行列のできる店、移転・拡大計画
今日から新章突入します!
「灯火亭ブランド」のソースとドレッシングは、エリアナ商会の強力な販売網に乗り、瞬く間に人気商品となった。王都の富裕層の間でも「あの路地裏の名店の味」として評判になり、その結果、「灯火亭」本体への注目度は、ケインの予想すら超える勢いで高まっていった。
もはや、店の前に行列ができるのは日常茶飯事。予約の電話は鳴りやまず、せっかく遠方から訪ねてきてくれた客を入店できずにお断りしなければならないことも増えた。
アンナとレオンは目覚ましい成長を見せ、リサも経営者としての采配を振るい始めていたが、それでも物理的な店舗の狭さとスタッフの数は、押し寄せる客の波を受け止めるには限界に達していた。
「嬉しい悲鳴なんだけど……このままじゃ、せっかく来てくれたお客さんに申し訳ないわ」
閉店後、ぐったりと椅子に座り込みながらリサが呟く。スタッフたちの疲労もピークに近い。
「やはり、本格的に店舗の移転・拡大を考えるべき時ですね」
ケインは、リサとスタッフたちに向き直り、切り出した。商品化の成功で得た利益と、高まる需要。今こそ、次の大きな一歩を踏み出すべきタイミングだった。
「移転……ですか?」
リサの顔に緊張が走る。アンナとレオンも固唾を飲んでケインの言葉に耳を傾ける。
「はい。もっと広くて、アクセスしやすい場所に移転し、より多くのお客さんを受け入れられるようにするんです。今のこの店の雰囲気……リサさんが大切にしてきた温かみは失わずに、でも、もっと快適で、少しだけ特別な時間を過ごせるような、新しい『灯火亭』を創るんです」
ケインの提案に、最初は戸惑いを見せていたリサたちも、彼の語る新しい店のビジョンを聞くうちに、次第に目を輝かせ始めた。今の店への愛着はもちろんある。だが、それ以上に、もっと多くの人々に自分たちの料理を届けたい、もっと素晴らしい店を創りたいという想いが、彼らを突き動かした。
翌日から、ケインとリサは新しい店舗の物件探しを開始した。
一番楽しい時期ですね〜
次回も明日19時にアップします。
どうぞよろしくお願いいたします!