エピローグ
『行き過ぎた信仰心は身を滅ぼす』
それと同じように行き過ぎた想いもまた、身を滅ぼすのだろう。
――それでも自分には成し遂げなければならないことがある。
花音は目の前のディスプレイを眺め、ため息を一つついた。
「なんだ? ため息なんかついて」
アンティークの扉が開き、凛太郎が顔を覗かせた。
「また、君は……」
「だから、鍵をかけろって。無用心だぞ」
花音が言いかけるのを遮って、凛太郎が悪びれることなく告げる。それから、花音の横に歩み寄り、背もたれに手をかけた。
「――今日、彼女と会った」
ボソリと呟く。
「聞いたよ」
花音はディスプレイに目を向けたまま応じた。
「君、ひどい嫌われようだったよ」
右の口角を上げ、嫌味っぽい笑みを浮かべる。
「狙いどおりだ」と凛太郎は肩をすくめた。
「で、どうするって?」
「……入居するそうだ」
そうか、と返して、凛太郎は腕を胸の前で組んだ。
やはり、あの位の嫌がらせでは引かなかったか――
「残念だったな。わざわざ嫌な役を買って出てくれたのに」
別に、と凛太郎はソッポを向いた。
「本当のことを言っただけだ」
その言葉に花音は、そのことだけど、と凛太郎を見上げた。
「彼女に何を言ったんだ?」
「何を?」
凛太郎は片眉を上げた。花音が自分から彼女の話題を口にするのが珍しかった。
「そんなの、彼女に聞けばいいだろ」
「聞いても教えてくれなかった」
そう言ったその表情が、少し拗ねているようで、いつもより人間味を感じさせる。凛太郎は頬を緩めた。
「……貧乳」
「え?」
「貧乳って言った」
花音がキョトンとした顔をする。
「貧乳って……それ、セクハラだぞ」
ワナワナと花音は肩を震わせた。
「お前が貧乳には興味がないとも言っておいた」
続く言葉に、花音はパクパクと口を動かす。
「……なんてことを」
青ざめる花音をよそに、凛太郎は部屋をあとにしたのだった。




