら、あの人と言ってしまう気がするなー。
フー仕方ないか。
ここはイシュタルさんの思い込みから来る手違いと思っておこう。
こうなったら俺が、しっかり自分で情報を分析して把握しながら対処するしかないよなだな、うん。
取り敢えず、願いをかなえるのはあの黒竜と解ったが、何故攻撃してくるのか解らない。
その辺も含めて聞いてみようと思う。
「とにかく竜の願いを叶えるのは解ったんですが、叶える対象から殺されるのは何故でしょう?」
「その辺は・・今は申し上げられません。」
「ふーっむ、では友人であるイシュタルさんが直接願いを叶える方が早いんじゃありませんか?」
「本来はそうしたいのですが、何分私にも事情がありまして・・・直接あの方の前に姿を見せられないのです。」
「事情か~何かあるんでしょうけど、どうしてもイシュタルさんは動けないという事ですね。」
「はい、申し訳ありません・・・」
「じゃあどうやって願いを聞く状況を作り出せるんでしょう?それ以前に俺の言葉は通じるんでしょうか?」
「はい、状況は・・・召喚者の方の力量に頼るとしか・・・・でも、言葉は大丈夫です!」
「俊哉さんには自動言語翻訳スキルを魂に刻んでありますので、相手に話しかけても通じから問題ありません!それに・・・俊哉さんなら大丈夫です!なんといっても・・・ゴニョゴニョ・・なんですから・・・」
っと最後は言葉小さく、俯いて照れ臭そうにしている。
不思議そうにしていると、俺を見て、イシュタルさんは目を輝かせて、顔を紅葉させながらガッツポーズ決めて俺に親指を立てた。
あーなんか期待されてる~多分『あなたなら大丈夫!』って言いたいのかな?それにしても・・・めっちゃキラキラしてるんですけど顔が・・・
もうね、これは単純になにも聞かずに、当って砕けて成功させろって言う丸投げ状態だね
それでもイシュタルさんの笑顔が見たくて俺はやるしかないと思っている。
乗りかかった船だし、出来る限りやってみよう。
まだ一回しか相手(黒竜)の目には留まってないしね。
「解りましたよ、イシュタルさん。頑張ってみますからもう一回転送してください。」
「はい♪」
こうやって黒竜の願いを叶える為の行動が再度開始されたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「・・・イシュタルさん・・・やっぱ無理ゲーじゃないですか・・・」
「・・・・す・・・すみません・・・」
そう、あれから俺は意を決してあの黒竜に話をすべく3度転送してもらった。
だが、悉くブレスで即死して此処に戻ってきているのである。
「もうね・・・問答無用でブレス攻撃されて死んでしまうのでは、埒が明きませんね。」
俺としては、気が付けば即死で戻っている、その為痛い思いをしてはいないが・・・何時までもこのままだと、心が折れてしまいそうだ・・・
なんとか、心が折れる前に話し合いを始めたいのだが、交渉の予知も無く攻撃が始まってしまう。
正直、顔を見れば攻撃する・・・気に入らない。
いや、むしろあの有無を言わさないブレスに腹が立ってきた。
「せめてブレスが無効になれば会話も出来るんだが・・・・」
そう一人でブツブツと言っていると、イシュタルさんが俺に提案を持ちかけてきた。
「もし宜しければ、肉体強化系スキルを取得なさいますか?」
肉体強化?なにそれ美味しいの?
俺の思考がその意味を理解しだすと、怒りの矛先がイシュタルさんに向く。
だったら最初から言ってよ!
そう思いながら、碇に満ちた目をしてイシュタルさんを見たが、何か怒気が削がれて同情してしまい、さもあらんと納得してしまう。
だってイシュタルさんは多分・・・というか絶対ドジなんだろうなーって思えるんですもん。
今も俺の怒気に気付かず、ニコニコしているんですから・・・可愛いなコンチクショウ!
気を取り直し、深呼吸してスキルについて聴いてみることにした。
「スキルは直ぐにでも俺に付けれるんですか?」
「はい、すぐに俊哉さんに取得してもらう事が出来ますし、スキルLvも自由にできますよ。」
っと笑顔で申されましても・・・
今までの苦労がぁぁ~~っ!!
と落胆とも呆れとも何ともいえない虚脱感に苛まれた。
もうこの天使さんには予め期待しないでおこう。
どうやっても後だしじゃんけん状態なので仕方が無い。
その笑顔だけで満足しておこうと思う。
兎に角、どんなドシ天使の対応があっても、俺はやってみせるぜ!
あのクソ黒竜に話を聞かせてやる!ブレスも止めさせてやる!!
だって、腹が立つんだものしょうがない。
それと、やっぱ男だし、女性の・・・特にイシュタルさんの天然くらい、受け止めてなんぼの世界って思いたいじゃないですか。
スキルによって強化すれば、いけるかもしれないし!
「イシュタルさん!肉体強化スキルをMAXLVで付けてください。今度こそ話し合ってきますよ。」
っとイシュタルさんに向かって、腕を伸ばし親指を立てて宣言する。
「はい♪早速付けます・・・・ナンタラカンタラ!~~~~~~~エイ!!コレでばっちりですよ俊哉さん♪」
その言葉を聴いて、俺もイシュタルさんも成功を信じて、お互い笑顔で手を取り合い、勝利を確信していた。
初めて触ったイシュタルさんの手は、マシュマロのように柔らかかったです、ハイ!!
意気揚々と転送して、あのクソ黒竜の元へと向かうのだったが・・・
結果、4度目の即死と共に、またイシュタルさんの下へ舞い戻ってきたのである。




