2023/07/17
4696.
「それじゃあ、始めるぞ・・・」
「ああ」
「本当に、やるんですね・・・」
「お待ちかね! 第1回! ドッロドロ! 男だらけのボーイズトーク大会!」
4697.
「何が“お待ちかね”なんですか! ドッロドロなんて名前を付けておいて!」
「分かってないな服部。男だけでボーイズトークをやったらドッロドロになるに決まってるだろう? 女子がいると言えないことを言えるから楽しいんじゃないか」
「まず“男だらけじゃないボーイズトーク”って何なんですか」
「そこからかよ。ったく・・・崇、説明を頼む」
4698.
「俺かよ。まぁいい。例えばボーイズトークの定義を、下ネタOK差別用語OKとにかくなんでもOKな下世話な会話とする」
「なんですかその定義・・・」
「そうするとだ、たまにはその手のトークをしたいけど女子同士では中々できないって女子が参戦することもある」
「“参戦”ってなんですか・・・」
4699.
「細かいことは気にするな。話を続けるぞ。女子が自ら入ってくる分には気兼ねなど要らないのだが、たまに女子がボーイズトークに飛び込むと、“たまに”のはずなのに下ネタ好きな奴と思われてしまい、その女子は男どもの前ではずっと下ネタ好きを通さざるを得なくなってしまう。しかしそれはもう接待の領域であり、せっかくのボーイズトークなのに気疲れしてしまう。そして男どもは、その女子が付き合いでその場にいるだけにもかかららず、女子と下ネタトークをしている事実に浸る・・・こんなのが、ボーイズトークにあっていいと思うか?」
「説明が長いです」
「女子がいると、話そのものよりも“女子と一緒に下世話な話をしている事実”を楽しんでしまう。だから女子抜きでやらないといけないんだ」
「分かりました。が、そもそも僕らに仲のいい女子なんていませんよね?」
4700.
「おい服部それは禁句だ。ボーイズトーク開催記念で恩情を与えるが・・・とにかく女子がいると真にボーイズトークを楽しむことができない。雷太もいいな?」
「ばぶ!」
「女子がいるとできないドッロドロな話をするのに2歳児までいるんですか・・・」
「しょうがないだろ。女子どもが“ガールズトークするから預かって”って言って来たんだから」
4701.
「別にガールズトークぐらい雷太君がいてもできますよね?」
「2歳児がいると言えないことも言うんだろう。ガールズトークが上品とも限らないからな」
「こっちも絶対2歳児がいると言えないようなことがありますからね?」
「だが雷太は男だ。ボーイズトーク側に託された」
4702.
「まぁ、部室を追い出されなかっただけマシだと思おう。女子の方が喫茶店かどっかに向かったからな」
「言うてあいつらにガールズトークができるのか? 佐藤純はともかくとして、残りのメンバーがクズ・腹黒・サバ・超戦士だぞ?」
「今日はクズ担当の美々香ちゃんがバイトだそうだ」
「一番の足枷がいないのは何よりだがそれでも無理があるメンバーだと思うぞ?」
4703.
「ちょっと待ってください満月先輩さっきの“サバ”ってまさかお嬢様のことですか?」
「当たり前だろあいつ以外に誰がサバなんだよ」
「まるでお嬢様がサバみたいな言い方はやめてくれませんか?」
「サバ以外に表現のしようがないほどにサバだろあいつ」
4704.
「落ち着け2人とも。ボーイズトークが始まらんだろう。2歳児だってこんなに落ち着いてるのに」
「ばぶ」
「すみません、僕としたことがついカッとなって。満月先輩じゃあるまいし」
「あ? ケンカ売ってんのか服部?」
4705.
「だからやめろ。ったく、・・・じゃあもうこの流れで服部の部長に対する想いから聞こうじゃないか」
「あいつのどこが気に入ったんだ? やっぱり顔か? さすがに結構いい方だよな。体型もいい方だが俺的にはもうちょっと胸が出てて欲しいな」
「お嬢様になんて目を向けてるんですか!」
「言っただろ? これはボーイズトークだって」
4706.
「やっぱりボーイズトークの定義を変えるべきです! 男だけでトークをすればどんな話題でもボーイズトークのはず! 必ずしも下世話な話をする必要はありません! もっと自由であるべきです!」
「男に自由を与えたらこういう話にしかならないんだよぉ!」
「僕はもっと健全にお嬢様への愛を語りたいんです!」
「下世話な話こそが健全なんだよタコがぁぁ!!」
4707.
「ことあるごとに叫ぶな」
「でも服部が!」
「満月先輩が!」
「分かったから落ち着け。それぞれから話を聞こうじゃないか。ネタが部長なんだから、まず服部な」
4708.
「お嬢様への愛、それを語ればキリがありませんよ。まずは、あの麗しいお姿・・・」
「結局顔かよ。浅はかな奴め」
「仕方ないでしょう人間には美的感覚が備わっているのですから!」
「話が止まるから茶々を入れるな涼太。服部、続けろ」
4709.
「サバの全てを信じているあの瞳、ただ歩くだけで優雅にゆらめく黄金色の髪、下品さを一切感じない細身のお体、鋭くもどこか優しくしなる手のお指、一歩一歩交差するたびに“美”を表現するおみ足・・・そして僕のような庶民にも分け隔てなく接して頂く慈しみと、鼓膜の寿命を延ばす安らかなお声・・・ああ、お嬢様はどうしてお嬢様なのでしょう」
「おいコイツ壊れてんぞ」
「この壊れっぷりもボーイズトークっぽさを出してると俺は思うがな」
「ばぶ、ばぶばぶばぶるばぶりんぶぅ」
4710.
「雷太は何て言ったんだ? 佐藤純がいないと分からんな」
「安心しろ。こんなこともあろうかと、あいつから翻訳の全てを学んで来た」
「やるじゃないか。で、雷太は何ていったんだ?」
「“なるほど、これがボーイズトーク。この変態的なまでの愛情が、男の通る道か”」
4711.
「いや服部はかなり歪んでる方だからな? 普通は顔と胸と尻しか見ないし裸を想像するし、恥じらう姿まで想像する!」
「そんなのも極端な例です! 雷太君はこんな男子高校生になっちゃダメですからね!」
「9割以上はなっちゃうんだよなぁ・・・」
「いいか? 雷太。人生の先輩が教えてやる。女に興味ないフリなんかしても良いことは1つもないからな?」
4712.
「2歳児に何を吹き込んでるんですか明星先輩・・・」
「人生で2番目に大事なことだ」
「1番目は何ですか?」
「友達は選べ」
4713.
「確かにそうですね・・・満月先輩のような人が友達だとこっちまで同類だと思われてしまいそうです」
「何言ってんだよ。お前も根は女に飢えてるクセに。口では“お嬢様とお話できるだけでも満足”とは言っても、もっとお近づきになりたいだろ? 抱きついてきて欲しいだろ? 服を脱いで欲しいだろ? 向こうからも愛されたいだろ?」
「失礼ですね! 僕はそんな本能しかないサルではありません! 人間には、会話をして心を通わせるという知能があるんです!」
「でも体を重ねることで心を通わせたいとも思うだろ?」
4714.
「何を言ってるんですか! 僕がお嬢様にそんな、ことを求め・・・っ、くっ、ぶほ・・・っ!」
「ほら想像しただろ? サバ令嬢が“服部君!”とか言いながら駆け寄って来て、両手をお前のみぞおち辺りに当てながら言うんだ、“抱きしめて・・・”とな。そこで戸惑うお前だが、更にサバ令嬢が制服のボタンを外しながら追い打ちをかける。“わたくし、服部君が・・・服部君のものになりたいですわ・・・”」
「お、おじょうさ・・・ぶぼほぉっ・・・!!」
「ハッ、その程度で鼻血とは、何が愛だ」
4715.
「分かっただろ服部? どんなに取り繕っても、俺たちは女に誘惑されたらオチるサルなんだ」
「くっ、悔しいです・・・」
「さすがは涼太、このボーイズトークを限りなくボーイズトークにしている。とてもじゃないが、部長本人の前でできることじゃあない」
「ばぶ、ばぶばぶばぶばぶ!」
4716.
「そうだな雷太。次は大本命、涼太の奴の好みを聞こうじゃないか」
「任せろ。まず、年下なんて論外だ」
「この間ゲームの年下キャラを好きになってしまったのではなかったのですか?」
「黙れ! 思い出させるな! くっ・・・!」
4717.
「まだ忘れられないのか・・・服部も、余計な茶々を入れるな。こいつがどんな下品な言葉を発しようと最後まで聞くんだぞ」
「しょうがないですね・・・」
「年上の何がいいか。まず、その体。年上としての魅力、そしてそこから生まれる余裕と包容力。それらが滲み出るから外見だけで分かる、“この人に愛されたら幸せになれるだろう”とな。やはり俺はスレンダーよりもグラマラスを求めたい。あの柔らかい体で包まれることこそ男の歓び。これでいいな?」
「よく恥ずかしげもなくそんなことが言えますね・・・」
4718.
「心配すんなよ服部。大抵の女には、男はこんなもんだとバレている。それを表に出して言うか言わないかの差でしかない」
「わざわざ言わなくてもいいという話なんですが」
「それを言うためのボーイズトークだろう? たまには吐き出さないと、溜まってしまうからな」
「強引に言わされてもちっともスッキリしませんでしたけどね・・・」
4719.
「よーし最後は崇だな。お前は確か、年上派というところは俺と同じだがスレンダーの方がいいんだったよな」
「ああ。ウチは風呂に姿見があるからよく分かる・・・俺は比較的細い方の部類に入るのだが、脱いでみると、意外とズングリしている。つまりだ、服を着てる分には“ぽっちゃり”で済む程度の人でも、脱ぐと贅肉が目立ってしまうという可能性が否定できない」
「なん、だと・・・!」
「実のところ、部長ぐらいの細さじゃないと男の理想とは程遠いものになるだろう」
4720.
「くっ、しかし! 水着のグラビアとか、素人が上げてる写真ですらグラマーと細身を両立しているじゃないか!」
「水着の力なんじゃないのか? ぶっちゃけ男でも、パンツ履いてるかどうか随分と体型の印象が変わってしまう。脱ぐとちょっとブヨッってなる方向にな。第一、わざわざ水着姿をネットに上げるぐらいだ、元から自信がある人のものしか俺たちが見ることはない」
「じゃあどうやって俺はこの夢を叶えればいいんだ!?」
「知るか!!」
4721.
「とにかく涼太、お前は自分自身の、服を着てる時と脱いだ時の姿を鏡で見ろ。それでも、ちょっとぽっちゃりでも良いというのなら、俺は止めない」
「くっ、まさかこの俺が妥協を強いられるとは・・・!」
「一度も彼女ができたことない身で何を言ってるんですか・・・」
「この手の奴は、女というものを自分の中で神格化してるから彼女ができないんだよ。ウチの妹で妥協しておけばいいものを」
4722.
「明星さんも、性格はともかくとして見た目はそれなりですからね。クラスの男子でもたまに話に出ることはありますよ。まぁ、明星さんの妹という事実と、体型の方も満月先輩の好みには合わないかも知れませんが」
「ああ、はっきり言って論外だ。もし兄貴がいなかったら危なかったが」
「さっきは妥協なんかしない的なこと言ってた割にあっさり覆すんですね」
「男は誘惑されたらあっさりオチるサルだって言っただろ? 間違いなくそっちが一番に俺を支配する」
4723.
「そこまで潔く言われるともう何も言えなくなってしまうんですけど」
「それがボーイズトークってもんだ。本来なら、よくつるむ女子の中で誰がいいとか、誰の胸がいいとかいう話になるんだがな」
「“誰がいい”の中に体型も含まれるはずなのに何故わざわざ分けたのかは置いておくとして、僕たちの共通の知人で言えばこの部活に限られてしまいますからね・・・」
「必然的に、どっちかの妹かサバ令嬢ということになってしまう」
4724.
「なんだかんだ言って、ボーイズトークの対象になるような奴がいないよな、ウチの部は」
「うん、なんかそういう目で見る気になれない」
「健全でいいじゃないですか。3年生でグラマーな先輩が来たら荒れますよこの部・・・」
「荒れるのはウチの妹だけだがな」
4725.
「ばぶ! ばぶばぶばぶーばぶ!」
「おっと済まない雷太。ボーイズトークに盛り上がり過ぎて蚊帳の外に出してしまったな」
「ばーぶばぶばぶばーぶっぶぅ!」
「はぁ? 本気かよそれ」
4726.
「なんて言ったんだ雷太の奴?」
「“僕も、早く高校生になって女の子に興味を持って下世話な会話をしたい”ってさ」
「まぁ2歳児だとまず女に興味を持つところから始めないといけないからな」
「まだ始めなくていいですからね?」
4727.
「ばーぶばぶるばるぶばぶるばーぶぅ」
「まぁそうだろ。今の段階でさっきの俺たちの話に共感できるなら、そっちの方がまずい」
「俺的には、将来が見込めるとも言えるけどな」
「碌な将来になりませんよ2歳の段階で女子の体型がどうとかって言い出したら」
4728.
「しっかし部員が男女3人ずつで、浮ついた話のひとつも出ないとはなあ」
「うち4人が兄妹×2だからな」
「とは言え何かあってもいいだろ。佐藤純と毛利だってたまに来るんだし」
「あの2人もなんか違うんだよなぁ・・・」
4729.
「贅沢言い過ぎなんだよ涼太は。身近な人から考えろって言うだろ? ウチの妹が無理なら部長になってしまうが」
「僕としては、お嬢様に興味を持たれないのは複雑ですが、余計な虫が寄り付かない方がいいですけどね」
「いやぁあいつにも興味湧かないなぁ。でもあいつが誰かに惚れて“こんなはずでは・・・!”とか慌ててる姿は見たいよな」
「そ、そんな、お嬢様の心が別の誰かに向いてしまうなんて・・・! でもそんな可愛らしいお嬢様も見たい・・・くっ・・・!」
4730.
「いきなり変な葛藤始めんじゃねぇよ。でもあいつまだ16歳のクセにどこかスレてるとこあるからなぁ」
「なんせ大手社長のご令嬢だ。幼少期から、見たくないものをたくさん見て来たんだろう」
「その時点で社会の闇が知れるんだがな」
「その辛い日々を乗り越えて、今の麗しいお嬢様があるのですね」
4731.
「てなワケで崇、この際作り話でもいいからサバ令嬢を誰かに惚れさせて楽しもうぜ」
「なんで俺が」
「そもそもお嬢様をそんなくだらないことに・・・くっ、でも見たい、想像でもいいから・・・!」
「お前まで何言ってんだよ服部」
4732.
「はい決定。やっぱさ、この作品的にサバ令嬢に恋愛要素は入れらんないから、誰かの作り話の中でやるしかないんだわ」
「いきなりのメタ発言はやめろ」
「大変なんだぞ? 恋愛要素抜きでコメディを続けるの」
「知るかよ」
4733.
「俺に物語は作れない。服部は多分途中で妄想が爆発するか“お嬢様が誰かに恋している事実”に耐えられなくなる。お前しかいないんだ」
「俺が作ったって大した話にはならないぞ?」
「構わん、やれ。それじゃあ行くぞ。次回、満月美々香と愉快な仲間たち外伝、“サバ令嬢の初恋”。デュエルスタンバイ!」
「デュエルすんなや!!」




