ティナの願いとケインの決意「学校を作ろう」
読まない本を届けろ作戦は、どれも大成功。
さて、次は・・・
ある日の夕暮れ、活気に満ちた店内で、ティナは感慨深げにケインに言った。
「ケイン様……私たち、もしかしたら『本』そのものを売っていたわけじゃなかったのかもしれないですね。『物語』や『知識』を、それを必要としている人々に、『届ける』お手伝いをしていた……そんな気がします」
ケインは、満足そうに微笑んで答えた。
「その通りですよ、ティナさん。情報も、言葉も、物語も、それがどんなに価値のあるものでも、伝わらなければ意味がない。相手にちゃんと『伝える』こと、そのための最適な方法を見つけ出すこと。それこそが、僕の信じるマーケティングの原点であり、その力の可能性なんです」
ケインの言葉に、ティナは深く頷いた。だが、彼女の瞳には、達成感と共に、新たな想いが浮かんでいた。
「でも……」
ティナは、店に並ぶ「読まない本」を見つめながら、ぽつりと呟いた。
「もし……もし、みんなが『文字を読む』ことができれば、もっとたくさんの本が、この本棚に並んでいる、本当の意味での『本』が、彼らの世界を、もっともっと豊かにしてくれるはずなんですよね」
その切実な言葉に、ケインの中のスキルが、再び強く反応した。
【課題:識字能力の欠如による知識アクセスの限界】
【潜在的インパクト:識字率向上による長期的な経済効果・文化発展度=ROI Sランク(最高評価)】
【阻害要因:教育機会の欠如/教育コスト/貴族階級による文化的・政治的抵抗】
【推奨アクション:持続可能な基礎教育インフラの構築】
(長期ROI Sランク……基礎教育インフラの構築推奨……)
ケインの脳裏に、新たな、そして途方もなく大きな挑戦のビジョンが浮かび上がった。
「……ティナさん。学校を作りましょう。この国に、誰もが読み書きを学べる場所を」
ケインのその言葉は、静かなソルノ書房に強い決意と共に響いた。
ティナは一瞬、息を呑み、その大きな瞳を潤ませた。彼女が心の奥底で、ずっと願っていたこと。しかし、それはあまりにも非現実的で、口に出すことすら憚られる夢だった。
「が……学校ですか? ケイン様、それは……」
感動と同時に、ティナの顔には深い戸惑いの色が浮かんだ。
「このラゼルシアで、庶民のための学校を作るなんて……そんなこと、できるはずがありません! 貴族の方々が絶対に許さないでしょう。それに、場所も、お金も、教える人も、何もかも足りません!」
彼女が挙げる現実は、あまりにも厳しく、重かった。識字率1%、貴族による絶対支配、知識へのアクセス制限。そんな国で「学校」など、まさに夢物語に過ぎないのかもしれない。
「ええ、真正面から『学校を作ります』と宣言すれば、間違いなく一日で潰されるでしょうね」
ケインは冷静に頷いた。
「だから、私たちは『学校』と呼ばない学校を作るんです。貴族たちの反感を買わず、それでいて、子どもたちが自然に学び、成長できる場所を」
学校と呼ばない学校!
楽しくなってきました!
明日も19時に、よろしくお願いいたします。




