「読まない本を届けろ」作戦③:「絵と知識」の融合=実用インフォブック
作戦②:『聞かせる本』
音声ストーリーブックも大成功!
「物語だけでなく、『役に立つ知識』も届けましょう」
ケインは、農民や商人、職人など、日々の生活に役立つ情報を求めている人々がいることにも気づいていた。そこで、薬草の見分け方と効能、簡単な怪我の手当の方法、農作業に役立つ季節の星の動き、簡単な計算術などを、文字を一切使わず、「絵」と「図解」、そして「シンボルマーク」だけで構成した「実用インフォブック」を考案した。
ティナが、分かりやすく美しいイラストを描き、ケインが情報の構成とデザインを担当。
完成したインフォブックは、まさに「見るだけでわかる実用書」だった。これを市場などで販売すると、
「これは便利だ!」
「字が読めなくても、これならわかる!」
と、これまで本とは無縁だった層の人々が、こぞって買い求めた。
これらの革新的なアプローチの結果は、驚くべきものだった。
ケインがラゼルシアに来てから、わずか30日間で、識字率1%のこの国で、様々な形の「本」が、実に1000冊以上も売れたのだ。ソルノ書房には、連日、様々な人々が訪れるようになり、かつての静寂が嘘のように活気に満ち溢れていた。
この前代未聞の事態に、ラゼルシアの支配階級である貴族たちは騒然となった。
「なんだこれは!? 庶民どもが本をだと? いや、『本のようなもの』を手にしているというのか?」
「文字も読めぬ者どもが知識を持つなど、許されることではない!」
「あのソルノ書房とかいう不届きな店と、グランセリオから来たという怪しい男を、即刻取り締まれ!」
保守的な貴族たちからは、強い反発の声が上がった。
だが、その動きを意外な方面から制止する声が上がった。王国の魔法技術の研究を司る、「魔法研究所」から発せられた公式見解だった。
「情報へのアクセスの非対称性は、長期的に見て国家の成長を阻害する要因となりうる。文字の読み書き能力に関わらず、『有用な知識』が広く国民に行き渡ることは、むしろ推奨されるべきである。ソルノ書房の試みは、その可能性を示す興味深い事例と言えよう」
魔法研究の発展のためには、多様な知識や、それを活用できる人材の裾野の広がりが不可欠だと考える、合理的な研究者たちの声が、貴族たちの感情的な反発を抑えたのだ。
この魔法研究所の後ろ盾も得て、ティナの「ソルノ書房」は、王国から正式に「知識普及局」としての認可を受けることになった。
絵本型、音声型、インフォグラフィック型……あらゆる形態の「読まない本」が、ラゼルシアの国中で流通し始めるという、静かな、しかし確実な「革命」が始まったのだ。
知識普及局になっちゃったよーーー
続きは、明日19時に更新します。
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