エピローグ
王城の庭園で子供たちの相手をしてくれているサイラスを、少し離れた場所でお茶をしながら眺めているのはシャルロッテとカタリナだった。
カタリナは5歳になる娘と、やっと首が座ったところだという息子を連れて、黒竜に乗って里帰りしてきたところだ。
「息子が生まれた途端にさ、タリクが女の子は剣術なんて覚えなくていいって言いだしたんだ。それで大喧嘩になって、つい拳で殴ってしまった……」
そしてその勢いのまま「実家に帰るっ!」と言い放ち、子供たちと黒竜とともに家出してきたらしい。
なるほど、あの時見えた光景はこれだったのね。
そう思いながらシャルロッテはクスクス笑った。
竜騎士団長が黒竜とともに出奔――タリクが焦っている様子が目に浮かぶ。
原因が犬も食わないと言われる夫婦喧嘩なのだから、タリクが迎えに来て頭を下げるのが最も円満な解決法だと思う。
シャルロッテとハルバートの最初の子は男の子だった。
3歳になる息子は、父親譲りの燃えるような赤い髪をしている。
「明後日、ハルの戴冠式なのよ。どうせならそれをタリクと見届けてもらえないかしら。もともとこちらの戴冠式に招待されていたってことにすればいいじゃない」
「サイラスせんせい、こっち~!」
子供たちの楽しげな声が響いた。
神の手のひらの上で転がされ続けてたまるかと「抗い続ける人生」を選んでいるというサイラス・ドリュクは、相変わらず若い青年のような風貌だ。
その容姿だけで十分、理から逸脱していると思っているシャルロッテだが、そんなシャルロッテの左目も相変わらず対象者の不幸な未来を映し出している。
ただ、その頻度は確実に減ってきている。
巫女は結婚や出産をするとその能力を失うとよく聞くが、それかもしれない。
あら?この光景、どこかで……。
シャルロッテがふと思った時、サイラスの悲鳴が聞こえた。
「あ゛~~~っ!腰があぁぁぁぁっ!!」
【完】




