2023/06/04
4569.
「友よ!」
「友よ!」
「・・・せーのっ」
「「ジューン!!」」
4570.
「いきなり叫ばないでください。他のお客様のご名作です」
「これくらいイイじゃないですか吉野せんぱぁ~い」
「お客様、勤務中の従業員への私語はご遠慮ください」
「今日私がシフトなしで客で来てるからって徹底してんなこの先輩・・・」
4571.
「とゆーか普通のお客さんに対して以上に素っ気なくない・・・? ここの牛野屋の店員さんこんな感じだったっけ・・・?」
「そんなはずはない。何せあの吉野先輩だからな。この私の接客をあそこまで上達させてくれた先輩の姿ではない・・・」
「ミミりんの接客ってそんな上達してたっけ?」
「バカ。それを言うな」
4572.
「でも元からそれなりに接客できてたよね? 少なくとも、今の先輩の姿よりは・・・」
「・・・・・・。はい、かしこまりました。ナミいっちょーう」
「うーん、何だか覇気に欠けるな。他の客には私に対してよりマシだが、知り合い相手だと取り繕うのも面倒になってるって感じだ」
「何があったんだろう?」
4573.
「さぁな。どうせオトコ絡みだろ。3日前同じシフトだった時は普通だったんだが」
「この3日間の間に失恋したとか・・・」
「オトコ探しのために牛丼屋でバイト始めたぐらいだから彼氏はいなかったはずだが・・・」
「狙ってた人にフられたとか?」
4574.
「おい純。なんかアドバイスしてやれよ。お前も5組の鈴木にフられたばっかだろ?」
「関係ないよ! 第一アタシがフられたのは苗字が佐藤ってありきたりだったのが理由だし、吉野だったらどれほどよかったことか・・・」
「お客様。当店内で恋愛関係の話は控えて頂きますようお願いします」
「「理不尽!!」」
4575.
「そんな・・・牛丼屋でガールズトークできないなんて・・・一体私らはどこでガールズトークすればいいんだ!?」
「ぶっちゃけどこでもできるっちゃできるけどね・・・」
「しかし今回は吉野パイセンの話・・・本人を抜きにして話す意義がどこにある?」
「それこそ本人のいないところでやるべきだと思うんだ?」
4576.
「・・・お客様? 当店に無関係な話はしないで頂けますか?」
「がっつり“当店”には関係のある話なんスよセンパイ・・・」
「なんで、なんで・・・“牛丼屋でバイトしてるような女とは付き合えない”って・・・」
「あー・・・・・・。ドンマイっす」
4577.
「カレシ候補を探すために始めたバイトが仇になっちゃったかー。ここは同じお店でバイトしてるミミりんが慰める時だね!」
「しょうがないなあ。・・・じゃあこれはどうだろう。センパイが探すべきは、一緒に牛丼屋とかラーメン屋に来てくれるような男ッスよ。そこでバイトしてる女はNGなんてヤツ、こっちから願い下げでしょう?」
「でも。その人ともこの店で会った・・・」
「ガチで客と付き合う寸前にまで発展したのかよ」
4578.
「そこんところを詳しく! 最初に声を掛けたのはお姉さんから? それともお客さんから?」
「純ってたまにブッ込んだ質問するよな・・・」
「先に声を掛けたのは向こうの方・・・だってこっちは店員だから、お客様にナンパなんてできない・・・」
「こういや結構真面目な人だったなこの人・・・」
4579.
「んー、このご時世に声掛け待ちだけでカレシGet! は難しんじゃないかなー」
「なお、当初はバイト仲間の方から探す予定だった模様」
「で、オジサンしかいなかったんだね・・・」
「客もオッサンばっかだけどな・・・今日はチラホラ若い人もいるが」
4580.
「まー同年代が来たとして、牛丼屋でバイトしてる女に声を掛けるかと言うとビミョーだな」
「でも掛けてもらったんですよね! おねーさん♪」
「うん・・・向こうも別れたばっかりだったみたいで・・・でも結局、男1人じゃどこにも行けないから都合のいい女友達ってことだったみたい・・・」
「泣けるぜ・・・」
4581.
「ちょっと! 暗いよ! ただでさえ雨続きなんだから明るい話題にしようよ!」
「じゃあ純が5組の鈴木にフられた話か?」
「それのどこが明るいの!?」
「他人の不幸は牛丼よりウマい。いま傷心中の吉野センパイにはちょうどいいだろ?」
4582.
「それを言ったらミミりん実は先輩の不幸を楽しんでるってこと?」
「ノンノンノンノン。そんなことで楽しめるはずがないだろ? そこに友人の不幸をぶつけて慰めるってシチュが生まれて初めてを楽しめるんだよ」
「余計サイテーだよ!」
「人として最低な行い・・・これこそが最高に楽しいんだ、友よ」
4583.
「それはそうと、こんな所でこんな話をしてたら、他の客には私らの個人情報筒抜けだな。1人の奴はもちろん、2人組もテキトーな会話しつつこっちに耳を傾けててもおかしくない」
「私と満月さんのお友達はフられて彼氏がいないことが露呈してしまったしね・・・」
「そして、ミミりんは話題にするまでもなくカレシがいないことがわかる・・・」
「ぶん殴るぞ友よ?」
4584.
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・誰も、声を掛けて来ない!」
4585.
「何故だ! 私はともかく純やセンパイはナンパされてもおかしくないはず!」
「誰もこっちを向いてないのに哀れみの目を向けられてる気がして心が痛い!」
「落ち着いてくださいお客様! 人は、あなたが思ってるほどあなたのことを気にしてません! 誰も私たちに興味がないんです!」
「だったら余計にショックですよ!!」
4586.
「困ったもんだな・・・牛丼屋で堂々と彼氏いない宣言してるのに誰もナンパして来ない。これが、私たちが目指した未来だと言うのか?」
「こんな話をしてたら余計に声掛けにくくなっちゃうよ・・・?」
「しょうがないですよお客様。もはや草食系なんて言葉すら使われなくなるほどに消極的な男子が多くなったんですから」
「どんな草食系でも牛丼だけは食いに来るってぇのにな・・・」
4587.
客A(あそこの店員と女子高生、いま彼氏いないのか・・・)
客B(声を掛けたらワンチャンあるか? なんか期待してるっぽいし・・・いやいや、実際声掛けたら引かれるオチだ)
客C(いや~牛丼屋に女子いると和むわ~)
客D(花より団子? そんなことはない。俺は吉野ちゃんを拝むためにここに来てるんだ。牛丼などついでに過ぎん)
4588.
客E
とこ、とこ、とこ、とこ。
客E「あ、あのー・・・」
「えっ、あっ、はっ、はい!」
4589.
「キタ! 吉野パイセンのターン! わざわざこっちまで歩いてくるとは・・・! 牛丼屋にも肉食男子は実在したんだ!」
「なっ、なんでしょう! 私でよければ何なりと・・・!」
「そろそろ注文したいんスけど、いいスか・・・?」
「「「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」




