2022/04/23
2990.
「さて、みずき兄をぼっちにするため3人で抜け出したは良いが、サバ令嬢が来なかった為に意味をなさなくなった」
「じゃあ何でそのまま出て来たのよ」
「気にすんなよ。意味のないことをやることに、きっと意味があるんだよ」
「絶対ないでしょ・・・」
2991.
「まあいいじゃねえか。たまには3人でハンバーガーでも食おうぜ。兄かみずきの奢りで」
「お前って人を誘う割に絶対に自分では出さないよな」
「当たり前だろ? それが誘う目的なんだから」
「ほんとに終わってるわねこの人・・・」
2992.
「くそっ、私の500円が・・・会計は各自とかお前ら私を何だと思ってるの?」
「美々香だと思ってるから個別にしたのよ」
「私のサイフが空っぽだったらどうしたつもりだよ?」
「皿洗いでもすれば? その様子を撮っててあげるから」
2993.
「おいおい、親友が働かされてる姿を笑いながら眺めるってのか?」
「親友ってその為にいるんでしょ?」
「お前も人として終わってんな・・・」
「言うて美々香も知り合いがバイトとかしてたら笑いながらスマホ向けるだろ」
2994.
「確かに。知り合いが働いてる姿ってなんか新鮮だよな。たまにスーパーでクラスの奴見かけるけど」
「それが顔見知り程度の相手だと妙に気まずいわよね」
「私がバイトの立場だったらチップを要求するけどな」
「だから美々香は友達が少ないのよ」
2995.
「おいおい、失礼なことを言ってくれるじゃないか。私は敢えてこうしてるんだよ、本当に困ってる時に助けてくれるかどうかを見極めるためにな」
「在学中ならまだしも、卒業した後で旧友から“困ってるんだけど・・・”とか言われても警戒しかしないわよ」
「ははっ。そりゃ壷買わされるかマズい商売に巻き込まれるかだな」
「一番それやりそうなのが美々香なんだけどね・・・」
2996.
「でも私やみずきはともかく、兄は気を付けろよ? クラスのマドンナが将来どんな罠を仕掛けてくるか分からんぞ?」
「心配すんなよ。今でさえ連絡先交換してる女子はいないからな」
「逆に心配なんだが」
「大丈夫よ。お兄さんには私がいるから」
2997.
「てかお前、誰か見つけないとマジでみずきとくっ付けさせられるぞ?」
「何その言い方? まるで私がハズレみたいに」
「そう言ったつもりなんだが?」
「ふーん? いい度胸ね?」
2998.
「にしても、壷にマズい商売ねえ。同級生の誰かしらは将来やるんだろうだけど、どうやってそんなのに手を出すのかしらね」
「ンなもん将来私らを騙そうとする奴だって誰かに騙されて始めるんだよ」
「有り得そうなのは職場か大学の先輩とかだな。お世話になった先輩が退職か卒業後に連絡を入れてきて・・・的な」
「ハンっ。そんなの切り捨てられないもんかね」
2999.
「美々香なら、“あんたなんから知らない”で無視できるでしょうけどね」
「“無視すると申し訳ない”なんて思っちゃ負けさ。相手は知り合いという知り合いに声を掛けている。カモ候補の1人にされてるだけだと考えれば余裕で切り捨てられるね。先に失礼なことをしてるのは向こうだぜ? “こいつから引っ掛かってくれるかも”と期待して連絡入れてくるんだから」
「ほんと、友達選びってちゃんとしないと後々面倒よね」
「ほんと、いやマジで俺は崇妹が美々香の友達続けてんのが謎なんだけどな」




