「学校と呼ばない学校」ルーナ学舎計画
壮大な計画になってきました!
「学校と呼ばない学校?」
ティナは訝しげにケインを見た。
「そうです。例えば、表向きは『子どもたちのための、無料の軽食付き・読み聞かせ&知恵遊びの家』といった、慈善施設や娯楽施設のような形を取るんです。学びの場であることを、巧妙にカモフラージュするんですよ」
ケインは、前世の知識――社会的な抵抗が大きい新しい試みを、まずは受け入れられやすい別の顔を見せることで導入し、その価値を時間をかけて徐々に理解させていくという知恵――を応用したアイデアを語り始めた。
「名前も、『学校』や『学園』のような直接的なものではなく、もっと穏やかで、警戒されにくいものがいい。『ルーナ学舎』……月明かりのように優しく道を照らす学び舎、なんてどうでしょう?」
「ルーナ……学舎……」
ティナはその響きを口の中で転がした。
「場所は、まずは小さく始めましょう。このソルノ書房の隣にある空き家、借りられませんか? そこを改装して、ささやかな学びの場にするんです」
「あ、あの空き家なら、持ち主の方とは懇意にしていますし、家賃も安いはずです。でも、改装費や運営費は……」
「資金については、僕のこれまでの報酬の一部を使います。ティナさんも、少しなら協力できますか? それでも足りない分は……グランセリオのエリアナさんに相談してみましょう。『ラゼルシアでの子どもたちへの慈善事業』という名目なら、少額の支援は得られるかもしれません。あるいは、魔法研究所に『将来的な研究者育成のための基礎教育支援』として打診してみるのも手ですね」
ケインは次々と具体的な資金調達のアイデアを挙げていく。
「問題は、教える人ですが……」
「当面は、僕とティナさんでやるしかありません。ティナさんは『読み聞かせ』と『絵や物語』を担当してください。僕は、ゲーム感覚でできる『記号遊び』や『数字クイズ』などを担当します。目標は、読み書きを『勉強』として教えるのではなく、子どもたちが遊びの中で自然に『文字や数字に親しむ』環境を作ることです」
ケインは、自身の「見える化」スキルを教育に応用することも考えていた。
子どもたちの表情や反応から、彼らの「理解度」「興味関心」「集中力」などを数値化し、一人ひとりに合わせた最適なアプローチを見つけ出すことができるはずだ。
「そして、徐々にですが、文字を少しでも読める協力者……例えば、引退した商人の方や、元下級役人の方などで、子どもたちのために力を貸してくれる人を探していきましょう」
ケインの具体的で、現実的な、それでいて大胆な計画を聞くうちに、ティナの表情から不安が消え、再び希望の光が灯り始めていた。
「ケイン様。あなたとなら……もしかしたら、本当にできるかもしれない!」
こうして、ラゼルシアの未来を変えるかもしれない、秘密のプロジェクト――「ルーナ学舎計画」が、静かに、しかし力強く始動した。
ルーナ学舎計画、スタートです!!
明日も19時更新します。
どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m




