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COLORS~魔王を倒す救世主たちに、正義の心がありません~  作者: 水嶋りこ
序章 灰色の世界

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序.終わりと始まり

(……もう、これで何度目だ?)


朱嶺(シュレイ)は焼け焦げた大地に膝をついた。

ひび割れた地面が、鈍い音を立てる。

舞い上がった灰が、ゆっくりと彼の肩に降り積もった。


何人の仲間を見送っただろう。


風が焦げた匂いを運ぶ。

空は燃えるように赤い。


彼はただ黙って、変わり果てた仲間の姿を見つめた。



魔王の封印が解けて約二年。

それはそのまま、朱嶺がすべてを失うまでの時間だった。


全世界から魔導士が集められ、各国の兵士も、最新の兵器も導入された。

だが、魔王の相手になれる者はどこにもいなかった。



——この時代には。




「……カラーズ」


乾いた声が、喉の奥からこぼれる。



カラーズ。

古の時代より、魔王を倒すと予言されてきた魔導士たち。


黒、白、赤、青、紫、緑。

特別な色を纏い、並の魔導士を遥かに凌駕する力を持つ六人の救世主。



『特別な色を持つ六人の救世主が、魔王を倒して世界を救う』


その言葉を残したのは、青年と同じ名を持つ古代の予言者だった。


彼は魔王と人との戦いについて数多くの予言を残し、世界はその通りに進んでいった。


ただ一つを除いて。



朱嶺の指が、灰を掴む。

力を込めたはずの指先が、かすかに震えていた。



彼の予言は、たった一度だけ外れた。


カラーズは世界を救わなかった。



救えなかったのではない。


“救わなかった“。



彼らは力を合わせることもなく、人々を守る意思も持たず——

それぞれが己の欲望を満たすためだけに戦い、自滅した。


勝てるはずの戦いだった。

残された記録がそれを証明している。



この景色を眺めながら、何度同じことを思っただろう。


もしも、彼らが力を合わせていたら。

もしも、彼らに世界を救う意思があったなら。


きっと、この地獄はなかった。



地面には今も花が咲き、

川には水が流れ、

人は地上で暮らし、

空は青く澄んでいた。


家族も、仲間も、生きていた。



『……頼む、朱嶺』


仲間の声が蘇る。


『必ずカラーズに会って……世界を救ってくれ』


朱嶺は、託された〈時の魔法具〉を強く握りしめた。


彼の使命は、この魔法具を使い、カラーズのいる過去へ飛ぶ。

そして、彼らに魔王を討たせることだ。


かつては大勢いた仲間は、もう誰もいない。


自分がやるしかない。



なのに気力も体力も尽き果て、立ち上がることさえできなかった。



どれほどの時間、そうしていただろうか。


「にいちゃん、だいじょうぶ?」


色を失くした灰色の世界に、澄んだ声が響いた。



◇



「にいちゃん!準備終わったよ!」

明るい声が、シェルターに弾んだ。


朱嶺は笑い、くしゃりと少年の頭を撫でる。


「よし。よく今日まで生き延びたな」

「にいちゃんのおかげだよ!」


屈託のない笑顔。



少年と出会ってから数ヶ月。

互いに支え合い、生き延びてきた。


だが、その生活も今日で終わりだ。


泥だらけの顔を拭き、綺麗な服に着替えさせる。


自分より一回り小さな手に、時の魔法具を握らせた。

その手は温かく、未来そのもののようだった。


「使い方、ちゃんと覚えたな?」

「うん!大丈夫!」

「カラーズに会えたらさ。『お前らいい加減に仲良くしろ!』って怒っといてくれよ」

「あははっ」


時の魔法具を使うのは、朱嶺ではなく少年。

何度も悩み、何度も考え抜いた末の結論だった。


「……ほんとに、気をつけろよ」

「うん。にいちゃんも。行ってくるね!」



魔法具が淡く光を放つ。

閉ざされた地下空間に、やわらかな光が満ちていく。


少年は光に包まれながら、旅立って行った。

かつて世界を救わなかった“救世主”たちの元へ。



——この世界に、色を取り戻すために。


 

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