2022/11/19
4154.
「よぅ委員長。元気してるか?」
「ええ、まぁね」
「ンだよ歯切れ悪いな。家の鍵をちゃんと掛けたか覚えてないのか?」
「私そんな上の空になってた?」
4155.
「ああ。上の空も上の空だったぞ。委員長とは思えないぐらいにな。お前委員長なんだからもっとシャキッとしろよ」
「委員長のハードル高くない?」
「何言ってんだよお前。天下の委員長だぞ? あの、誇り高き天下の」
「40人に1人は委員長になれるんだけど」
4156.
「委員長。お前は分かってない。40人に1人だぞ? 上位2.5パーセント! お前その、上位2.5パーセントに入るハードルがどんなに高いと思ってるんだ!」
「まぁ満月さんには無理でしょうね」
「だからさ、ほら、上の空になるのなんてやめろよ」
「2.5パーセントに入ってる人生も疲れるのよ」
4157.
「なんて貧弱な。2.5パーセントが聞いて呆れるぜ」
「あなたみたいな人がいるから疲れるのよ。というか今日なぜか私たち2人しかいないんだけど」
「当たり前だろ? みんな人狼ゲームで死んだんだから」
「え、あれ引きずってるの!?」
4158.
「いやいやいやいや、あれただのゲームでしょ!? というか終わった後みんな集まったよね!?」
「何を言ってるんだ。ゲームはゲームでも命を懸けたデスゲームだっただろ? 毎日毎日、人が死んでいった・・・もっとも、人狼だったお前がやったことだがな」
「ちょっと待ってよ! 私、人を殺しちゃったの!?」
「そうなるな。まぁ、処刑で票を投じた私も同罪かもしれないが」
4159.
「そんな・・・じゃあ、もうこの世界には私と満月さんだけ・・・?」
「そうだな。おぉっと、変な気は起こすなよ? 私は猫又だから殺せば巻き添えでお前も死ぬぞ?」
「そんなことしないわよ。あ、でも、このままじゃ世界に満月さんと2人だけ。だったらいっそのこと・・・」
「おい!! マジで何考えてやがるんだ!!」
4160.
「だって、そうでしょ? あなたと2人だけで生きていかなければならないなんて、そんな人生になんの価値があるの?」
「随分と酷い言われようだな・・・まぁ否定はしないが」
「自覚があるなら更生して?」
「それはできない。私は自分が楽しむことが全てだからな」
4161.
「2人しかいないって言うのに何を楽しむのよ。だから、ほら、もう・・・終わらせましょう?」
「怖ぇよ!! おい橋口! お前いま凄ぇ怖ぇ目ぇしてたぞ! 人を殺せるような!」
「だからそのつもりよ? だって、必要ないじゃない、こんな世界」
「待て待て待て! 2.5パーセントに入る委員長がそんなことをしては行けない!」
4162.
「2.5パーセントじゃないわ。2人しかいないのだからもう50パーセントよ。委員長としての仕事も、自負も、責任感も・・・もう、必要ないの」
「だから怖ぇよ!!」
「さぁ、満月さん、行きましょう? 新しい世界へ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
4163.
「あら、どうして逃げるの・・・?」
「逃げるに決まってんだろ! 言ったよな!? 私猫又だって! 私を殺せばお前も死ぬぞ!?」
「そのつもりだって言ったじゃない」
「うおうおうおうお!? 待て! 正気に戻れ委員長! お前は何かに憑り付かれているんだ!」
4164.
「そうかも知れないわね・・・あなたは満月で、私は人狼。きっと、月の光で私の中の狼が目覚めたのよ」
「いやいやいやいや! 人狼だからってそんなのねぇから! とにかく待てって! 私殺せばお前も死ぬのはマジだから!」
「もう、止められないの・・・この命を引き換えにしてでも、体が血を欲しているの」
「やめろ! やめろやめろやめろやめろ! 私の血、すっげぇマズいから! 毒入ってるから! それでお前も死ぬから!」
4165.
「毒入りの血・・・ふふふ、最期に飲むに相応しいものね。・・・さあ、終わりにしましょう。あなたと、私の死を以って」
「待て、待て待て待て待・・・!」
ガブッ。
「ぐああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
4166.
「あ゛、あ゛・・・・・・」
どさり。
「ふぅ、ふぅ・・・これが、人間の血・・・。悪く、ないわね・・・ぐふっ・・・!? う、うぅ・・・ぐ・・・これが、死の味・・・・・・。ようやく、終わる・・・みっともなく倒れるよりは、座ったまま、逝こうかしら・・・。
よい、しょ。・・・これで、良かったのよね・・・? ふふ、夜空が綺麗だわ・・・。明けない夜はない。次はきっと、幸せな世界をお日様が照らしてくれる・・・そう信じれば、ぐっすりと眠れそうだわ・・・。さよなら、世界。そして、おやすみなさい・・・スゥ・・・・・・」
その後、彼女らの行方を知る者は、誰もいなかった。




