2022/05/28
3129.
「よく来たな。美々香ちゃん」
「ああ。約束通り、と言ったところか」
「いや15分も遅刻されたんだが」
「心配すんなよ。遅刻しても49分までは四捨五入すればゼロだから」
3130.
「なんで時間計算まで10進法なんだよ」
「その方が私にとって都合がいいからだ」
「なっ・・・まさか、“自分の都合のいいように解釈しただけだろ”という指摘を事前に塞ぎに来るとは・・・!」
「フッ」
3131.
「それで? いきなり呼び出したりして何の用だ? まさか愛の告白とか言わないよな?」
「だったらどうする?」
「帰る」
「そうじゃないから帰るな」
3132.
「今日美々香ちゃんを呼び出したのは他でもない。みずきのことだ」
「みずきの? 今更あいつの心配してどうすんだよ。もう手遅れだろ」
「“手遅れ”にも、まだ修復可能な手遅れと完全アウトな手遅れがあるだろ?」
「ねーよ“手遅れ”って言葉の意味を考えろよ」
3133.
「で、みずきのどこを修復したいんだ? 人として終わってるところか? ウチの兄を狙ってることか?」
「人として終わってるのはまだいい」
「いやいいのかよそれ」
「問題は後者だ。涼太の奴が義理の弟になればいじめ甲斐があるが、果たして妹があんな奴とくっついていいのか? という疑問は拭えない」
3134.
「心配すんなよ。ウチの兄がお前の義弟になるのを許容するはずがない」
「だが万に一ってことは有り得るだろ? あいつモテないし」
「まぁぶっちゃけ100に1ぐらいは有り得るけどな」
「だろ?」
3135.
「じゃあ聞くが、お前はみずきにどうなって欲しいんだ? あいつが幸せならそれでいいじゃねえか」
「美々香ちゃんは涼太の奴に人を幸せにできると思ってるのか?」
「思えんな・・・」
「だろ?」
3136.
「んー、やっぱ疑問だな。みずきが不幸になったとして、お前は困るのかみずき兄?」
「1人で勝手に破滅される分には困らない」
「困ってやれよそこは」
「だが、もし離婚するか、そもそも結婚できなくて1人になったら? それで家族が面倒見ろと言われたら?」
3137.
「ンなもんみずきだって1人の大人になるんだから放っときゃいいだろ。それこそ、お前まで独身でなければな」
「考えてみたら40とか50になってまで兄妹で住んでるってなったら壮絶にキモいな」
「うわマジだな。私まで想像しちまったぜ。それは無理だ」
「ぶっちゃけそれと同じぐらい、40とか50になってまで“友人の妹”と住むって無理だな」
3138.
「想像してみたら結構キツいな・・・みずきがウチの兄にご執心なのも、女子高生だからまだいいが、オバサンになってまでってなると・・・キツさがエグい」
「ここでひとつの疑問が生じる。幼馴染は本当に最強なのか?」
「私も思った。“幼馴染としてしか見れない”ってのも、あながちデタラメじゃないのかも知れないな」
「幼馴染婚、世界一ほほえましいものだと思ってたんだが・・・」
3139.
「しかしそれも、私らの付き合いだからというのもあるかも知れない」
「確かに。なんかこう、そういう気配ってゼロだしな」
「まぁ私らは高校に入ってからの知り合いだから幼馴染ではないけどな」
「まあな」
3140.
「ところでみずきって、中学まではどんなだったんだ?」
「普通の女子中学生だったぞ。美々香ちゃんに出会ってからあいつは変わった」
「おいおい、その程度のことで感謝なんかするなよ?」
「マジで感謝する要素がどこにもないんだが?」




