31話 別れと約束
あれから、2年の月日が経ち、私は10歳になった。
エリアスは11歳になり冬には12歳になる。
エリアスは2年の間に身長がすごく伸びた。
元々は少し高いくらいだったのに、今では頭1つ分は高い。
筋肉もしっかりついて、来たばかりの時の根暗王子の面影はゼロだ。
もはや別人レベルに明るくなって健康的になった。
最近は剣で手合わせもしているけど、勝敗が五分五分になってきて悔しいかぎり。
朝練で遅れずについてくるようになった頃、私との手合わせが始まり、
当時はほぼ勝てなかったのに。
私とエリアスが手合わせをしている間、
いつの間にかリヴィアお姉様もセドリックさんと手合わせをするようになっていた。
王宮騎士団に所属している人と手合わせなんて早々できるものではないからいい経験になっているみたいだし、
セドリックさんもお姉様が想像以上に強くていい訓練になっているようで、win-winの関係になっているようだ。
そんなお姉様も今年の春に13歳になったので、今はもうここにはいない。
王都にある屋敷に移動して王立魔導学院に通っている。
つまりエリアスも帰ってしまったら、子供は私1人になる。
私が入学するアイゼン騎士学校は15歳くらいから通うことになるので、王都に行くのはまだまだ先になりそう。
そんなぼっちになる私を心配して、
お兄様が通信機器の魔道具を作ってくれた。
コンパクト型で、表には紋章が描いてあり開くと蓋側に鏡が貼ってある。
真ん中に1つと周りには10個ほど魔石がセットできる箇所がある。
魔力を込めた魔石を真ん中にセットすると、その魔力の持ち主と会話ができる仕組みになっていて、
鏡には相手の顔が映し出される優れものだ。
つまり前世でいう携帯電話の簡易版みたいなものだ。
周りにはめることのできる魔石は電話帳みたいなもので、10個までストックできる。
ゆくゆくは魔力がない平民との連絡が取れるように改良していきたいそうだ。
こんな魔道具を15歳で作ってしまうお兄様は天才なのでは?と思ってしまった。
そして、この発明を機に魔塔からスカウトがあり現在3年生のお兄様だけど、
飛級で今年の春には卒業し魔塔の研究者として所属することになった。
ちなみに家族分のコンパクトを送ってくれたけど、
それを見たエリアスがすぐにお兄様に依頼をしていた。
とりあえず王家の分とロウェルさん、セドリックさんの分をお願いしたらしい。
お兄様は魔塔に入って早々王家からの依頼があり、お兄様の裏には強力な後ろ盾がいると噂になったらしく、
すぐに1人用の研究室がもらえることになり、周りの研究者が異様に優しく接してきて気持ち悪いと言っていた。
でも、1人用の研究室はありがたかったみたい。
あと、エリアスにパトロンになってくれないかと手紙を送ったとか……。
身内ながらちゃっかりしたお兄様である。
ちなみにエリアスは新商品ができたら優先的に回すことを条件にパトロンになったらしい。
エリアス曰く、将来有望な魔導士と関係が築けてラッキーだと言っていた。
いろいろ役立ちそうな魔道具を研究しているみたいで、良いものができたら送ってくれるみたいで、楽しみにしている。
なので、離れてはいるけど、お兄様やお姉様とすぐ連絡できるので、
そんなに寂しくはない。
あと、叔母様にも渡してデザインの相談がスムーズにいくようになった。
やっぱり、口で説明したほうがわかりやすいところもあるよね。
ローゼリアは今、2号店を作るべく空き店舗を探しているらしい。
来年中にはオープンまでもっていきたいそうで、その時には遊びに行きたいなと思っている。
2号店で販売するものの相談なども来ていて、けっこうバタバタ生活を送っている。
そんななか、エリアスが王都に帰る日がやってきた。
来年から王立魔導学院に通わなくてはならず、
冬になると雪が積もり、馬車だと帰るのが困難になるため遅くても秋になった今のうちに帰ることになった。
そもそも、遅すぎるくらいだ。
学院に行くための準備があり「さっさと帰ってこい!」と国王から何度も手紙が来ている。
その都度、無視をしているエリアスだけど、返信をしているロウェルさんは大変そうだった。
「2年間、世話になった」
玄関にて、私たち家族はエリアスのお見送りに出た。
「また、遊びに来てください」
「道中、お気をつけて」
お父様とお母様が挨拶をした。
すると、お父様が私の背中を押して前に出した。
「……エルナード領に来てくれてありがとう!楽しかった!王都に戻ったらなかなか会うこともなくなると思うけど、元気でね」
泣きそうになる気持ちを堪えて笑顔で伝えた。
「俺のほうこそ……セレナに会えて本当によかった。ここでの生活が人生で一番楽しい日々だった」
「王都に戻ってもちゃんと鍛えるんだよ!サボっちゃダメだよ?」
「ああ、わかってる!セレナには負けられないからな」
「……」
「……」
「それじゃあ、気をつけて帰ってね」
私は最後だし握手しようと手を差し出した。
するとエリアスは両手で握ってきた。
「あ、あのさ!通信機器で連絡してもいいかな?」
「うん、戻ったら連絡ちょうだい」
「わかった!すぐ連絡する!」
私は握っていない手をエリアスの手に重ねた。
「エリアス様、そろそろ出発しないと」
ロウェルさんが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「ロウェルさんもセドリックさんもお世話になりました!またどこかで!」
「こちらこそ、大変お世話になりました」
「王都に来た際は、また手合わせしよう」
ロウェルさんとセドリックさんが笑顔で答えてくれた。
名残惜しいけど、私は握っている手を離そうとした。
すると、グッと引っ張られ、気づくとエリアスの胸の中にいた。
「エ、エリアス!?」
「王都でかならず会おう、待っている」
エリアスは耳元でボソッというと離れて、
馬車に向かった。
馬車が出発すると、窓から顔を出して「本当にありがとう!」と手を振ってくれた。
私も精一杯エリアスに手を振り返した。
我慢していた涙もこぼれた。
これにて、第一部『エルナード領編』が終わりです。
第二部ですが、好評のようでしたら早めに続きを書いていきたいと思います。
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