2022/06/25
3259.
「てなワケで1日でクビんなった。1銭ももらえずにな」
「お前バカか。普通にファミレスか、せめて居酒屋にしとけよ」
「そっちはどうだったんだ?」
「ホストクラブの裏方をやったんだが、行ってみればあんなことやこんなことをする店で、摘発されて1日で失業した。1銭ももらえずにな」
3260.
「一緒じゃねえかよ何で夜の店なんかにしたんだよ」
「そっちも一緒だろうが何でそんな初めから怪しいと分かり切ってる店にしたんだよ」
「高校生の時給の高さがそのまま理由だ。それにこっちは夜の店じゃない。昼間からやってるしボディタッチは禁止だ」
「それ以外が何でもアリなんだろうが」
3261.
「で、どうすんだよ次のバイト。居酒屋にするか?」
「飲食から離れろ。どのみち前の店みたいな稼ぎ方はできないぞ」
「何言ってんだよ、飲食は決定事項だろ。まかない飯がもらえるんだぞ」
「おっとそうだったな」
3262.
「うむ、やはり飲食は外せないな」
「よし、こうしよう。私はイタリアンでピザをもらってくる、お前は牛丼屋で牛肉をもらってくる。異論はないな?」
「ちょっと待て。牛丼屋だと仮に女子がいたとして制服かわいくないじゃないか」
「ふざけんな。何を言ってる。私だって牛丼屋よりイタリアンの制服着たいに決まってるだろ?」
3263.
「は? お前、正気か? どんなに可愛い制服あっても自分で着たら見れないじゃないか。第一、お前が着たところで誰も得しない」
「そっちこそ正気を取り戻せよ。死ぬほど可愛い制服があったとして、他人が着てるのを見ることに何の意義がある。自分で着ることの方が大事なんだよ、こういうのは」
「美々香お前はなんにも分かっちゃいない。美とは、視覚に訴えるものだ。つまり、見ることこそが全て。自分で着るなど愚の骨頂」
「はーーっ! これだからド素人は。いいか? よく聞け。美っていうのはな、表現なんだよ。他人の表現を見て満足? はーーっ! 笑っちゃうね。自分で表現してこそ全てなんだよ。誰かが美しいものを見せてくれるのを待つって、ぷふっ・・・美を語るに値しないね」
3264.
「そこまで言うがお前、俺がイタリアンの可愛い制服を着てもしょうがないだろ?」
「何でお前も同じの着る前提なんだよ。男には男用の制服があるだろ」
「牛丼だとないんだが?」
「はぁ・・・お前さあ・・・着る奴が着れば牛丼屋の制服だって目を見張るものになるんだよ。何でこんなことまで言わなきゃいけないんだよ。お前本当に美ってものを理解してる?」
3265.
「・・・それで? 昨日は美についての論争で1日費やして面接にも行かなかったと?」
「そうなんだよみずき、笑ってくれ・・・だいたい兄、お前がさっさと牛丼屋でOKしてたらあんなことにはならなかったんだぞ」
「俺のせいかよ。お前がイタリアンと牛丼の2択にしたのが悪いんだろうが」
「はぁ? だったら他にどんな選択肢があるんだよ。中華か? はいはいどうせチャイナドレスが見たいとかでしょ? お前が好きなロングスカートでもあるしさ」
3266.
「あの、2人とも・・・わかってる? 今、“美”なんかよりも大事なものがあると思うんだけど」
「「は、今なんつったよお前」」
「いやいやいや・・・可愛い制服を着るだけで家賃が払えるの? 可愛い人を眺めるだけでお腹がふくれるの? 何も食べないと3日で死ぬのよ? だったら、まずは美の追究は一旦やめて、生活を安定させてから何年何十年と美と向き合えばいいじゃない」
「みずき、お前・・・お前は私を怒らせた」
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「はぁ? 何なの? いや、別に、美々香の人生だから美の追究を一時休むより死んだ方がマシだというなら止めないけど、私はそれよりは、汗水流して泥臭く生きてく方が美しいと思うわよ?」
「は? お前何言ってんの? 泥臭く生きることに美しさなんてないよ? そんなの自己満足だよ? なんだかんだ餓死しかけたら助けが入るんだから金なんてそれに頼って自分の求める美を追いかける方が美しいに決まってるだろ?」
「清々しいほどに醜い生き方ね。お兄さんからも何とか言ってやってください」
「金は・・・自分で働いて手にするよりも誰かにめぐんでもらえるものが美しい!」
3268.
「・・・で、3人で美について言い争って日曜も潰したと」
「待て! 何も言うなみずき兄! 反省会をしているとまた話が逸れる! 平日でそれやったらあっという間に夜だぞ!」
「むしろどうやって土日をフルそれで潰したんだよ」
「だから何も言うな! バイトの斡旋以外の話を私にしないでくれ! 考えたくない! バイトのこと以外何も考えたくない! 誰か私を、心を無にして淡々と仕事をこなす労働人形にしてくれえええぇぇぇぇぇぇ!!」




