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2023/02/12

4318.


「へっ、へっ、・・・ぶえっくしょい!」


「よぅ兄。2週間の職場体験学習はどうだったか?」


「何が職場体験だ。こちとらサバハーモニーの工場の冷凍庫内で働かされたんだぞ。毎日12時間も!」


「お前がサバハーモニーとセブンティセブンの提携商品の案件を凍結させちまったからだろ?」



4319.


「だいたい、12時間つったって休憩もあるだろ? それで風邪なんか引くなよな」


「それは体験してから言え! 休憩を差し引いても4時間はぶっ続けでマイナス18℃の冷凍庫なんだぞ! 4時間作業、1時間休憩、4時間作業、1時間休憩、4時間作業、そして10時間の自由時間! これがどんなに苦痛だったか分かるか!?」


「なんだよ10時間も自由なんじゃんかよ。それでよく音を上げられたもんだぜ」


「その10時間で何ができると思う! 晩飯食った後は石に囲まれた部屋にゴザと毛布だけ! 携帯はもちろん没収! 外出は許可されているが一番近い建造物は10キロ先のコンビニ! それも夜7時には閉まる! そして大人の労働者にも車の使用は許可されていない! これで何ができる!」



4320.


「いや何もしなくていいだろ。寒さに震えた後なんだから大人しく寝ろよ。10時間もあるんだからさ」


「晩飯と朝飯を除けば9時間だ!」


「9時間でもいいだろ。普段の睡眠時間より長ぇじゃんかよ」


「それでも俺は・・・俺は・・・2週間も美少女を見ずに過ごすことが苦痛だったんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」



4321.


「何が美少女だよ。どうせ二次元だろうが」


「当たり前だろ? 冷凍庫労働者にゃ女もいたが大体はやつれきってるからな」


「そのための冷凍庫なんだからしょうがないだろ。しっかしそんな娯楽もない所で女もいるとなると、更なる犯罪が起こるんじゃないのか?」


「さすがに寝床は分かれてるぞ」



4322.


「そもそも、冷凍庫、通称“冷凍収容所”にいる時点で何かやらかしてるんだ。その冷凍庫で更にやらかしたら間違いなくインド洋だぞ。絶世の美女がいたところで手なんか出せるかよ」


「いやーさすがに絶世の美女がいたら1年インド洋に送られてでも手を出す奴が現れそうだね。普通のオバチャンしか居なかったとしてどうなるか怪しいもんだ。どうせ男衆もオッサンばっかなんだろ? 犯罪抑止策ぐらいねーのかよ」


「あるにはあるぞ。唯一の娯楽、サバの交尾シーン集が」


「お前はそれを娯楽と呼べるのか?」



4323.


「心配しなくても、食事も分かれてるから女性労働者と会うのは冷凍庫内のみ。当然監視もあるから、変な気を起こそうなんて奴は現れないぞ。それ以前に寒い」


「寒いからこそのロマンスも有り得るだろ? ゲレンデマジックみたいな感じでさ」


「あるわけないだろうが。一方的に襲うことも惹かれ合うことも有り得ない。それが冷凍庫なんだ。 男女の情熱? 笑わせるな。マイナス18℃での単純労働を前にはそんなもの無力。くっ、アキラさん・・・俺はあなたのことを忘れない・・・ッ!」


「何があったんだよアキラさんに」



4324.


「美々香には分からないさ・・・あそこには、冷凍庫で過ごした者同士しか分かり合えない、氷よりも綺麗な絆の結晶があるんだ」


「何だよそれ。てかお前さっきから冷凍庫が苦しかったとか言ってるけど、サバ令嬢には感謝しろよ? あいつの取り計らいのお陰で、お前が2週間冷凍庫に行くだけで我が家へのお咎めなしだったんだから」


「そもそもあれは崇のやつが・・・!」


「黙れ? あいつが普通に嘘つかなかったとして、肉まんにタレ使うかどうかでコンビニに殴り込み行く奴があるか」



4325.


「学校の方も、職場体験学習という名目になったから欠席扱いにはならず人生への影響は皆無。良かったじゃないか」


「どこがだ。普通に考えて高校生を拉致して辺境の建物に閉じ込めた方が犯罪だからな?」


「バッカお前サバハーモニーは何をしても犯罪にならないからな?」


「そんな世の中間違ってるだろ!!」



4326.


「まぁ過ぎたことをグチグチ言うなよ。毎日12時間で2週間、つまりトータル1週間分をマイナス18℃で過ごしたんだから頭も冷えただろ? 今度はインド洋に送り込まれることのないように冷静に行動するんだ。いいな?」


「フザかやがって。既にハラワタが煮えくり返りそうな気分だぜ」


「あら涼太さんご機嫌麗しゅう。今、内臓が熱いと聞こえたのですが2週間では足りなかったですか? それとも更に温度の低いものをご所望ですの? 液体でもよろしければマイナス196℃の用意ができますが浸かってみますか?」


「いえいえお陰さまで身も心もすっかり冷ますことができましてもう多少のことでは頭に血が昇ることなんてないですよアイ・アム・ソー・クール!」

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