2022/12/10
4194.
「よしみずき、寒くなったしメテオバックスのフラッペでも飲み行こうぜ」
「いや“寒くなった”を理由に飲むものじゃないでしょフラッペは」
「はぁ? じゃあ何を飲むってんだよ」
「あったかいコーヒーでいいでしょ普通に」
4195.
「はぁ? 何でこのクソ寒い日にあったかいコーヒーなんか飲まなきゃいけないんだよ」
「その“クソ寒い”がそのまんま理由なんだけど」
「ワケわかんねえ・・・みずきお前もしかして、あったかいコーヒーに呪われでもした?」
「美々香の方がフラッペに呪われたんじゃないの?」
4196.
「ぷはーーっ、ウマかったぜ。ったく、みずきマジでホットコーヒーかよ」
「“マジで?”って言いたいのはこっちなんだけどね」
「だってコーヒーなんてクオリティ気にしなけりゃ家でも飲めんじゃん?」
「メテオバックスのクオリティで飲みたいから来るのよ? 美々香の淹れたコーヒーなんて雑草の肥料にもならないわよ」
4197.
「おいおい煽ってくんじゃねぇかみずきさんよぉ? お前もフラッペ飲んで頭冷やしたらどうだ?」
「フラッペ飲んでなおヒートアップしてる美々香が言っても説得力ないわよ」
「私らはそれぞれアイスとホットを飲んだ・・・それによって相容れない関係になってしまったんだな」
「普通は混ぜたら温度中和されるんだけどね・・・」
4198.
「まぁ、メテオバックスのフラッペがそうそう真似できるものじゃないことは認めるけどね」
「そこなんだよ、そこ!」
「いきなり叫ばないで? あと自分がメテオバックスに相応しくない客層だって自覚して?」
「お前も十分この店に相応しくないこと言ってるからな・・・」
4199.
「やっぱり、そのお店オリジナルのものがあると強いわよね。なんてったって、そこに来なければ味わえないのだから」
「だがそれは同時に手軽さが薄れるというネックもできる・・・そこでだ、メテオバックスのフラッペを自宅でも楽しめる画期的な手段を思い付いた!」
「テイクアウトで買って帰るとか言わないよね?」
「えっ・・・もっ、もちろんだ! そんなしょうもない手段なはずが無いだろう!」
4200.
「無理しないでいいわよ? 図星だったのよね?」
「ズッズッズズッズッズッズズッズッズッズッズズッズッ・・・ズン!」
「いやそんなあからさまな反応しなくても」
「ズッズズズズズズズズズズズズズ・・・ズズン!」
4201.
「もういいわよ。やっぱり図星だったのね」
「そういうワケじゃないずん!」
「語尾ってことにしないで?」
「今日はこれが私のラッキーワードずん!」
4202.
「と、いうワケでだサバ令嬢。いつでも家でこのフラッペが飲めると嬉しいだろ?」
「え、わたくしこのためだけに呼ばれたんですの?」
「何も律儀に飲まなくても・・・それもこんな寒い日に」
「美味しかったですけれど・・・当家は既にメテオバックスの全商品がいつでも賞味できる環境にありますわよ?」
4203.
「は・・・お前今なんつった?」
「当家は既にメテオバックスの全商品がいつでも賞味できる環境にありますわよ?」
「これまた律儀に一字一句違えず言ったわね」
「そんな、まさか・・・お前の家には常にメテオバックスが使ってる材料と機材があるとでも言うのか・・・!?」
4204.
「そうですわよ、提携しておりますから。自宅や別荘にはバリスタも出向で来てもらっておりますし、オフィスや事業所には店舗も構えてもらってます」
「おいフザけんな!」
「わたくしに言わせれば、社員はともかくお客様にすら即席のコーヒーを出す方がフザけてますわね」
「くっ、そぉ・・・・っ!」
4205.
「じゃあ美々香もう答えは出たじゃない。世界サバ・フィル・ハーモニーに就職すればいいのよ。そしたらメテオバックスコーヒー世界サバ・フィル・ハーモニー高崎工場店が毎日利用できるわよ?」
「なんで僻地の工場勤務前提なんだよ」
「群馬を僻地なんて言わないで?」
「じゃあ何で高崎工場店を引き合いに出したんだよ・・・」
4206.
「そもそも工場勤務って自由に休憩取れないだろ。ましてやこの私が」
「そもそも美々香さんは採用試験に通りませんけれど」
「つまりサバ令嬢の家に転がり込むしかないというワケだ。だからサバ令嬢、お前さっさと弟生まれろや」
「それはわたくしに言わないでくださいまし」
4207.
「じゃあこの際お前の子でもいい。必ず男を産むんだ、私が嫁入りする」
「そこまでしてメテオバックスのフラッペを自宅で飲みたいんですの?」
「待って。もしかして、男の子を産んで美々香と結婚してもらえばそれでも美々香の上に立てるんじゃない?」
「話ややこしくなるからやめてくんない?」
4208.
「というかみずきさん、そうすると自分が美々香さんの姑になってしまいますが」
「え、願ったり叶ったりじゃない。だって美々香の掃除や料理にケチつけることができるのよ?」
「友人の姑になることに躊躇が無い人を始めて見たんですけれど」
「みずきだからしょうがない。呪われてんだよあいつ」
4209.
「話を戻すがサバ令嬢! お前メテオバックスとそんな契約あるんならウチにも融通しろよ! 学校でもいい!」
「それはできません。メテオバックスの技術は門外不出。原材料の栽培から最後のドリップに至るまでの全てを手の内にするのは当家が成し遂げてみせますわ」
「盗む気マンマンじゃねぇか」
「メテオバックスも当家の持つサバ流通のイロハを探りに来てますからお互い様ですわよ」
4210.
「何でメテオバックスが魚に興味持ってんだよ」
「魚ではありません。サバです」
「どっちでも一緒だろうが」
「何を言ってるの美々香? あなたそれは、養鶏場の農家さんに“トリもニワトリも一緒”と言ってるようなものよ?」
4211.
「しっかし、サバハーモニーの社内に店置いて売上げに貢献してやってるのに、メテオバックスはサバ料理やってくれないんだな」
「とてもではないけど相性が悪すぎるわよね・・・」
「まあ単に当家がメテオバックスのコーヒーを気に入って顧客として契約させてもらっただけですし」
「だったら尚のこと“全てを手の内にするのは当家が成し遂げる”は問題発言だったわね・・・」




