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49番目の後継者  作者: ペンギンMAX
第二章 首都イブロニアと新たなる仲間達
20/41

第二十話 獣と惨劇

できるだけ書きたいのですが、仕事が忙しくなる時期でして^^;

出来るだけ更新空けない様に努力します


10/9 再更新

 暗い部屋の中から、呻き声と共に男の低い声が聞こえる。



「どうですか、まだ憎いですか?」


「ニクイ・・殺す・・・ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ!!」


「アハハハ、美しいですね~、甘美ですね~この子は素晴らしい!」



 狂気に満ち、目元は充血し、気の狂ったように叫ぶ女性の顎をクイッと上げて、男は顔を近づける。

 男は楽しむように、慈しむように女性に声を掛ける。



「そうそう、あの子 今幸せに過ごしてるそうですよ?それなのに貴方ときたら・・・」


「グギグググ・・・ガァァガガ・・・ユルサ・・・ナイ・・!!」


「ハハッハハハ、いいですよ、いいです~~これは素晴らしい事になりそうです.」



 女性は鎖に繋がれた腕に力を入れ、千切れそうなほどガチャガチャと揺らす。

 男は暴れる女性を、更に慈しむように眺めている。

 服はあちこち破れ、何日も放置された姿は、汗と排泄物に塗れて異臭を放っている。

 女性は既に正気を保ってはいなかった。


 部屋のドアが不意にノックされる。

 男はドアを示し、女性に解るように仰々しく肩をすぼめる。



「報告がきました、楽しみに待っているんですよ。」



 男は女性に向かって告げると、ドアを開け出て行った。

 残された部屋は再び暗闇に包まれる、女性はまた唸り声と奇声を上げ闇に呑まれていく。



「ただいま報告が参りました。」


「その様子ですと、失敗・・・ですか?」


「は! 差し向けた手のものは全て自害、目標力量を計り、被検体を奪取る事が出来ませんでした。」


「ずいぶんとイメージと違いますね?」


「は・・・まさか、彼の者達を退ける力量があるとは、計れませんでした・・・」


「首輪の件といい、何やら得体の知れない何かをもっていそうですね・・・あの少年は。それでも構わないでしょう、この際、騒ぎに紛れてもう一度試してもいいでしょう。私が出れば別段問題ないでしょう。それにしても明日が楽しみですね。上手くいけば貴方の望みも叶えますよ。」


「ありがたき幸せ。魔族の一員になれる日が楽しみです。」


「早くそうなるといいですね。それにしても人とは面白い、迷宮ですら欲望を満たせないのですから、アハハハハ~3日後にあの小娘を使った余興を行います。準備を怠らないように。」



 指示を出した後、男は闇に掻き消えるように姿を消す。

 報告に来た男は、相手が消えるまで頭を下げたまま見送りを済ます。

 相手が消えると、男は女性の居る部屋を一瞥して顔を顰めた後、何事も無かったようにその場を離れていった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 暗殺者の襲撃から3日経った。

 今のところ敵の気配は無い。

 不気味なくらい何事も変らない日が続いている。


 襲撃の日、俺は不覚にも動揺した。

 日本で平和に暮らしていた俺にとって、戦いで人が死ぬのを始めて見たからだ。

 命を絶つ暗殺者の肉の焦げる匂い・・・

 暗殺者の襲撃は、理不尽に死が襲って来る事を実感させられる。

 実感した事で、下手をするとシルビアが死ぬかもしれないと思え・・・不安が広がった。


 ルビさんを手に掛けた時の、不安や悲しみを思い起こしてしまう。

 それらが俺の心の中に渦巻き、取り乱したようだ。


 シルビアは、『襲われたから、トシヤ様は奴等を倒したまでの事、お気になさいますな』と言ってくれ、ずっと俺を慰めてくれた。

 どうやら酷かったらしい・・・・

 シルビアにも無茶をしてしまったようだ。


 昨日散々取り乱し、シルビアに癒されまくったので初日は少し気分がマシだ。

 気分転換に迷宮で拾った鉱石や魔石の換金をし、屋台などを巡りブラブラ過ごす。

 シルビアは俺に寄り添てくれている。

 暖かい温もりに、安心感を得る。


 人の目がある町の中では襲撃は無だろう。

 それでも、周りの警戒は緩めてはいない。

 冷静に慣れているのもシルビアのお陰だろう、本当に良かった。

 シルビアに感謝を伝える。



「勿体無いお言葉、助けられたのは私のほうで・・・むしろトシヤ様のお役に立てて幸せです。」



 との事・・・ええ子やな~と感動しちゃった。

 つい、ニヤケてデレデレ顔になったしまたたのは、恥しい・・・


 2日目は、ジーアスさん達に相談しようと思い、商館の方っへ行ってみた。

 今回はジーアスさんも居て、色々話しをする。

 話を聞けば聞く程、この世界の命は軽かった・・・

 俺も覚悟を決めないといけない。


 その後、ジーアスさんの提案で、気晴らしにでも繰り出そうということで、3日目は王都観光となった。

 王都の公共区画には、大道芸人なんかが居て、色々面白い趣向が見れるとの事、もちろん簡易屋台もありちょっとしたサーカス会場になっているそうだ。


 3日目、待ち合わせをして、俺とシルビアとジーアスさん一行は、連れ立って公共区画に行く。

 ミネルバさんの暖かい眼差しが、心に染みる。

 『お姉さま』と呼びたくなるくらいだった。

 お母さんはやっぱルビさんだし、お姉さんでいいよね。



 公共区画は、人で溢れお祭りのようだった。

 この喧騒は、イブロニアでは普通の光景なのが凄いと思う。

 日本の都市並みに溢れ帰る人々は圧巻だ。

 警備兵が随所に配置され、治安を維持しているのも目に付く。


 人混みの中を歩きながら、見掛けるパフォーマンスは、地球以上かもしれない。

 だって、亜人に魔法使いが居るんだから、めっちゃ複雑で面白いのだ。


 そんな中、ある一角が異様に人を集めている。

 興味を惹かれ、向かってみると



「っささ、お立会い~ここに居ますは、かくも珍しい完全獣化が出来る獣人で御座います~」



 男が声をあげて叫んでいる。


「そこの旦那様、そちらのお嬢様~人が獣になる様をご覧になったことはございますか~?」



 男は道行く人に話しかけ、時にはおどけて住民の興を誘っていた。

 男は演台に立ち、脇には大きな鉄格子の檻がある、中にはみすぼらしい女性らしき人物が入っている。



「嘘つくな!獣人でも完全獣化は出来ないだろ!!」



 見世物の前で、何事かと人だかりが出来、その中の一人が叫ぶと、続けて罵声が飛びかっている。

 そんな罵声を物ともせず、男はますます楽しそうに声を張り上げていく。

 遠巻きに俺達も何となく、その見世物をしている人だかりを眺めていた。


 見世物にされているのは、獣人の女性のようだ。

 ついシルビアを見ると、寂しそうに俯いていた。

 人族と獣人・・・獣人は虐げられやすいのだろう・・・


 シルビアから目線を離し、男のほうに目を向けると、視線が合う。

 その瞬間、フッと男が含み笑いを浮かべ、大きく声を張り上げる。

 今俺を見て笑ったような?

 そんな疑問を掻き消して声が届く。



「いえいえ~だからこその見世物!紛れも無い完全獣化!御代は見てからで結構~どうぞご覧下さい♪」



 男が言い切り、檻に向かって歩み出す。

 檻の女性は、生気も無くただ立っているだけだったのに・・・男が近付き何かを耳打ちした途端!

 檻の中で奇声を上げ、意味の解らない言葉を発しながら、狂ったように荒れ出した。


 観客はどよめき、人々の中には恐れ、同情、哀れみ、嘲笑、あらゆる感情が見え隠れする。

 女性は見る見るその姿を変化させ、人々の目を釘付けにしていった。


 体を強張らせながら、毛に覆われた四肢を、自身の3倍以上に膨らませる女性。

 四肢が膨らむと、女性の体も釣られて徐々に膨らみ、入っていた檻の天井を突き崩して大きくなる。

 変化を遂げた姿は、もはや顔の半面だけが、かつての女性の名残を残していた。

 身長にして5M、全身は筋肉の塊、その体は全て焦げ茶色の毛に覆われた獣の姿。



「・・・・ラ・・・スティ・・・?・・」



 声の主はシルビアだった。

 獣を凝視し、シルビアは口を両手で覆い、愕然とした表情で震えている。

 知り合いか?いや疑問形だったぞ?

 でも、何故そこまで驚いているんだシルビア。


 シルビアの次に、横に居るジーアスさん達を見た。

 既に臨戦態勢だった、腰の剣に手を掛け獣を凝視している。

 ジーアスさんの顔に焦りが見える、他の面々も信じがたいようだ。



「ば・・・バカな・・・完全獣化でも・・・こんなのは・・・」


「なんだ・・あれは?・・・」



 ジーアスさん達の様子に戸惑っていると、広場全体に響く咆哮が唸る。 

 驚き、獣に向き直ると、獣は広場にいる人々に向かって、その大きな腕を振るっていた。

 振るわれた腕が通ると、そこに居た筈の見物人の体を切り裂いていた。


 飛び散る血飛沫、降りかかる肉片、驚いた表情のまま転がる生首。

 『キャァァァァァァァァーーー』事態に気付いた女性に声を皮切りに、一斉に動き出す人々。


 獣は俺達を見て、猛々しい咆哮を上げながら、邪魔になる人々を凪倒す。

 逃げる人々を蹂躙し、肉片に変えながら突進してくる。



「ささ♪お題を頂戴いたしますね♪ハハハハッハハハ」


 男が高笑いしながら何やら叫んでいる。


「虐げられし獣人が、この街を襲っていますよ~~♪ハハッハハ」



 男の嘲笑と共に獣の被害は拡大する。

 警備兵が動き出し、応援も呼んでいるようだが対処が出来ない。

 公共区は一瞬にして惨劇の場と化した。



「トシヤ!下がれ!まだお前には無理だ!」


「トシヤ、言う通りに下がってて!」



 ジーアスさんとミネルバさんが、俺に逃げるよう言ってくる。

 既に獣は目の前まで来ている、唸り声が間近で聞こえる!


 獣の腕が、俺達目掛けて振り下ろされる。

 その腕をジーアスさんが盾で食い止めようと迎え撃つ、ミネルバさんは隙を見計らい切り付ける体制をとる。


 だが、腕を受け止めたジーアスさんは吹き飛ばされ、切りかかったミネルバさんまで余波で地面に叩きつけられた。


 俺は戸惑っていた、力を見せるかどうか・・・躊躇して動けないで居た。

 シルビアは驚愕したままとして動けない。


 獣は勝ち誇ったように俺達を見て、片言になった言葉を発した。



「グ・・ガァ・・・シ・・ルビ・・・ア・・殺・・・ス」



 シルビアを殺すだと??

 まさかやはり、知り合いだったのか?!


 名前  ラスティ

 種族  獣人族

 種別  灰狼種

 性別  ♂

 年齢  16歳10ヶ月

 Lv  24

 職業  魔獣戦士

 HP  1202/1202

 MP   315/ 315


 腕力 51

 体力 62

 知力 11

 精神  0

 敏捷 24

 器用  8


 スキル 

  なし


 ユニークスキル 

  なし


 固有スキル

  獣王の狂気


 すかさず獣に解析を使う。 

 化け物化しているせいか、以上に力と体力がある。

 後、固有スキルに『獣王の狂気』がある。

 もしやこれが関係しているのか?


 しかし、何故!?

 疑問を持つにしても獣は応えてくれないだろう。

 獣は、シルビアに悠然と構え、腕を振り下ろしてきた。


 ジーアスさんは起き上がっていたが満身創痍。

 ミネルバさんは地面に伏したまま目線だけ此方を見ている。

 シルビアは腰が抜けたようにペタリと座り込んでいる。


 獣の攻撃が走馬灯のように、ゆっくり見える。

 また、好きな人を失うのか?また何も出来ないまま状況に任せるのか?

 ジーアスさん・・・ミネルバさん・・・

 シルビアを・・・シルビアを失うのか!!

 嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!


 俺は無意識に行動を起こし、シルビアに振り下ろされ腕を、途中で止めていた。

 獣の腕をクレイモアで受け止め、シルビアを守る俺。

 考えるな!今は助けることだけに専念するんだ!


 驚く獣を無視して、懐に入り獣の脚を払う。

 払われると、獣は体ごと俺に吹き飛ばされ、宙を舞って地面に転がる。

 間髪入れず転がった体に蹴りを入れ、人気の無い城壁に向かって飛ばす。

 蹴り飛ばされた獣は、途中にある障害物に当っても勢いを失わず、城壁に貼り付けられるようにぶつかった。


 ジーアスさんは呆然と俺を見る。

 ミネルバさんは驚きを隠せない表情で固まる。

 そしてシルビアはポカーンと口を開けていた。

 おいおい、シルビアさん美人が台無しじゃないか?w


 シルビアを見て気勢が削がれた隙を、獣はチャンスとみて再度城壁から襲い掛かる。

 標的を俺に変えた獣の攻撃を裂け、跳躍しながらクレイモアで袈裟懸けを見舞う。

 だが、獣の体を覆う毛が硬く、クレイモアが折れてしまった。



「ッチ!切れないじゃないかよ~ん。」



 情けなく叫んぶ俺。

 仕方なく肉体強化と神竜強化を一気に纏う。

 手刀に竜闘気を集中して、獣の右足を目掛け振り下ろし切り取る。

 膝下から足を切断され、その場に倒れもがく獣、すかさず化け物の腕を両肩口から切り取る。


 左足だけ残し、地面に芋虫のように転がる獣を見下ろしながら考える。

 シルビアの知り合いを殺しても良いのか?殺すべきじゃないのか?

 女性だった頃の面影が残る顔半面は、涙を流し怯えている。



「素晴らしい!素晴らしいお手前です。」



 パチパチパチと手を叩きながら、見世物をしていた男が楽しげに話してくる。



「その子はもう駄目ですね、ではもう一つの策に繋げましょう♪」


「策?何打それは?」



 俺は一応聞いてみた。

 三下なら答えるでしょこういう場合。



「貴方を殺すことで、そこに居るもう一つの種が、発芽することが出来るんですよ?ウフフ迷宮ではしくじりましたがね。」



 あ~コイツ三下確定だ・・・

 本当に居るんだな~こんなテンプレ適役って・・・

 呆れる俺を見て、むっとした男は



「では、愛する者が目の前で死ぬ絶望を味わって、被検体の獣化する様を見せてもらいましょ~~う♪」



 言うや否や、俺に襲い掛かる男。

 俺は、男の攻撃に晒されるも、余裕で避ける。

 とうか、弱いんですけど・・・この人・・・


 男は驚愕の表情を浮かべ、尚も必要に攻撃を繰り出す。

 散々攻撃しても効く事のない俺に、焦りだす。



「バカな!これでは、これではもう一つの種が芽吹かないではないですか!」



 と更に墓穴を掘っていく。

 多分シルビアにも何か仕掛けていたんだろう。

 彼女もまた『獣王の威厳』という固有スキルを持っていたし・・・


 何とか情報を引き出そうと思うも、男は必死の形相でブツブツ呻くだけ。

 そんな攻防に、男はついに切れたのか、なにやら不敵な笑いと共に足元に大きな魔方陣を発動した。

 『解析』でみると、男は魔族、しかもLV98という。


 名前  ダーラム

 種族  魔族

 種別  魔人種

 性別  ♂

 年齢  531歳10ヶ月

 Lv  98

 職業  アークデビル

 HP  5300/5300

 MP  4530/4520


 腕力 75

 体力 68

 知力 82

 精神 54

 敏捷 64

 器用 72


 スキル 

  聖級剣術LV2・聖級火魔法LV3・聖級土魔法LV2

  隠密LV8


 ユニークスキル 

  千里眼


 固有スキル

  人体改造


 固有スキルの人体改造が非情に迷惑そうだ!

 とにかく、強いかどうか解らんが、発動しかかっている魔法はヤバイ!!

 広範囲殲滅聖級魔法『インフェルノ』だ!


 もう此処は悠長に男の生死や情報の引き出しに時間を稼いではいられない。

 悠長にしていたら町に甚大な被害が出る!

 魔法陣が完成し、魔法の発動に感応した地面から、炎の噴出すのが見隠れし始めた。


 俺は、男に飛び掛り一瞬にして体を頭から手刀で真っ二つにした後、『インフェルノ』の炎が充満する前に、広場全体の地面に神級防御魔法を展開して炎の噴出しを防ぐ。


 防御魔法に、噴出す炎が押し戻され地面がぐら付き石畳が凸凹に隆起し、一部融解していく。

 かなり地形が変形しているが、抑えないと建物にまで被害が及ぶ。

 

 ようやく魔法の発動が収まり、被害が地面に留まったことを確認してから、真っ二つにした男を見る。

 そこには、男の姿は既に無く、人の形をした灰があるだけだった。


 あーーあ、やっちまったな・・・


 素直な感想を胸に、シルビアの方を見る。


 結局、力の説明してなかったな・・・今度こそ怖がられたかな?


 俺は、シルビアを見詰めながら、惨劇の公共区画に佇んでいた。

本当は21話でイシュタルさん書けると思っていたのですが・・・

なんだか25話目くらいになりそうトホホ

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