2021/04/17
1398.
「兄よ!」
「何だ!」
「日本中を騒然とさせることを言ってみろ!」
「 “了解” 」
1399.
「フザけるな! そんなことで日本中が騒然とするものか!」
「するのさ、それが」
「なんだと・・・!?」
「フッ、お前もまだまだだな。“了解”のもつポテンシャルを知らんらしい」
1400.
「く、くだらん! その一言に何があると言うんだ!」
「夢、ロマン。そして、再生」
「あーあ、コイツついにワケわからんこと言い始めたぞ」
「お前の兄なのだから当然だろう」
1401.
「知らんようだから教えてやろう。“了解”の一言は、日本中に騒然を、衝撃を、歓喜を、涙を、そして再生を与えた」
「いや何を大げさな。てか再生ってなんだよさっきから」
「再生は再生だ。そこには確かに、再生の物語があったのだ。もう見ることはできないと思っていたものが、そこに蘇ったのだ。異次元の中で」
「うんマジで話のつかめなさが異次元なんだけど」
1402.
「しかし、あの中で最も異次元だったのは他でもなくあれだった」
「だからなんの話だよさっきから」
「だがこう考えることもできる。異次元に対抗できるのは異次元しかないと」
「それは、つまり?」
1403.
「俺たちも次元を超えよう」
「よし来た」
「もはやこんな場所でくすぶっている暇はない」
「立ち上がれ! マンションの屋上に!」
1404.
「次元を超える準備はできたか?」
「バーロー、そんなもんとっくに超えちまってるさ。だって、私たちだぜ?」
「フッ、そうだったな。俺としたことが忘れてたぜ」
「満月に向かって大声で叫ぼう、“了解”!」
1405.
「ってことが昨日あったワケよぅ」
「ごめん、何がなんだか全くわからなかったんだけど」
「わかれよ、異次元の戦士なら」
「私異次元の戦士でもないんだけど」
1406.
「次元を超えるために必要なのはサッカーボールか銃だ。どっちがいいか?」
「・・・は?」
「ボール蹴りたいか銃弾撃ちたいかって聞いてんだよ。どっちにしても針の穴に糸通すような精度が求められるがな」
「・・・・・・は?」
1407.
「というワケで今日はサッカーをやるぞ」
「なんで?」
「バーロー、銃なんか持ってないからに決まってるだろう」
「そんなこと聞いてるんじゃないわよ」
1408.
「まーいいじゃねーか、女子だってサッカーする時代だぜ?」
「この場にいる半分は男だけどな」
「兄さんたちまで・・・というか4人でサッカーなの?」
「気にすんなよ、4人でもサッカーはできる」
1409.
「じゃあこうしましょう。こっちは私とお兄さんのチーム、そっちは美々香と兄さんのチームね」
「同性ペアでも兄妹ペアでもなく、あえてクロスで来たか」
「この方が面白いでしょう? 勝負はVゴール形式、そして勝った方のペアがそのままゴールインよ!」
「「「黙れ」」」
1410.
「みずきはそれでいいのかよ? 負けたら私の義妹だぜ?」
「負けなければいいだけの話でしょう」
「フッ、大した自信じゃないか。おいみずき兄、あんな奴らギッタギタにしちまおうぜ」
「断る。勝ったら俺はアイツの義弟になるんだろ? 負けなればならない戦いが、ここにはあるんだよ」
1411.
「おいテメー! そんな個人的感情を持ち込むんじゃねぇ! スポーツマンシップはどうした!」
「俺はスポーツマンではない。つまり、利敵行為も可能」
「フザけんなよテメー! それじゃ私の1対3じゃないか!」
「安心しろ妹よ。お前らが勝ったらソイツは俺の義弟になる。つまり、俺も利敵行為に走るのが合理的だ」
1412.
「そんなくだんらんことで利敵に走るな!」
「「くだらんことではない」」
「そうよ美々香。私たちはみんな、避けるべき血縁関係というものがあるのよ。スポーツマンシップを捨ててでもね」
「お前ら、なんのためにフィールドに立つんだよ・・・」
1413.
「結局フツーに兄妹ペア対決になっちまったじゃねーか!」
「違うわよ美々香。あくまでチーム分けとしては私とお兄さん、美々香と兄さんよ。だから男性陣のゴールはオウンゴールとしてカウントされるわ」
「余計にややこしくするな!」
「さあ、始めるわよ。文字通りに私たちの血を懸けた、運命のキックオフを」