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2022/04/17

2972.


「うーーッス」


「あら崇さん、こんにちは。無事に退院できたのですね」


「ああ、お陰さまでな」


「と、いうことは美々香さんに託したザ・サバ・オールトリートメントジェルが役に立ったのですね」



2973.


「え、オールトリ・・・? そんなの貰ってないが」


「では美々香さんにネコババされたのでしょう」


「そう考えるのが妥当だな。転売の相場はいくらだ?」


「当家の製品は定価以上で取引されることのないよう厳重体制を敷いておりますわ」



2974.


「そうですよ明星先輩、お嬢様が転売などという下賤な輩に屈するはずがないでしょう」


「お? 見たことない顔・・・ということは、お前が美々香ちゃんの言ってた、」


「はい、新入部員の服部波斗です。よろしくお願いします」


「なんだ、礼儀正しいじゃないか。この部に入るぐらいだからてっきりヤバい奴だと思ってぞ」



2975.


「お言葉ですが先輩、今のはお嬢様に対する侮辱に相当しますよ?」


「前言撤回。多分お前結構ヤバい奴だよ」


「それは僕に対する侮辱ですが、まあ今のは特に咎める必要はないですね」


「思った通りヤバい奴だったな・・・」



2976.


「で、他の連中はどうした?」


「さあ。3人でどこかに出かけましたわよ。“今日みずき兄のヤツが退院だから部活サボってぼっちにしてやろうぜ”とか言って」


「あいつら・・・マジ殴りてえ」


「せっかくですし、わたくしたちもどこかでお茶でもしましょうか」



2977.


「で、来るのが個人経営の喫茶店かよ。ここにサバでも仕入れてるのか?」


「まさか。言ったでしょう、わたくしは庶民の生活を体験するために来ていると」


「ここ1杯1000円するんだが?」


「1杯で1000円は庶民の価格でしょう?」



2978.


「そうですよ先輩、サバに生きる者にとってはこれくらいの値段、どうってことないですよ」


「さすが、管理職じゃなくても年収1000万になるハーモニー社員の息子は違うな」


「ええ。なので僕も両親と同じ道を歩んでゆとりのある生活を送りたいと思います」


「お前本当にサバのこと好きなのか?」



2979.


「まあ理由なんてどうだって良いじゃないですか崇さん。サバのために人生を捧げてくれるのなら」


「ていうか服部お前の親は社内結婚なのか」


「はい。なんでも、定期的に未婚者限定の社内パーティーが開催されるそうで」


「あからさまなイベントぶっ込んでるな世界サバ・フィル・ハーモニー・・・」



2980.


「元々はそういった制限は無かったのですけれどね。いずれにせよ家庭がある社員の参加率は低かったですが」


「なんでわざわざ未婚限定にしたんだ?」


「アンケートで多く寄せられた意見が、“指輪の有無だけでは100%の判別ができない”だったのですわ」


「何でコンパ目的の奴の意見を取り入れたんだよ」



2981.


「社員同士で夫婦になってもらった方がいいじゃないですか。全員の配偶者が社外の人だと支払う福利が2倍になってしまいますし」


「給料いい癖に地味なケチり方すんなよ・・・」


「コストとは、下げられるものなら下げて然るべきなのです」


「そうですよ明星先輩。世界サバ・フィル・ハーモニーはサバ第一の集団なのですから他に掛けるコストは抑えなければならないのです」



2982.


「じゃあ服部も将来ハーモニーで結婚相手探すのか?」


「そうですね・・・ですが、お嬢様よりも素敵な女性がいるのかという懸念もあります」


「じゃあもう令嬢と結婚したらどうだ?」


「いえいえ! 滅相もありません。僕ではお嬢様のお婿さんになったとしても世界サバ・フィル・ハーモニーに何の貢献もできません」



2983.


「それに、後取りが必要なのですから、お嬢様と結婚するということは、つまり、その、お嬢様の・・・そういうことになるんですよ!」


「服部君、ちょっと殴ってもいいかしら」


「まぁよせ部長。服部もだ、短絡的すぎるぞ。ここにおわすは世界サバ・フィル・ハーモニー社長令嬢にあらせられるお方だ。旦那なんて第2第3を用意できるからお前が第1になっても他の奴に任せられるぞ」


「とりあえず崇さんは殴りますね」



2984.


「いってて・・・俺としたことが失言だったな、服部を落ち着かせる為とはいえ」


「全く。いつの時代の話をしているのですか。普通に1人としか結婚しませんわよ」


「でもテキトーな社員に婚期逃した親族を押し付けたりするんだろ?」


「まぁしますけれど」



2985.


「よし服部、35ぐらいまで独身を貫け。そしたらマジでこいつと結婚できるかも知れないぞ?」


「崇さんはそんなにわたくしに殴られるのがお好きなのですか?」


「僕は殴られてみたいです!」


「服部君には聞いておりません」



2986.


「でもぶっちゃけ部長が結婚する姿が想像できないんだが。なんか理想高そうだし」


「それは否定しませんし、自分が殿方の好みに合ってるかというのも正直微妙なのですよね」


「お嬢様の魅力は僕が保証します!」


「当家の人心掌握に掛かった服部君の意見は参考になりません」



2987.


「でもまあ、顔とスタイルは悪くないと思うぞ?」


「それは性格が悪いと仰っているのですか?」


「とりあえず怒りの沸点は下げようか」


「周りに発熱源が多すぎるだけです」



2988.


「結婚はしなければならない。でも、あまり妥協はしたくない・・・中々に悩ましいですわね」


「高校生にしてその悩みとは、さすがご令嬢は庶民とは違うな」


「もういっそ、焦る年齢になる前に発情期が来た方が助かる気がしてきましたわ」


「それ絶対上流階級の奴の前で言うなよ」



2989.


「さて、そろそろお開きにしましょうか。今日は思いのほか充実した時間が過ごせましたわ。美々香さんたちがいないだけでこんなにも違うのですね」


「マジであいつらいてもプラスにならないからな・・・ところで、何でお前は付いて行かなかったんだ? 俺を部室でぼっちにするっての聞いてたんだろ?」


「美々香さんの思い通りに事が進むなんて気に入らないじゃないですか」


「なるほど、なら納得だ」

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