表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/20

第20話 夜明け前の道

挿絵(By みてみん)

小屋の外で、アルドの靴が止まった。


若い下働きは、布の端をつまんだまま動けなかった。板の上に横たえられた少年の口元は、目を逸らしてしまえば何もなかったようにも思える。気のせいだと言えば、それで済むくらいの小さな動きだった。


けれど、布はたしかに持ち上がった。


風ではない。


「どうした」


年上の男が低く言った。


若い男は答えられなかった。懐の中で、さっきブラムから渡された包みが重くなる。


粗末にするな。


その言葉が、処刑場のざわめきより近くに残っていた。


若い男は、布をさらに少し上げた。


フィンの唇が、かすかに動いた。


「……まだ」


言葉にすると、年上の男の顔色が変わった。


「ばかな」


「動いた」


小屋の戸が開いた。


アルドが中へ入ってきた。


若い男は、反射で布から手を離しかけた。アルドはそれを見て、短く言った。


「離すな」


若い男の手が止まる。


アルドは板のそばに膝をつかなかった。近づきすぎず、フィンの口元と首元を見た。縄の跡の下で、喉が小さく鳴る。


部屋の中の誰も、声を出さなかった。


アルドは戸口に立つ憲兵へ目を向けた。


「治療所へ運べ」


年上の男が、息を飲んだ。


「しかし、これは」


「運べ」


同じ調子だった。


怒鳴ってはいない。けれど、二度は言わせない響きがあった。


命を助けるための命令にも見えたし、処理を間違えるなという命令にも見えた。若い下働きには、そのどちらなのか分からなかった。


アルドは続けた。


「外へ漏らすな。死体を移す時と同じにしろ」


若い下働きは、布を握り直した。


アルドの目が、若い男の懐に一瞬落ちる。そこには、ブラムから渡された包みが入っている。


「ブラムを治療所へ連れてこい」


若い男は顔を上げた。


「店の?」


「広場の脇にいる。少女と一緒だ」


それ以上、アルドは説明しなかった。


治療所は、詰所の裏手にある小さな建物だった。


白い壁の病院とは違う。怪我をした憲兵や、運び込まれた者を一時的に寝かせるだけの場所だ。扉は狭く、窓も高くない。薬の匂いと、濡れた布の匂いが混じっていた。


フィンは、布をかけられたまま運ばれた。


運んでいる者たちは、死体を運ぶ時と同じ顔をしていた。見物人に気づかれないよう、早足にもならない。口も開かない。


広場の脇では、ブラムがリルを抱えるようにして座らせていた。


リルはまだ台の方を見ている。


台の上には、もうフィンはいない。縄も人の背中に隠れて見えない。それでも、リルの目は同じ場所から外れなかった。


古い布は片方の腕から落ちかけている。短く直された袖は、さらに上へずれていた。喉から、途切れた声がこぼれる。


「フェ……」


「見るな」


ブラムは低く言った。


リルはブラムを見ていない。


見ていなくても、ブラムはそれ以上強く抱えなかった。力を入れれば、リルはそこで固まる。さっきから何度も前へ行こうとした体を止めたせいで、ブラムの腕にも布の感触が残っていた。


若い下働きが近づいてきた。


足取りは急いでいない。けれど、広場へ戻る気もないように、途中で一度だけ後ろを見た。


ブラムはそれだけで、口を閉じた。


「憲兵長が」


男は一度、リルを見た。


どう伝えればいいのか、分からない顔だった。


「治療所へ来いと」


ブラムの目が細くなる。


「何のために」


男はすぐには答えなかった。


広場のざわめきは、背中の向こうでまだ続いている。見物人は残っている。誰も、死体置き場へ運ばれた少年のことなど追っていない。


「まだ……動いてます」


それだけ言った。


ブラムは息を止めた。


リルは男の口元を見ていない。まだ、台の方を見ている。


ブラムは古い布を拾い、リルの腕に戻した。


「リル」


リルは動かない。


「来い」


言葉だけでは足りなかった。


ブラムはリルの前に回り、自分の胸を指した。それから、通りの奥を指す。治療所の方角だった。


リルは指の先を見ない。


ブラムは少し身をかがめ、リルに自分の口元が見えるようにした。


「フィンだ」


正しく呼んだつもりだった。


リルの目が、ブラムの口から通りの奥へようやく動いた。


「フェ……」


声は途中でほどけた。


ブラムは頷かなかった。助かったとも、生きているとも言わなかった。そんな言葉を、自分が先に持つのは違う気がした。


「行くぞ」


ブラムはリルを立たせた。


抱え上げるのではない。脇を支え、足が出るのを待つ。リルは一歩目で止まった。人の足や背中がまだ多い。足元に落ちた藁を見て、古い布を抱え直す。


ブラムは待った。


若い下働きも急かさなかった。


治療所の戸口に着いた時、リルは敷居の前で止まった。


扉の隙間から、濡れた布と薬の匂いが漏れていた。中では、大人たちが低い姿勢で動いている。


ブラムは戸を押した。


中にいたヘレナが、濡れた布を手に振り向いた。先に呼ばれていたのか、顔に驚きはなかった。


フィンは低い寝台に寝かされていた。


首元には、白い布が置かれている。その隙間から、赤黒い跡が見えた。唇は乾き、息を吸うたびに喉の奥が細く動く。


リルは動かなかった。


戸口の光の中で、ただフィンを見ていた。


フィンの目は閉じている。


起きてはいない。


けれど、胸元の布が、ほんの少し持ち上がっていた。


落ちる。


また、持ち上がる。


リルの口が開いた。


「フェ……」


フィンは返事をしなかった。


でも、死んだものの沈み方ではなかった。


リルは一歩、敷居を越えた。


ヘレナはリルを止めなかった。


近づきすぎる前に、寝台の横へ椅子を寄せる。座れとは言わない。ただ、倒れた時に受け止められる場所を作った。


リルは椅子には目を向けなかった。


視線は、フィンの乾いた唇から首元へ落ちる。


白い布の隙間に、赤黒い跡がある。


胸元の布が、かすかに上下していた。


リルはもう一度だけ、唇が動くかどうかを確かめた。


意味は、分からない。


縄の意味も、広場の意味も、大人たちが何をしたのかも、言葉にはならない。


ただ、前にはなかったものがある。


前にはなかった傷がある。


フィンは、いつものように起き上がらない。


そのことだけが、リルの中に残った。


ヘレナが水を含ませた布を、フィンの唇に触れさせた。フィンの喉が細く動く。リルの肩が小さく動いた。


ブラムは戸口の脇に立っている。


大きな体が、狭い治療所では邪魔になった。自分でそう思ったのか、少し横へずれる。


「生きてるのか」


声は小さかった。


「まだ」


ヘレナは短く答えた。


ブラムは目を閉じなかった。


閉じれば、広場の板と縄が戻ってくる。


若い下働きは戸口の外で立っていた。中へ入らない。けれど、去りもしない。


ブラムはその男を見た。


「包み」


男は懐へ手をやった。朝渡された包みは、形が少し潰れていた。


「まだ手は付けてない」


「なら、食ってこい。持ったまま立ってるな」


男は何か言いかけたが、やめた。紙包みを握り、頭を下げずに戸口から離れた。


リルはそのやり取りを見ていない。


ずっと、フィンの胸の布を見ていた。


夜のあいだ、治療所は何度か静かになり、何度か小さくざわめいた。


外では憲兵の影が戸の隙間を行き来する。詰所の奥で戸が開き、低く話す大人の肩が見える。水桶が運ばれ、濡れた布が替えられ、薬草の苦い匂いが強くなった。


リルは眠らなかった。


ヘレナが持ってきた小さな椀の水は、ほとんど減らない。ブラムが包んでいたパンは、小さな皿の上に置かれたままだった。古い布は膝の上にある。片方の袖は短く、もう片方の袖は長いまま、指先を隠している。


長椅子に残っていた細い金具は、ヘレナが布に包んで持ってきていた。


それはリルのそばに置かれている。


リルは時々、それに目を落とした。


それから、寝台へ戻る。


細い金具には、フィンの指が使った鈍い跡がある。けれど、そこにフィンはいない。寝台の上のフィンは、まだ声を出さない。


夜が深くなったころ、フィンの指が動いた。


リルは先に気づいた。


長い袖の中から出た指が、古い布を押さえる。椅子の端に座ったまま、少しだけ前へ傾く。


フィンの口元が動いた。


声はすぐには出なかった。


喉の奥が動く。


フィンの眉がわずかに寄る。


「リ……」


それは、言葉というより、喉に引っかかったかすれ声だった。


リルは瞬きをした。


もう一度、口が動いた。


「リル」


短い言葉だった。


でも、リルが見慣れた口の動きではなかった。


いつものように乱暴に切れる口ではない。人混みの中でも見つけられる動きではない。パンを置く時、道を指す時、少し苛立った時の顔ではない。


乾いた唇が、途中で痛みに引き戻される動きだった。


リルは立った。


古い布が膝から落ちかける。慌てるような動きではない。ただ、布が落ちる前に片方の腕で抱え直した。


寝台の横で止まる。


フィンは、目を開けていた。


起きているというより、眠れないまま目だけが残っているようだった。リルを見つけると、口を動かそうとした。


声はすぐには出なかった。


喉の奥がまた動く。


「リル」


今度は、少しだけ言葉になった。


リルは寝台に近づいた。


飛びつかない。泣きもしない。フィンの近くに行くまでに、床を確かめる。布の位置を目で追う。寝台の脚の手前で止まり、もう一度、首の跡へ視線が戻る。


リルの長い袖の端が、寝台の横へ垂れた。


フィンの指が少し動く。


つかもうとしたのではなかった。たぶん、いつものように袖を直そうとした。けれど、指は途中で止まった。


リルはその指を見た。


それから、自分の袖を見た。


長い袖の布が、フィンの指先にかすかに触れた。


フィンは目を閉じかけ、すぐに開けた。


「……いたのか」


声はほとんど削れた息だった。


リルは答えない。


口が少し開く。


「フェン……」


やっと、声が続いた。


正しくはない。


それでも、誰を呼んだのかは、そこにいる全員に分かった。


フィンは笑わなかった。いつもなら、違うとでも言いそうな顔をしたかもしれない。今は、声を直すだけの力もなかった。


ヘレナが水を差し出す。


フィンは少しだけ飲んだ。飲み込む時、喉が痛んだのか、肩が小さく動く。


リルはその動きを見ていた。


フィンは水から口を離し、薄く息を整えた。


「リル」


もう一度呼んだ。


今度は、呼ぶだけで終わった。


それで十分だった。


リルは寝台の横に座り込んだ。床に膝をつけ、古い布を抱えたまま、袖の端をフィンの指の近くへ置いた。


触れているか、触れていないか分からないくらいの距離だった。


ヘレナは灯りを少し下げた。


夜明け前、治療所の小さな窓に薄い青が差し始めていた。


外の詰所では、朝の支度をする憲兵の影が動いている。まだ人目は少ない。けれど、日が上がれば、ここも人が出入りする場所になる。


ブラムは戸口のそばで、紙を折っていた。中にはパンが入っている。大きな包みではない。固い端と、少し白いところの残った欠片。それから、水を入れた小瓶。


紙の上には、粉が少し落ちていた。


ブラムはそれも払わず、包みの中へ押し込んだ。


フィンは壁にもたれて座っていた。


立てないわけではない。けれど、立てばすぐに膝が落ちそうになる。首の白い布はゆるく巻かれている。隠すためというより、服の襟が直接触れないようにするためだった。


リルはその横にいる。


古い布を抱え、床の上に置かれた自分の長い袖を見ていた。片方だけ短い。もう片方は、何度も歩けばまた引っかかる長さだった。


ヘレナが戸口の方を見た。


「夜が明けます」


フィンは返事をしなかった。


ブラムは包みを持って、フィンの前へ来た。


「明日の分だ」


フィンはその言葉を聞いて、ブラムを見た。


礼は言わなかった。


言えば、喉が裂けそうだった。言わなくても、ブラムは包みをフィンの膝の横へ置いた。


「俺の店には来るな」


ブラムは言った。


声は冷たくなかった。


「顔を出せば、誰かが見る。俺が何を受けたかも、何を隠したかも、いずれ聞かれる」


フィンは目を伏せず、ブラムを見ていた。


ブラムは続けなかった。


それ以上は、説教になる。


ヘレナが、治療所の外にある詰所の庭へ目を向けた。


「ここにも、長くはいられません」


フィンは、奥歯を合わせた。


治療所には寝台がある。


けれど、戸口の向こうには憲兵の影がある。


教会には椅子がある。


けれど、椅子の横には帳面がある。


ブラムの裏口には鍵がある。


けれど、その鍵はブラムの店へつながっている。


病院の白い壁も浮かんだ。


高い窓。木の杯。同じ服。閉まりかけた戸の奥にあった、丸められた白い布。


あそこには屋根がある。


鍋もある。


リルが朝に粥をもらうことも、たぶんできる。


でも、白い壁の向こうには、リルの名を尋ねる大人がいる。


リルは答えられない。


答えられなければ、誰かが代わりに決める。


フィンはリルへ顔を向けた。


リルは白い壁の話など知らない顔で、フィンの口元に視線を置いている。首の布を確かめ、また袖へ戻った。


フィンは声を出そうとした。


喉が動いただけで、言葉にはならなかった。


ヘレナが水を差し出す。フィンは小さく首を振りかけて、痛みに顔をしかめた。受け取り、少しだけ飲む。


リルは、その飲み方を見ていた。


フィンは小瓶を返した。


「俺は」


声は掠れて、途中で折れた。


ブラムが口を開きかける。


フィンはそれより先に、もう一度言った。


「行く」


短い言葉だった。


それでも、部屋の中の空気が止まった。


ヘレナは問い返さなかった。ブラムも、どこへとは聞かなかった。


フィンはリルを見た。


リルは意味を拾った顔ではなかった。


ただ、フィンの口が動いたことだけを追っていた。次に、戸口へ視線が移る。青い光、ブラムの包み、ヘレナの布。その順に確かめる。


それから、自分の長い袖を見た。


袖の端は床についている。


フィンが直そうとして、できなかった袖だった。


リルは古い布を片腕で抱え直した。


もう片方の指が、長い袖の端へ伸びる。布をつまむ。うまく折れない。折ったところがすぐ落ちる。


フィンは手を出しかけた。


途中で止めた。


リルはもう一度、袖をつまんだ。今度は少し上を持つ。布が曲がり、斜めに重なる。きれいではない。片方だけ短い袖とは形も違う。


それでも、床からは少し離れた。


リルはその袖を見た。


次に、フィンを見た。


フィンは息を吸った。喉が痛むのが分かっていて、それでも名前を呼んだ。


「リル」


掠れた声だった。


リルは少し遅れて顔を上げた。


いつもの遅さだった。


フィンは壁から離れようとした。膝が頼りなく揺れる。ブラムが動きかけたが、フィンは先に包みをつかんだ。


支えられれば立てる。


でも、最初の一歩だけは自分で出したかった。


リルは、折った袖を気にしながら立った。古い布を胸に寄せる。床に置かれた細い金具の包みを一度見る。


ヘレナがそれを拾い、リルの古い布の上にそっと置いた。


リルはすぐには握らない。けれど、落としもしなかった。


治療所の戸が開いた。


冷たい朝の空気が入ってくる。


外の通りはまだ薄暗い。市場の人影はまだない。水桶を運ぶ者もいない。石の上に、夜の湿りが残っている。


広場の騒ぎを遠くから追ってきたのか、戸口の外、少し離れた角に、トマがいた。


壁にもたれているわけではなかった。立って、すぐ逃げられるような姿勢で、こちらを見ている。


フィンと目が合う前に、トマは顔をそらした。


足元に、小さな紙包みが置いてある。中身は分からない。パンかもしれない。何も入っていないかもしれない。ただ、そこに置いたまま、トマは近づいてこなかった。


フィンは声をかけなかった。


トマも、謝らなかった。


ヘレナが戸口の脇に立った。


「朝です」


リルの目が、ヘレナの口元へ上がる。


前に見た口の形だった。


教会の長椅子で、木椀の横で、布巾を畳むヘレナの口から出た言葉。


リルの口が少し開いた。


「あ……」


そこで止まる。


ヘレナは続きを待たなかった。


ブラムは紙包みをフィンの服の内側へ押し込んだ。いつものように乱暴だったが、首には触れないようにしていた。


「落とすな」


フィンは答えず、包みの上から服を押さえた。


それから、戸口の内側に、黒ずんだ小さな鍵を置いた。


ブラムの店の裏口の鍵だった。


ブラムがそれを見る。


「持ってろとは言ってねえ」


フィンはかすれた声で、短く返した。


「もう、使わない」


言い終えたあと、咳が出た。


リルがフィンの首元を見る。


フィンはごまかさなかった。ごまかす声が出なかった。


ただ、戸口の外を指した。


道は、町の端へ伸びている。


丘の方へ行く道だった。草が風で倒れ、また起きる場所。壊れた板が滑った斜面。リルが草へ指を伸ばした場所。その先に、町の外へ続く道がある。


安全かどうかは分からない。パンも少ない。フィンは前ほど速く歩けない。声も遠くへ届かない。リルも、知らない人影や動きで止まる。


それでも、戸口の内側へ戻る道だけは、もうなかった。


フィンは一歩出た。


足元が少し揺れる。ブラムの肩が動いたが、フィンは倒れなかった。


リルは敷居の前で止まる。


木の段差に視線が落ち、外の石へ移る。最後に、自分で折った袖の先で止まった。少し曲がったままの袖は、もう落ちかけている。


フィンは待った。


リルは片足を上げた。


敷居を越える。


古い布の上の小さな包みが、少しずれる。リルはそれを押さえた。長い袖は、歩くたびにまた落ちそうになる。


フィンはその袖を直そうとして、指を動かしかけた。


けれど、やめた。


リルは自分で折った。


曲がっていても、落ちかけていても、それはリルが自分で作った形だった。


フィンは前を向いた。


もう一度だけ名前を呼ぼうとして、喉の痛みに口を閉じる。


代わりに、少しだけ歩幅を落とした。


リルは遅れて、その変化に顔を上げる。


背後で、店の戸が一つ開いた。


誰かが朝の板を外し、桶を道へ置いた。帳面を抱えた男が、まだ薄暗い通りを市場の方へ急ぐ。


誰も、二人を呼び止めなかった。


誰も、追わなかった。


桶の底が石に触れ、帳面の角が朝の光を拾った。


朝の光は、まだ弱い。


町の門の向こうは、薄い灰色に沈んでいる。道には、夜の湿りが残り、二人の靴跡がゆっくりついた。


リルの袖は、歩くたびに少しずつずれた。


フィンの指は動かなかった。


夜明け前の道には、まだ二人分の足跡しかなかった。


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。


フィンとリルの物語は、ここで一区切りとなります。

この先も二人は、迷いながら、傷つきながら、それでも懸命に生きていきます。


最後までお付き合いいただけたこと、心より感謝しております。

本当にありがとうございました。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ