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モブとして覚醒したからには 〜ヒロインはサポートキャラのようで何故か私が全ての出来事の中心にいる〜  作者: もーりんもも


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とんでもない失態をおかしてしまった

 最初にその正体を暴いたのはロレンツォだった。


「あれは――。グリンブルスティか?」


 何ですかソレ?

 ――ってか、ここからよく見えたね。


 それにしても博識なやつめ。

 出来る男なのか? まあ、出来る男だよね。


 私以外は、ロレンツォだけでなくシルヴァーノもナタリアちゃんも、学科の成績が優秀なのだ。

 四つの班の中で、何気にトップに君臨している第一班なのだ。



「おい! 冗談はよせ! そんなものがこの森にいる訳がな――ああっ!?」


 ええ? ちょっとシルヴァーノ。何なの?

 そのノリつっこみみたいな流れは。



「あれがそうなのですか? 初めて見ました」


 ナタリアちゃんはどこか感動すらしている?


 シルヴァーノとロレンツォも、「あんな大きなものだったのか」とか、「スピードについては定説と違う」とか、観察モードなんですけど。



「に、逃げなきゃ! ヤバいって!!」

 

 私が必死に訴えたのに、ロレンツォは、「なんで?」と、目で問いかけてきた。


 あんなスピードで獰猛な走りをしている大型生物が、危険でないとでも?

 ギラギラの目をした豚鼻の四足獣じゃないですか!


 うわー。これも一連の不幸ってやつですか?

 死神の飼い犬ならぬ飼い猪ですか?



「カッサンドラ。大丈夫よ」

「どこがっ!」


 ナタリアちゃん!

 ヒロインなのに、危機意識がなさすぎですよっ。



「落ち着け。アレの行く手にはマヌエル団長が待ち構えている。きっとすごい技が見られるぞ!」


 シルヴァーノは子どもみたいに目を輝かせている。

 うちのリーダーときたら、この状況を楽しんでいるの?




 突如、ダダーンと大きな音がして、巨大な火柱が上がった。


「うわっ」


 地面が揺れた。

 そして火柱が消えた後、巨大な猪が一瞬で丸焼きにされたことがわかった。



「おい見たか? 今の! なあ、ロレンツォ! あんなの魔物討伐隊に同行しないと拝めない代物だぞっ!」

「まあそうだな。王都であんな魔法を発動させたなんて話は聞いたことがない」


 さすがマヌエル君。だてに天才なんて呼ばれていないんだね。



「あのう」


 バツが悪そうに、ナタリアちゃんが私たち三人の顔を見た。


「マヌエル団長の唇を読むに、『至急こちらに戻れ』と。『直ちに合流しろ』とおっしゃっていますけど」


「おっと。勝手に離れたんだったな。よしっ。一班も本隊に合流だ。行くぞ!」


 無駄に生き生きするリーダー。

 面倒くさそうな割には、「そうだな」と返事をするロレンツォ。


 いつの間にか、まとまっている。



「じゃあ戻りましょう。もう怖くないでしょ?」


 そう言ってイタズラっぽく笑うナタリアちゃんに、私はコクンとうなずくことしか出来なかった。






「ようやく戻ったか。一班」


 怯えている生徒たちの前で、マヌエル君は、両腕を組んで仁王立ちで待っていた。


「はいっ。一班四人とも、ただ今戻りました」


 ここはリーダーのシルヴァーノに任せておけば大丈夫かな。



「お前らはアレに気がついて逃げたのか?」

「はいっ。カッサンドラが最初に勘づきました。俺たち三人は急に走り出した彼女の跡を追うので精一杯でした」

「ほほう。よく察知したな。だが――」


 マヌエル君の顔が、一瞬で鬼の形相に変化した。


「逃げるとは何事だっ!!」



 そうだった!

 仮にも騎士を目指そうという者が逃げるなんて。

 ああ、みんな、ごめーん。

 私のせいで、四人ともが逃げたみたいになっちゃった。



 他の生徒たちが見ている前で、私たちはマヌエル君からこっぴどく叱られたけど、ナタリアちゃんもロレンツォもシルヴァーノも、一言も言い訳をしなかった。

 誰も私を責めないなんて。

 ちょっと感動で涙が出そう。



「カッサンドラ! お前、まさかこれしきのことで泣いたりしないだろうな!」

「はいっ! もちろんです。マヌエル団長! もう死ぬほど感動して、みんなに抱きつきたいくらいですが、涙は流したりしません!」

「はあん?」


 え? なぜ三人に睨まれているの?


「一班以外は講義棟へ戻れ。一班の四人は、このままここで演習を継続する」


 ニタっと笑ったマヌエル君に、三人が、「ほらみろ!」という顔をする。

 ああ。なんかまずかったのね。重ね重ねごめん!!

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「つぎラノ」への投票ありがとうございました!

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