↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華村花音の事件簿  作者: 川端睦月
百合の葯

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
84/92

百合の葯 ―2―


 それでね、と花音が続けた。咲の胸のうちを知ってか、いつもよりのんびりした口調で言う。


「チャペルの男のことは、僕も知らないんだ。ただ、彼が二階堂の仲間だという気がしたから、悪さをしないように見張っていたの」

「悪さ、ですか?」

「うん――二階堂とはちょっとした因縁があってね。決して良い因縁じゃないから、下手なことされたら困るなぁって」


 そうなんですか、と咲はうなずく。


 詳細を告げないのは、咲は知らなくていいことなのだろう。少し寂しい気持ちになる。


 とはいえ、仮に二階堂と結婚するようなことになった場合、花音とは微妙な関係になりそうだ。


「あの、でも、どうしてチャペルの彼が二階堂の仲間だって思ったんですか?」


 咲はふと気になり、尋ねる。花音はフロントガラスを見つめたまま、


「チャペルの席って聖壇から向かって左側が新郎の参列者、右側が新婦の参列者って決まっているんだけど。彼は右側――つまり、新婦側にいたの」と告げる。


「えっと、それが?」


 咲は意味が分からず、再び尋ね返す。


「考えてみてよ、咲ちゃん――新婦側に男の人が一人でいるって、微妙じゃない?」

「あ、たしかに……」


 言われて納得する。


 結婚式に一人で出席するほど新婦とは親密な関係なのか、と勘違いされてしまう可能性がある。普通なら避けるだろう。


「――でも、親族なら……」

「親族は前方の席に座るもの」


 花音は人差し指を立て、それを振ってみせた。


「僕だってギリだよ。元カレなんだから」


 戯けたように肩をすくめ、


「僕なら咲ちゃんがいなかったら、新郎側に座ってたよ」と笑った。


 それにね、と花音はさらに続ける。


「あの男が元カレだと仮定した場合、年齢的にちょっと厳しいかな、って思ったの」

「年齢的に厳しい……」


 咲は首を捻った。


「僕と文乃さんが付き合っていたのは、六年ほど前。別れたあと、彼女は亮介とずっと付き合っていた。だとすれば、彼が付き合っていたのは、僕より前のはずだよね」


 そうですね、と咲はうなずく。


「まぁ、文乃さんが浮気をしていたら、そのかぎりではないけど」と悪戯っぽい笑みを浮かべる。


 返答に困り、曖昧な笑みを返す咲を、花音はクスリと笑う。


「そうじゃないとして――彼、二〇代半ばくらいに見えなかった?」


 咲は花音の意地の悪い冗談に顔をしかめながら、はい、と返事する。それをまた花音がクスリと笑う。


「そうすると文乃さんと付き合っていたのは、彼が高校生くらいのときってことにならない?」

「ああ、たしかに……そう考えると、元カレの線はなさそうですね。文乃さん、年下は得意じゃなさそうですから」


 咲の言葉に、花音はキョトンとした顔をする。


「そう? でも、僕も文乃さんより年下なんだけど」


 バツが悪そうに言う。


「えっ? そうなんですか?」


 うん、と花音はうなずいた。


「ただ、さすがに十代とは付き合えないって、文乃さんが言ってたから。彼が元カレの線はないなって思ったの」


 そういった会話の端々に、まだ文乃に対する未練のようなものを感じる。咲はモヤモヤとしてしまう。


「だから、二階堂悟の仲間じゃないかと思ったの」

「それだけでわかるんですか?」


 咲はその気持ちを押し隠して相槌を打った。


「まぁ、メッセージカードでわざわざ予告めいたことを言ってくるし、なにかあるんじゃないかとは思っていたからね」


 それに、と花音は遠くを眺めるようにフロントガラスを見つめた。


「彼の座っていたベンチのチェア装花……」

「チェア装花?」


 咲はベンチの横に飾られたフラワーアレンジメントを思い出す。


 白い薔薇と百合を使った華やかなアレンジメントだった。


 特段変わったところは見受けられなかったが、花音にはなにか発見があったようだ。


 実際、そこからドローンが飛び出したのだけれど――


「あのチェア装花、アレンジ自体は完璧に真似できていたんだ」


 花音は感心したように言う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。