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2023/10/22

4812.


ピン、ポーーン。


「あ? 誰だ?」


ガチャリ。


「なんだみずき兄か。ウチの兄なら今いないぞ?」



4813.


「は? いない? あいつが休みに家にいないなんてことがあるのか?」


「どうせその辺の小学生とゲームでもやってんだろ」


「まぁそんなもんだろうな。とにかく上がるぞ」


「いや帰れよ」



4814.


「おや、崇君じゃないかい。ようやく美々香を嫁にもらってくれる気になったのかい?」


「残念ですがそれは無理です。美々香ちゃんは最低でも年収1200万は必要だそうなので」


「そうだぜ母さん? みずき兄はせいぜいが800万止まり。私の合格ラインには及ばないのさ」


「年収800万でも十分に優良物件なのを忘れちゃいないだろうねえ?」



4815.


「何言ってんだよ。母さん。そんじょそこらの優良物件で手を打ってたら悠々自適な日々は送れないだろ? 父さんがどうなったかを見ただろ?」


「それは言わない約束だよ」


「だからこそ言おう! 大手は年収が上がる! しかし! 上がるからこその高コスト! しかも親父は役立たずで年収800万になって1年で子会社へ! そこから更に1年で孫会社へ! そこで終わりと思いきや50歳を目前に早期退職!」


「そんな悲惨な話を友人のいる場でしないでくれないか?」



4816.


「大丈夫だみずき兄。お前は私の兄の友人ではあるが私の友人ではないから問題ない」


「そういう問題じゃないだろ。他人がいるところでそんな話をするな。反応に困るだろ」


「笑えばいいんだよ、そこは」


「本当に笑っておくれないかい、崇君」



4817.


「残念だが美々香ちゃん。俺は人の不幸で笑えるほど落ちぶれちゃいないんだ」


「私が落ちぶれてるって言いたいのか? まぁいい、せっかく来たんだ。いかにしてウチの兄とみずきをくっつけるか考えようぜ?」


「本当に頼むよ。なぜかその気になってるみずきちゃんでもないと涼太のやつがお嫁をもらえる気がしないからね」


「俺としては、あいつを諦めてくれないとみずきが嫁に行けなくなる恐れがあるんだが・・・」



4818.


「まぁそこはみずきの意思を尊重してやれよ。とにかく部屋に来い。作戦会議だ」


「あとは若いもんに任せるから、しっかりやっておくれよ」


「そこまで言うなら・・・お邪魔します」


「フッ、それでこそみずき兄だ」



4819.


「さて、作戦会議なんて言ったが、どうすりゃいいかなんて決まってる。みずき兄、お前が消えれば万事解決なんだ。消えてくれ」


「ふざけるな。みずきの意思を尊重するためになぜ俺が自分の意思どころか命を捨てねばならない」


「心配すんなよ。遺志は組んでやるから。最後に言い遺すことはあるか?」


「絶対にみずきの奴は幸せにしないでくれ」



4820.


「おいおいそれでも兄かよ。兄ってのは妹の幸せを一番に願うものだろ?」


「逆に聞くが美々香ちゃんの兄はそうなのか?」


「全く違う、な・・・」


「むしろ幸せを願われた方が気持ち悪いだろ?」



4821.


「なるほど、みずき兄の言い分はわかった。だが、みずきが嫁に来た方が面白いから消えてくれ」


「断る。消えるぐらいなら妹が生涯独身になった方がマシだ」


「そこは“消えた方がマシ”って言うのが戦闘民族だろ?」


「誰が戦闘民族だ」



4822.


「今お前が戦闘民族じゃないと言うのなら、なれ、戦闘民族に」


「なれる訳ないだろうが」


「大丈夫だ。生まれてすぐ宇宙船に乗せられ下等生物ばかりの星に送られるだけの簡単なお仕事だから」


「それのどこが簡単なんだ?」



4823.


「そうだな、その後のハードルが高すぎた・・・レーダー持ってやって来た女子高生と旅に出て、仙人と修行したら悪い奴らをとっちめたりしなきゃいけないんもんな」


「“民族になる”ってだけなら別に冒険は要らないんだがな。逆に民族になるための血の方がハードルだ」


「大丈夫だ。血なんてなくても戦闘民族にはなれる。あの地球人のように」


「どの地球人だよ」



4824.


「というかもはや俺がいま宇宙人と話してる気分なんだが?」


「私が宇宙人、か・・・中々にシャレたセンスをしているじゃないか」


「俺もう帰っていいか?」


「自分から遊びに来といて何言ってんだよ」



4825.


「母さん、結論は出なかったぜ」


「そうなのかい? だったら崇君を帰す訳にはいかないねえ」


「え・・・」


「そういうこった。帰りたかったら真面目に考えるんだな」



4826.


「なんと、いうことだ・・・」


「しかし、そんなみずき兄に1つ、解放される道を用意してやろう。これが全てを終わらせる唯一の道なんだ。なぁ母さん、みずき兄が消えるだけでみずきが嫁に来るとなったら、どうする?」


「何を言ってるんだい。それだけでみずきちゃんが嫁に来てくれるんなら今すぐそうしてもらいたいに決まってるじゃないか」


「しまった! この人美々香ちゃんの親だった!」

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