「読まない本を届けろ」作戦①:『読む』のではなく、『見せる』本
文字が読めないなら、
文字を使わない方法で本を届ければいい!
「普通に本を並べていても、誰も手に取りません。ならば、本の『届け方』そのものを変えるんです」
ケインはティナに、具体的な戦略を説明し始めた。
「まずは、子どもたちからです。彼らの好奇心を刺激しましょう」
ケインは、ティナが在庫として持っていた簡単な物語の本を選び出し、その内容を「紙芝居形式」に再編集することを提案した。
ケインが台本の構成を考え、絵が得意だというティナが、物語の場面を生き生きとしたイラストで描いていく。文字は最小限に抑え、絵だけでストーリーが理解できるよう工夫されたページが、一枚一枚丁寧に仕上がっていった。
「……こんな形で物語を描くの、初めてです。でも楽しいですね」
「きっと子どもたちも、同じ気持ちになりますよ」
そして、次の日。
完成した紙芝居と、絵本のように仕立て直した数冊の本を積み、ケインとティナは手作りの「移動型読み聞かせ屋台」を引いて、広場や市場など、子どもたちが集まる場所へ繰り出した。
木製の小さな台車には、布製の屋根がつけられ、側面にはカラフルな手描きの看板が掲げられている。そこには、大きくこう書かれていた。
【絵で楽しむ ものがたり屋台】
「さあさあ、始まるよー! 楽しいお話の時間だよー!」
ケインが広場の真ん中で威勢よく声を張り上げると、最初は遠巻きに見ていた子どもたちが、少しずつ近づいてきた。
やがてティナが優しい声で物語を語りはじめると、場面の絵をめくるたびに、子どもたちの目が輝いていくのがわかった。
紙芝居の場面ごとに、子どもたちの反応は生き生きとしていた。声を上げ、笑い、時には息を呑み、そしてじっと見入る。
その隣では、連れてきた親たちも腕を組んだり、微笑んだりしながら様子をうかがっている。中には、紙芝居が終わるまで立ち去らずに見続ける大人もいた。
読み聞かせが終わると、屋台に並べた「絵で読む本」に、多くの子どもたちが手を伸ばした。
「これ、ほしい!」
「お母さん、買って!」
結果は明白だった。
親子連れが屋台に列を作り、絵本は飛ぶように売れていった。文字を読むためではなく、「絵で物語を楽しむ」ためのツールとして、「本」という概念が、初めて彼らの中に芽生えた瞬間だった。
子どもの心を掴んだ、ケイン!
次は、どうする?
明日も19時に更新します。
どうぞよろしくお願いいたします。




