2021/05/02
1470.
「あー、5連休かー。どうするよ?」
「特に意味もなく人の家に来ないでもらえるかしら?」
「よっ、崇妹」
「あっ、お兄さん。いらっしゃいませ。ささっ、どうぞこちらへ」
1471.
「おいテメーなんだその扱いの差は」
「あ、美々香いたの?」
「“いたの”じゃねーだろ。さっき意味もなく来んなとか言ってただろ」
「そうね。別にもう帰ってしまっていいわよ」
1472.
「悪いな、特に用事もなく来ちまって」
「いえいえ、私も暇なことが多いですから、用事なんてなくてももっと来て頂いていいのですよ?」
「だからその扱いの差はなんだ」
「え、まだいたの? 用事がないなら帰って」
1473.
「で、どうするよ。ゲームでもするか?」
「そうねえ・・・3人でできるのは“メリオカート”ぐらいしかないけど」
「別にいいじゃん。3時間ぐらい潰せるだろ」
「どこから来るのよその計算は」
1474.
「そういやアイツは? みずき兄」
「崇のやつなら出掛けるって言ってたぞ」
「ああ、あれは誘われた瞬間に兄の脳内で別件を作ってるだけですから。どうせその辺でマンガでも呼んでますよ」
「なんてヤツだ・・・せめて誰かに会ってろよ・・・」
1475.
「それで結局呼びつけやがって・・・」
「ハッタリかまして出掛けるからだろ」
「集まったところで暇だぞ。何やるんだよ」
「“メリカ”だ」
1476.
「はぁ? “メリカ”? 何でだよさっきまで公園でやってたんだけど」
「そっちこそ何で外に出てまでゲームしてんだよ」
「お前らに会いたくないからに決まってるだろ」
「どうせオンライン対戦で当たってたから一緒さ」
1477.
「オンラインなんかでやるか。1人でやってたんだ」
「だから何やってんだよ。せめて近所のガキ共とやってろよ」
「何で高校生にもなって近所のガキ共とゲームしなきゃいけないんだよ」
「いや1人で公園でやってても一緒だからな?」
1478.
「まあいいや。どうせ集まったんならやるぞ。3時間は潰せるだろ」
「兄さんまでメリカ3時間理論を支持するのね・・・」
「スピードを極めた先に、辿り着ける理論があるんだ」
「時速100キロぐらいしか出ないゲームだけどね?」
1479.
「御託はいい。さっさと始めるぞ」
「みずき兄ってこんな奴だったっけ?」
「たまになんか変なスイッチが入るのよ。そっとしておいてあげましょう」
「そう言うみずきもたまに変なスイッチ入るけどな・・・」
1480.
「何で最初から“ズッパキャッスル”なんだよ」
「この方が燃える」
「コース内もあちこち燃えてるわね・・・」
「御託はいい。さっさと始めるぞ」
1481.
「おい! 何でビリなのにキノコばっかなんだよ!」
「日頃の行いが悪いからだろう」
「ちょっと兄さん! 2位と3位で潰し合ってもしょうがないでしょう!」
「攻撃アイテムが出たからしょうがないだろう。消化せんと次のが手に入らんしな」
1482.
「よっしゃ! 1位を狙うトゲ甲羅だ!」
「美々香、早く使いなさい!」
「えーでもこれ私にメリットなくね? 3位の奴に攻撃したいんだけど」
「いいから使いなさい!」
1483.
「無敵状態に変身!」
「なんですって・・・!?」
「雷ドッカーン!」
「そんな、日頃の行いが悪いはずの美々香が・・・!」
1484.
「逆に考えるんだ崇妹よ。美々香はここで運を使い果たし、実生活で不運に見舞われると!」
「フッ、いいだろう。私はこのレースで勝てるなら、この先どんな不幸が降りかかろうとも構わない!」
「美々香まで変なスイッチ入っちまったな」
「それだけの力を持ってるんですよ、メリオカートは」
1485.
「おっ! なんか植物出た! 勝手に攻撃してくれるぞ!」
「俺もだ」
「私もよ!」
「お前ら3人でそれで迫って来んじゃね~~!」
1486.
「・・・結局、12時間もやってしまったわね・・・」
「4人で“メリカ”をやったんだ。単純計算でもそうなるだろう」
「だから何なのよその理論は」
「“メリオカートの第2法則”」